◆糖尿病患者の閉経後のホルモン療法は認知機能にどのような影響が?
女性ホルモン(エストロゲン)の低下は認知症を発症する危険性につながると考えられています。しかし、糖尿病の患者では、その逆にエストロゲンの値が高いことと認知症の発症リスクが関連していることが報告されてきました。
そこで今回の研究では、65歳から80歳までの女性糖尿病患者7,233人を対象に、認知症とホルモン療法の関連を検証しました。
◆糖尿病ではホルモン療法で認知機能をさらに悪化するかもしれない
以下の結果が得られました。
糖尿病があり、ホルモン療法にランダムに振り分けられた人では、それらがない女性と比べて、認知症のリスク(ハザード比2.12、95%信頼区間1.47-3.06)と認知機能低下(ハザード比2.20、95%信頼区間1.70-2.87)のリスクを増大し、交互作用はp=0.09とp=0.08であった。
糖尿病がある場合では、ホルモン療法を受けると、認知症を発症する危険性がより高くなるという結果でした。
通常は、女性ホルモンの値が高いと認知機能の低下を予防できるはずですが、糖尿病を持っている場合では逆に悪化させるかもしれないという研究でした。このような研究により、通常行っても良いだろうと考えられている治療法の例外が見つかることもありえます。どんな人が安全にホルモン療法を受けて治療効果を得ることができるのか、改めて検証が必要かもしれません。
執筆者
Impact of Type 2 Diabetes and Postmenopausal Hormone Therapy on Incidence of Cognitive Impairment in Older Women.
Diabetes Care. 2015 Dec
[PMID: 26486190]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。