2015.09.15 | ニュース

不整脈をペースメーカーで治療、洞不全症候群に対する効果は?

6件のシステマティックレビュー
from Health technology assessment (Winchester, England)
不整脈をペースメーカーで治療、洞不全症候群に対する効果は?の写真
(C) Swapan - Fotolia.com

不整脈の一種である洞不全症候群では、心拍数が少なくなり、疲労や失神などの症状が現れます。治療として使われるペースメーカーの効果について、これまでの研究結果がまとめられました。

◆洞不全症候群に対して心房心室ペーシングと心房単室ペーシングを比較

ペースメーカーには、不整脈の種類などに応じていくつかの種類があります。洞不全症候群では心房で作られるはずの電気信号が作られないことで心拍数が少なくなりますが、この治療に使われるペースメーカーは、心房だけに電気刺激を与える心房単室ペースメーカーと、心房と心室の両方に電気刺激を与える心房心室ペースメーカーがあります。

研究班は、過去の研究を集めて内容を検討しました。対象者は、洞不全症候群により心拍数が少なく、症状がある人のうち、経過が違うと予想される房室ブロックが見られた人を除くこととし、心房心室ペースメーカーの効果を心房単室ペースメーカーと比較したものを採用しました。

 

◆心房心室ペースメーカーが有効

見つかった6件の研究から、次の結果が得られました。

心房心室ペーシングは心房単腔ペーシングに比べて再手術の統計的に有意な減少と関連した(オッズ比0.48、95%信頼区間0.36-0.63)。

発作心房細動のリスクもまた、心房単腔ペーシングに比べて心房心室ペーシングで減少した(オッズ比0.75、95%信頼区間0.59-0.96)。

心不全のリスクは心房心室ペースメーカーを使うか心房単室ペースメーカーを使うかの決定に影響する可能性があった。年齢(75歳以下と76歳以上)および心不全のリスクに基づいた解析の結果、より高齢の患者では心房心室ペースメーカーが心房単室ペースメーカーよりも優位(費用が少なく効果が高い)であり、対してより若い患者では心房単室ペースメーカーが心房心室ペースメーカーよりも優位とされた。

心房心室ペースメーカーを使った場合のほうが、再手術、発作性心房細動の発生が少なくなりました。特に、76歳以上の患者に対して費用対効果が優れていると見られました。

研究班は「洞不全症候群があり房室伝導障害の所見がない患者において、心房心室ペースメーカーは心房単室ペースメーカーと比べて費用対効果が優れているようだ」と結論しています。

 

洞不全症候群は、それ自体が心停止を起こすような致命的な不整脈に移行することはまれですが、長期的には失神が事故につながるなどの危険があります。病気の状態に応じてより適切な治療を選ぶために、こうした検証が続けられています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Dual-chamber pacemakers for treating symptomatic bradycardia due to sick sinus syndrome without atrioventricular block: a systematic review and economic evaluation.

Health Technol Assess. 2015 Aug

[PMID: 26293406]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。