2015.11.28 | ニュース

前立腺がんのホルモン療法で心血管死亡率に影響はないのか?

臨床試験データを解析
from European urology
前立腺がんのホルモン療法で心血管死亡率に影響はないのか?の写真
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前立腺がんの治療には、手術のほか放射線療法やホルモン療法があります。ホルモン療法は心筋梗塞などの冠動脈疾患を増やすという報告がありますが、死亡につながるとは限らないという見解もあります。過去の臨床試験のデータを使って検証が行われました。

◆4か月のホルモン療法で死因に違いは?

対象とされたデータは、周りの臓器に広がっていない前立腺がん(T1bからT2bまで)の患者1,979人を対象として、4か月のホルモン療法を使うか使わないかをランダムに分けることで効果を調べた研究で得られたものです。

研究班は、治療開始後の死亡が全体として、また死因ごとに増減しているかどうかを調べました。ホルモン療法に効果があれば前立腺がんによる死亡が少なくなる可能性がありますが、もし心筋梗塞などによる死亡が増えていれば、全体としての結果が変わるかもしれません。

 

◆心血管死亡は増えていない

次の結果が得られました。

短期のアンドロゲン遮断療法は全生存率および疾患特異的生存率を改善し、心血管死亡のリスク増加とは関連しなかった。

治療群は心血管死亡の増加と関連しなかった(未調整ハザード比1.07、信頼区間0.81-1.42、P=0.62)。

ホルモン療法を使ったグループで、死亡全体、また前立腺がんによる死亡が少なくなり、心筋梗塞脳卒中などの心血管疾患による死亡に違いは見られませんでした

 

死亡については、心配しすぎることはないのかもしれません。ただし、心血管疾患には重い症状が出るものもあり、もし死亡につながらない発症例が増えるとすれば、症状をどう考えるかは別の問題です。

前立腺がん治療をよりよいものにするために、こうした検証が続けられています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Cardiovascular Mortality Following Short-term Androgen Deprivation in Clinically Localized Prostate Cancer: An Analysis of RTOG 94-08.

Eur Urol. 2015 Sep 8 [Epub ahead of print]

[PMID: 26362090]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。