2017.09.11 | ニュース

急性膵炎で腹痛、しかし飲酒も胆石もなかった74歳男性

アメリカから症例報告

from The American journal of case reports

急性膵炎で腹痛、しかし飲酒も胆石もなかった74歳男性の写真

急性膵炎の原因になるものとして飲酒や胆石が知られていますが、原因がわからない場合もあります。薬が原因と思われた人の例が報告されました。

フロセミドによる薬剤性急性膵炎の症例報告

アメリカの医学健康科学大学の研究者らが、利尿薬のフロセミドによると思われた急性膵炎の患者の例を、専門誌『The American Journal of Case Reports』に報告しました。

この患者は74歳男性で、朝から強い上腹部痛がありました。痛みは背中まで広がりがあり、軽い吐き気もありました。妻と一緒に散歩をして痛みを紛らわそうとしましたが、痛みが続くため救急部を受診しました。

以前に冠動脈疾患、睡眠時無呼吸、胃食道逆流症の診断を受けたことがありました。

発熱・動悸・息切れ・便秘・下痢・体重の変化はありませんでした。

喫煙したことも飲酒したこともありませんでした。6週間ほど前に、両脚のむくみに対してフロセミド(利尿薬)を処方されていました。

診察では上腹部を押すと痛みが強くなりました。血液検査でアミラーゼ1,022U/l、リパーゼ600U/lとともに高値でした。超音波検査とレントゲンの画像では膵臓を含めてはっきりした原因が見つかりませんでした。一般に急性膵炎の原因として胆石も考えられますが、胆石も見つかりませんでした

症状が急性膵炎と一致するほか、アミラーゼ・リパーゼが高値だったことから急性膵炎が疑われました。ほかの原因を強く疑わせる変化は見つかりませんでした。

輸液、絶食のうえフロセミドを中止したところ、24時間後には症状が治まりました

 

本当にフロセミドが原因だったのか?

報告の著者らは、最近フロセミドを飲み始めていたこと、フロセミドを中止すると治まったことなどから、フロセミドが原因の急性膵炎だったとする考えを記しています。

フロセミドによる薬剤性急性膵炎はまれですが、過去に報告があり、中にはフロセミドの使用開始から7週間経って急性膵炎が見つかった例もありました。

ほかに考えられる原因については、例として神経内分泌腫瘍は黄疸や体重減少がないことから考えにくく、黄疸・唾液腺症状・肺病変がないことからIgG4関連疾患は考えにくいとしています。

 

薬の影響にどう気を付ける?

フロセミドによると思われた急性膵炎の患者の例を紹介しました。

フロセミドが急性膵炎を起こすことはあるとしてもごく少数と思われますが、一般に、原因がはっきりしない病気が現れた時には最近変えた薬の影響を考えることが欠かせません。

どんな薬にも副作用はあります。まれな副作用も含めれば、どの薬からどのような影響が出るかは多岐にわたる可能性があり、予測がつきません。何かあったときに素早く適切に対応するためには、お薬手帳を活用するなどして、いつから・どのような薬を飲んでいるかをできる限り正確に医師に伝えることが大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Medication as a Cause of Acute Pancreatitis.

Am J Case Rep. 2017 Jul 28.

[PMID: 28751631]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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