2015.11.11 | コラム

『うっかりドーピング』って何?〔その② 市販の胃腸薬・滋養強壮薬編〕

意図しないドーピング違反に関して
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(C) Andrea Kusajda - Fotolia.com

プロスポーツの世界でたびたび話題になる『ドーピング』。筋肉増強作用などをあらわすステロイド(主に外因性AASと呼ばれる薬物)の意図的使用が問題になりますが、意図しない『うっかりドーピング』と言われるケースもあります。

AASなどのステロイドを含め、ドーピングの対象となる物質は世界アンチ・ドーピング規定というルールの下で決められているのですが、市販の総合感冒薬などの中にも実はドーピングの対象となってしまう薬物を含むものがあります。

今回は市販の胃腸薬や滋養強壮薬にスポットを当ててみます。

 

◆ ホミカエキスと市販の胃腸薬

以前に市販の総合感冒薬や鼻炎用薬などに含有されるドーピングでの禁止物質にエフェドリン類が該当することを紹介しました。エフェドリン類は規定の中で興奮薬(特定物質の興奮薬)に該当し、中枢神経系を刺激し集中力や敏捷性を高めるなど競技能力に影響を与える可能性があるため禁止物質となっています。

同様に生薬のホミカ(ホミカエキス)に含まれる成分も特定物質の興奮薬のカテゴリーに該当し禁止物質となっています。

ホミカは市販の胃腸薬などにも含まれている生薬成分で、苦味成分が胃腸粘膜を刺激し唾液や胃酸分泌促進作用などをあらわすことで苦味健胃薬として使用されます。しかしホミカはストリキニーネという成分を含んでおり、このストリキニーネは中枢神経系(特に脊髄)に作用し興奮作用をあらわし、反射興奮性の増大などにより運動能力などに影響を与える可能性がある等の理由から禁止物質となっています。

 

◆ 滋養強壮薬と禁止物質

先に挙げたストリキニーネを含む製剤は胃腸薬以外にもあり、一部の滋養強壮薬に含まれている場合もあります。また滋養強壮薬にはストリキニーネ以外にもタンパク同化作用を持つテストステロンホルモンの関連物質が含まれていることがあるため注意が必要です。例えば生薬のカイクジンやジャコウなど男性ホルモン様作用をあらわし、AASなどに類似した効果により運動能力に影響を与える可能性があるため禁止物質になっています。

生薬や生薬成分を複数含む漢方薬はイメージ的に身体に穏やかに効果をあらわすと思われがちですが、植物などの自然由来で全てが明らかになっていない場合もあるため、ことドーピングという観点からは安易に使用できない薬となっています。

 

その他、市販薬には同じ様な販売名でも少しの名称の違いで含有成分が違い禁止物質が含まれている場合があります。たとえば「ワクナガ胃腸薬U」は使用可能な製剤ですが、「ワクナガ胃腸薬G」には禁止物質のホミカ(ストリキニーネ)が含まれています。

 

一般用医薬品は処方薬に比べるとドラッグストアや薬局などで購入でき自分自身での体調管理などに有用な反面、"意図しないドーピング"を引き起こす温床にもなる一面も持っています。また禁止物質は競技の種類などによっても規制が異なる場合もあるので、競技者本人だけでなく周囲の方も『うっかりドーピング』とならないように日頃から注意する習慣を持つことが重要となります。

日本にはJADA(日本アンチ・ドーピング機構)、各地域の薬剤師会、スポーツファーマシストなどの競技者をサポートできる機関や専門家が存在します。ドーピングついての疑問・質問などがあれば相談してみてはいかがでしょうか。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。


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