2015.09.10 | ニュース

G6PD欠乏症の人がマラリアの薬を使っても安全か?

カンボジアで18人がプリマキンを使用

from BMC medicine

G6PD欠乏症の人がマラリアの薬を使っても安全か?の写真

マラリアの治療に使われるプリマキンという薬は、副作用として貧血を起こすことがあり、G6PD欠乏症という病気で貧血になりやすい人では注意が必要と考えられます。カンボジアで実際の治療に使った結果が報告されました。

◆G6PD欠乏症でも貧血が起こらないかを検討

研究班は、カンボジアで三日熱マラリアの患者に対してプリマキンを含む治療を行い、G6PD欠乏症の人とそうでない人で、重症の貧血などの副作用に違いがあるかを調べました。

貧血の程度は赤血球に含まれるヘモグロビンの量で測り、治療開始前と比べてヘモグロビンが25%を超えて減少した場合、ヘモグロビンの量が7g/dlよりも少なくなった場合などを比較しました。

G6PD欠乏症は遺伝や細菌感染などが原因とされ、地域ごとに頻度が違い、カンボジアなど東南アジアでは多いと言われています。

 

◆ヘモグロビン減少は18人中5人

次の結果が得られました。

治療後7日までに、ヘモグロビンの25%を超える低下はG6PD欠乏症の患者のうち5人(27.7%)に見られ、対してG6PDが正常の対照群では見られなかった(P=0.00049)。これらのG6PD欠乏症患者のうち1人は輸血を必要とした(治療開始日から治療後5日にかけて、その間のHbは10.0-7.2g/dl)。深刻な貧血、ヘモグロビン尿、メトヘモグロビン濃度4.9%超、急性腎障害が起こった患者はいなかった。

ヘモグロビンが25%を超えて減少した人は、G6PD欠乏症の人では18人中5人でしたが、G6PDが正常の人ではいませんでした。そのうち1人では輸血が必要になりました。そのほか重症の貧血など、懸念された深刻な副作用が見られた人は、G6PD欠乏症の人にもいませんでした。

研究班は「G6PD欠乏症患者における週1回のプリマキン治療は、医学的監視を行い、治療前にG6PDの状態をスクリーニングすることの理由となりうる」と結論しています。

 

G6PD欠乏症の人がプリマキンを使うとやはりある程度の割合で貧血が起こるという結果でしたが、死因にもなるマラリアに対して、貧血を恐れてプリマキンを使わないほどではないのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Tolerability and safety of weekly primaquine against relapse of Plasmodium vivax in Cambodians with glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency.

BMC Med. 2015 Aug 25

[PMID: 26303162]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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