◆8か国の統計を比較
研究班は、WHOの統計資料や各国政府の調査資料を使って、オーストラリア、カナダ、フランス、日本、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカについて、1980年から2007年の健康状態の情報と、冠動脈疾患による死亡率を調べました。
◆日本は冠動脈疾患による死亡率が最も低い
得られたデータの解析から次の結果が得られました。
これらの国の中で、年齢調整冠動脈疾患死亡率は1980年から2007年まで一貫して下がり続けた。この死亡率低下は、日本で総コレステロールが一貫して上昇したことを除いて、総コレステロールの低下にともなっていた。現在50歳から69歳の個人の出生コホートにおいて、総コレステロールのレベルはアメリカよりも日本が高くあり続けているが、冠動脈疾患死亡率は日本が最も低いままである:アメリカに比べると男性では67%以上低く、女性では75%以上低い。
冠動脈疾患による死亡率は8か国のうち日本が一貫して最も低く、8か国のすべてで下がり続けていました。総コレステロールの値は、日本では上がり続けていましたが、ほかの7か国では下がり続けていました。
研究班は、「この観察は日本に特有の保護的な要因があることを示唆するかもしれない」と結論しています。
コレステロールに代表される脂質異常症が冠動脈疾患の主な原因と考えると、一見不思議な傾向に見えます。コレステロールだけを見ても十分な情報にはならないのかもしれません。
ほかに関係しそうな要素として、肥満、糖尿病、高血圧、喫煙、飲酒、冠動脈疾患発症後の治療、ほかの死因(がんや脳卒中など)の増減など多くのことが考えられますが、これらを計算に入れても本当に日本に特有の傾向が残るのかどうか、突き詰めた議論を見てみたくなります。
執筆者
Continuous decline in mortality from coronary heart disease in Japan despite a continuous and marked rise in total cholesterol: Japanese experience after the Seven Countries Study.
Int J Epidemiol. 2015 Jul 16 [Epub ahead of print]
[PMID: 26182938]
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