2015.11.04 | コラム

『うっかりドーピング』って何?〔その① 市販の風邪薬編〕

意図しないドーピング違反に関して
『うっかりドーピング』って何?〔その① 市販の風邪薬編〕の写真
(C) Andrea Kusajda - Fotolia.com

国際的な競技大会やプロスポーツの世界で必ずというほど耳にする『ドーピング』。多くの場合、筋肉増強作用などをあらわすステロイド(主に外因性AASと呼ばれる薬物)の意図的使用であり、度々大きな話題となります。

AASなどのステロイドを含め、ドーピングの対象となる物質は世界アンチ・ドーピング規定というルールの下で決められているのですが、日常的に購入できる市販薬の中にも実はドーピングの対象となってしまう薬物が含まれることがあることをご存知でしょうか?

今回は意図しない『うっかりドーピング』の対象となりうる市販の風邪薬にスポットを当ててみます。

 

◆ エフェドリンなどの興奮薬

エフェドリン類(メチルエフェドリン、プソイドエフェドリンなど)は、交感神経を興奮させることで気管支拡張作用や中枢性の鎮咳作用などをあらわします。咳などの症状を和らげてくれるため、多くの市販の総合感冒薬などに含まれている成分となります。

しかしエフェドリン類は、禁止物質の中で興奮薬(特定物質の興奮薬)に含まれます。中枢神経系を刺激することで集中力や敏捷性を高め、血流を増加させるなどにより競技能力を向上させるなどの効果を生む可能性があるため、ドーピングの対象物質となっています。

エフェドリンと同様の作用をあらわす成分は生薬にも含まれていることがあります。麻黄(マオウ)や半夏(ハンゲ)などにはエフェドリン類の成分が含まれていて、麻黄を含む葛根湯などの漢方薬はドーピングの対象となってしまいます。イメージ的に漢方薬というと身体に穏やかに効果をあらわすと思われがちですが、構成生薬は植物など自然由来で全ての成分が明らかになっていない場合もあるため、ことドーピングという観点からは安易に使用できない薬と言えます。

 

◆ β2作用薬(但し、処方薬における一部の吸入薬は除く)

β2作用薬(β2受容体刺激薬)は喘息COPDなどの慢性疾患以外にも急性気管支炎などの治療薬としても用いる場合があり、咳止めなどの成分として市販薬にも含まれていることがあります。その一方で、交感神経が興奮することでエフェドリンなどと同様に競技能力へ影響を与える可能性があるため、禁止物質となっています。

β2作用薬の中でも、医療機関で処方される吸入β2作用薬の中には使用可能な製剤があります。喘息などの持病があっても治療しながら競技への参加ができるように配慮されています。過去、吸入β2作用薬などを使用して喘息を治療しながらオリンピックで金メダルをとった清水宏保選手のような例もあります。

 

その他、市販の鼻炎用薬などにも興奮薬として禁止されているエフェドリン類が配合されていることがあります。また同じ様な名前の製剤でも少しの名称の違いで含有成分が違い禁止物質が含まれている場合もあり、注意が必要となります。たとえば「ストナ®アイビー」は使用可能ですが、「ストナ®アイビージェル」には禁止物質のメチルエフェドリンが含まれています。

更に禁止物質は競技の種類などによっても規制が異なる場合もあるので、競技者やその周囲の方は『うっかりドーピング』とならないように日頃から注意する習慣を持つことが重要となります。

日本にはJADA(日本アンチ・ドーピング機構)、各地域の薬剤師会、スポーツファーマシストなどの競技者をサポートできる機関や専門家が存在します。ドーピングについての疑問・質問などがあれば相談してみてはいかがでしょうか。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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