トリアゾール系抗真菌薬(内服薬・注射剤)
真菌(カビ)の細胞膜の合成を阻害し、白癬症やカンジダ症などの真菌感染症を治療する薬

トリアゾール系抗真菌薬(内服薬・注射剤)の解説

トリアゾール系抗真菌薬(内服薬・注射剤)の効果と作用機序

  • 真菌(カビ)の細胞膜の合成を阻害し、白癬症やカンジダ症などの真菌感染症を治療する薬
    • 白癬症やカンジダ症などの真菌感染症は、真菌の感染により引き起こされる病気で特に免疫力の低下している場合などでは感染がおこりやすい
    • 真菌は細胞膜により覆われていて、この細胞膜がないと生存できない
    • 本剤は真菌の細胞膜合成を阻害し抗真菌作用をあらわす

トリアゾール系抗真菌薬(内服薬・注射剤)の薬理作用

真菌(カビ)によって引き起こされる真菌症は、感染する場所が体表に局在する表在性真菌症と、真菌が肺、肝臓、腎臓、脳などの体の深部に入り込んで感染する深在性真菌症に分かれる。主な表在性真菌症には白癬菌による足白癬(水虫)や爪白癬などがある。一方、深在性真菌症は生命の危機を引き起こす場合もある重篤な感染症で、骨髄などの移植後や免疫抑制薬による治療などなんらかの理由により免疫力が低下している場合などにカンジダ、アスペルギルスなどの真菌が日和見感染することで発症する。

真菌は強固な細胞壁で覆われていて、細胞壁の内側には脂質を含む細胞膜があり細胞質を覆っている。エルゴステロールは細胞膜を構成する脂質(主要構成脂質)で、細胞質内の合成経路によってつくられる。

本剤は主に真菌細胞膜の構成脂質であるエルゴステロールの合成を阻害し膜を不安定化することで抗真菌作用をあらわす。本剤が適用される疾患は薬剤などによっても異なり、主に白癬症などの表在性真菌症に使用する薬剤や、主に深在性真菌症に使用する薬剤などがある。

トリアゾール系抗真菌薬(内服薬・注射剤)の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 腹痛、吐き気、下痢、食欲不振などがあらわれる場合がある
  • 皮膚症状
    • 発疹、痒みなどがあらわれる場合がある
  • 肝機能障害(頻度は薬剤・使用量などによっても異なる)
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、吐き気などがみられ症状が続く場合は、医師や薬剤師に連絡する
  • 併用薬に関する注意
    • 本剤は比較的多くの薬剤と併用禁忌(併用できない)や併用注意であるため慎重に使用する

トリアゾール系抗真菌薬(内服薬・注射剤)の一般的な商品とその特徴

イトリゾール

  • イトラコナゾール製剤
  • カプセル剤、液剤(内用液)、注射剤があり用途などによって選択される
  • イトリゾールカプセルに関して
    • 通常、食直後(一般的に食後10分以内)に服用する
    • 爪白癬治療ではパルス療法が選択でき、その場合の服用方法は「通常、1日量400mgを1週間服用、その後3週間休薬」これを1サイクルとして、3サイクル繰り返す(服用量に関しては減量する場合もある)
  • イトリゾール内用液に関して
    • 通常、空腹時に服用する
    • 造血幹細胞移植患者などへの深在性真菌症の予防などで使用される場合もある

ジフルカン

  • フルコナゾール製剤
  • カプセル剤、ドライシロップ剤、注射剤があり用途などによって選択される
  • 造血幹細胞移植患者への深在性真菌症の予防などで使用する場合もある

プロジフ

  • ホスフルコナゾール製剤
    • フルコナゾールのリン酸化プロドラッグ
      ・投与後、生体内でフルコナゾールに変換(加水分解)され抗真菌作用をあらわす
    • フルコナゾールの静注製剤と比べ投与液量が少なく液量負担が軽減できる
  • 主に深在性真菌症で使用される

ブイフェンド

  • ボリコナゾール製剤
  • 錠剤、ドライシロップ剤、注射剤があり用途などによって選択される
  • 造血幹細胞移植患者への深在性真菌症の予防などで使用される場合もある

ネイリン

  • ホスラブコナゾール製剤
  • 主に爪白癬に使用される
  • 通常、1日1回(食事の有無に関わらず服用可能)服用し12週間継続する

ノクサフィル

  • ポサコナゾール製剤
  • 錠剤、注射剤があり用途などによって選択される
  • 造血幹細胞移植患者への深在性真菌症の予防などで使用される場合もある