2015.07.04 | ニュース

コレステロールを下げる薬が急性膵炎の予防に?スタチン使用との関連

アメリカ・カリフォルニア州で400万人を後ろ向きに調査
from Gut
コレステロールを下げる薬が急性膵炎の予防に?スタチン使用との関連の写真
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急性膵炎とは、膵臓から分泌される消化酵素(蛋白分解酵素)が何らかの原因で自分自身の膵臓を破壊してしまう病気です。重症化すると、多臓器不全におちいり死に至ることもあります。これまで急性膵炎の予防としては食生活の改善が重要といわれてきましたが、スタチンという脂質異常症(高脂血症)の薬剤にも急性膵炎を予防する可能性があることが報告されました。

◆アメリカ、カリフォルニア州の400万人で調査

カリフォルニアの健康管理システムに登録された396万7859人が対象となり、スタチンを使っていたかどうかで区別して、急性膵炎発症率を調査されました。

 

◆スタチン内服患者では急性膵炎の発症が抑制された

調査結果は以下のとおりです。

登録された3,967,859人の成人のうち、フォローアップ期間は中央値3.4年であり、この期間中に急性膵炎を発症したのは、全体では6,399人だった。シンバスタチン内服患者は707,236人であり、これらの患者では対照群に比べて、胆石症アルコール依存高トリグリセリド血症が多くみられた。シンバスタチン群では急性膵炎の粗発症率比は0.626(95%信頼限界 0.588 - 0.668, p<0.0001)であった。多変量解析により、年齢、性別、人種、胆石症アルコール依存、喫煙、高トリグリセリド血症について補正すると、シンバスタチン内服は膵炎の発症率を下げる独立した因子であることが示された(補正リスク比0.29, 95%信頼限界0.27 - 0.31)。またアトルバスタチンについても同様の効果がみられた(補正リスク比0.33、95%信頼限界0.29 - 0.38)。

今回の研究で、シンバスタチン、アトルバスタチンという2種類のスタチンを使っていた人で、急性膵炎の発症リスクが低下していたことが示されました。研究チームは、「この効果のメカニズムについて、また急性膵炎の予防においてこれらの物質を治療選択肢とする可能性があるかどうかについて、さらなる研究が必要である」と言及しています。

 

急性膵炎の原因として、最も多いのはアルコール多飲で、次に多いのが胆石ですが、原因不明のこともあります。脂質異常症治療薬であるスタチンは、コレステロールの値を下げるだけでなく、ほかにもさまざまな影響があると考えられています。急性膵炎の発症予防効果についても、今後の研究が期待されます。

執筆者

田嶋 美裕

参考文献

Simvastatin is associated with reduced risk of acute pancreatitis: findings from a regional integrated healthcare system.

Gut. 2015 Jan

[PMID: 24742713]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。