◆フランスとイタリアの1,127人を追跡調査
研究班は、次のように調査を行いました。
低い(130mmHg未満の)収縮期血圧と降圧薬の多剤治療の間の、2年全死因死亡率に対する交互作用を解析した。80歳を超えて、フランスとイタリアの養護施設で生活している合計1,127人の女性と男性(平均年齢87.6歳、78.1%が女性)を対象とし、検査を行い、2年間モニターした。
フランスとイタリアの養護施設で生活している80歳を超えた人1,127人を対象として2年間追跡調査し、血圧、降圧薬治療と死亡率の関係を調べました。
ここでは死因を問わない全体としての死亡率(全死因死亡率)を比較しています。血圧を下げることによって仮に脳出血が減ったとしても、ほかの病気などで死亡することが増えていれば、治療効果に疑問がつくかもしれません。そういった変化が起こっていないかを検討するため、血圧と降圧薬治療の影響は全死因死亡率によって評価しました。
◆収縮期血圧130mmHg未満、2剤以上使用で死亡率増加
2年間の調査結果を統計解析したところ、次の関連が見られました。
低い収縮期血圧と2剤以上の降圧薬の治療の間に有意な交互作用が認められ、その結果、収縮期血圧が低くかつ複数の降圧薬を使っている患者では、ほかの参加者に比べて死亡率が高くなっていた(調整しないハザード比1.81、95%信頼区間1.36-2.41、調整ハザード比1.78、95%信頼区間1.34-2.37、いずれもP<0.001)。
収縮期血圧が130mmHg未満で2剤以上の降圧薬を使っていた人では、そうでない人に比べて死亡率が高くなっていました。
関連に影響しそうな要因として、心臓などの病気がもともとあったかどうか、高血圧の診断に至らないうちに降圧薬を使っているかなどの点を計算に入れても、この関連は統計的に有意でした。
研究班は、「この研究の結果は、収縮期血圧が低い(130mmHg未満の)虚弱な高齢の患者に対する降圧薬多剤治療の安全性について、警戒を促す注釈を提示する」と結論しています。
80歳を超える人という限定がついていますが、降圧薬の使い方を考えるひとつの材料になるかもしれません。ただし、ここで検討されていない原因によって、より重症の人が重点的な降圧薬治療を受けていたという可能性も否定しきれません。その点は違った方法の研究によって、より確かにできるかもしれません。
なお、MEDLEYニュースでは過度な高血圧治療についての研究をほかにも紹介しています。興味のある方はあわせてご覧ください。
「過度な高血圧治療は認知症に悪影響を及ぼす?」
http://medley.life/news/item/556e1b8542e56f77045256d4
執筆者
Treatment With Multiple Blood Pressure Medications, Achieved Blood Pressure, and Mortality in Older Nursing Home Residents: The PARTAGE Study.
JAMA Intern Med. 2015 Jun 1
[PMID: 25685919]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。