「ほどほどのお酒はカラダにいい」はホント?
適度な飲酒はカラダに良い!という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際に、過去の研究でも、適度な飲酒は心血管疾患(虚血性心疾患や脳卒中など)のリスクを減らす可能性があると報告されています。しかし、今回の研究では、適度な飲酒が寿命を延ばすとは言えない場合もある、という結果が出ています。
◆飲酒量と死亡率の関連性を検証
研究チームは、1998-2008年にイギリスで行われた計52,891名の調査研究で得られた情報から、飲酒量と死亡率の関連性を検証しました。
使われたデータの中には、過去1年間の1週間あたりの飲酒量を聞き取り調査した質問項目などが含まれています。研究チームはこれらのデータを統合して解析しました。
◆適度な飲酒は寿命を延ばすとは言えない?
調査の結果、以下のことがわかりました。
統計解析時に交絡因子で調整しないモデルでは、すべての年齢、性別において、適度な飲酒の効果があることが認められた。
しかし、これらの効果はほとんどの飲酒量のカテゴリーについて、個人特性、社会経済特性、ライフスタイルといった要因で調整すると小さくなった。
つまり、一見、これまで知られていたのと同様に、適度な飲酒には効果があるように見えましたが、年齢・性別や生活習慣など、飲酒量と死亡率の両方に関係する要因を揃えて比較したところ、飲酒による違いは小さくなりました。
また、適度な飲酒の効果は50-64歳の男性と、65歳以上の女性に限られたとも報告しています。
飲酒で死亡率が下がるように見えた50-64歳の男性では、死亡率が低い条件として以下のことが見つかりました。
まったく飲まない人と比較して、1週間の飲酒量が15.1-20ユニット(ハザード比0.49、95%信頼区間0.26-0.91)[...]である人でだけ、死亡率が
有意 に低かった。
ユニットとは、飲酒量(mL)×アルコール度数(%)/1000 のことです。1ユニットはビール200mL程度に相当します。
50-64歳の男性で、1週間に15.1-20ユニット飲んだ人は、まったく飲まない人よりも死亡率が低いという関連がありました。
同様に、65歳以上の女性では以下のように述べられています。
まったく飲まない人と比較して、1週間の飲酒量が10ユニット以下の人は[...]、死亡率が有意に低かった。
65歳以上の女性の中では、1週間当たりの飲酒量が10ユニット以下の場合に、まったく飲まない人よりも死亡率が低いという関連がありました。
筆者らは、今回の研究結果をうけて、「アルコール消費と全死因死亡率の間にある有益な用量反応関係は、大まかには65歳以上の女性に限られるかもしれない」と述べています。
適度な飲酒はカラダに良い!と聞くことはときどきありますが、今回の研究結果を考慮すると、必ずしも当てはまらない場合もありそうです。
執筆者
All cause mortality and the case for age specific alcohol consumption guidelines: pooled analyses of up to 10 population based cohorts.
BMJ. 2015 Feb
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。