◆糖尿病に近い状態の人に対して予防効果を検討
この研究は、糖尿病に非常に近い状態と見られた人を対象として2001年までに行われた、2型糖尿病予防の研究(DPP研究)の参加者を、さらに2014年まで追跡したものです。
DPP研究では、参加者はランダムに、生活習慣改善の集中トレーニングを受けるグループ、治療薬のメトホルミンを使うグループ、偽薬を使うグループに分けられ、3年間治療されました。その期間が終了したあとに続けて、この研究では、もと生活習慣改善のグループにいた人は半年に1回の生活習慣指導を受け、もとメトホルミンのグループにいた人はメトホルミンを続けました。
新たに糖尿病を発症した人、また糖尿病が長期間続くことによって起こるとされる糖尿病性腎症・糖尿病性神経症・糖尿病性網膜症(合併症)が診断された人の数が比較されました。
◆女性では生活習慣改善のほうが合併症が予防された
DPP研究からこの研究に続けて参加した2,776人について、次の結果が得られました。
平均15年のフォローアップの間に、偽薬群と比べて生活習慣介入群で糖尿病発症率は27%減少し(ハザード比0.73、95%信頼区間0.65-0.83、P<0.0001)、メトホルミン群では18%減少し(0.82、0.72-0.93、P=0.001)、群間の差は経時的に減少した。[...]女性では(1,887人)、生活習慣介入は総微小血管アウトカムの罹患率が偽薬群(11.0%、95%信頼区間9.6-12.6)およびメトホルミン群(11.2%、9.7-12.9)に比べて低いことと関連し(8.7%、7.4-10.2)、生活習慣介入群では偽薬群と比べて21%(P=0.03)の減少、メトホルミン群と比べて22%(P=0.02)の減少があった。
新たに糖尿病を発症した率は、偽薬のグループに比べて生活習慣改善のグループで27%少なく、メトホルミンのグループでは18%少なくなっていました。
特に女性では、追跡終了時点で糖尿病の合併症があった人の割合が、メトホルミンのグループよりも生活習慣改善のグループで少なくなっていました。
メトホルミンは歴史の長い薬で、糖尿病治療薬には最近開発されたものも数多くあるため、ほかの薬を使うと違う結果が出る可能性は考えられます。とはいえ、生活習慣改善の重要さが改めて示されたと言えるのかもしれません。
執筆者
Long-term effects of lifestyle intervention or metformin on diabetes development and microvascular complications over 15-year follow-up: the Diabetes Prevention Program Outcomes Study.
Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Sep 11[Epub ahead of print]
[PMID: 26377054]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。