しかんしゅっけつ
弛緩出血
胎盤の排出後に子宮筋が収縮せず、出血の量が多くなること
1人の医師がチェック 8回の改訂 最終更新: 2017.07.03

弛緩出血の基礎知識

弛緩出血について

  • 通常、胎盤が剥がれると子宮の筋肉は自然に収縮し、胎盤が剥がれた部位からの出血を止める作用が働く
  • 弛緩出血とは胎盤娩出後に子宮筋が収縮せず、大量の出血がある場合をいう
    • 分娩の際に500ml以上出血ある場合を異常出血といい、全分娩の10%程度にみられる
    • 特に経膣分娩で1000ml、帝王切開で2000mlの出血を超える場合にはDICに移行する可能性が高まる
  • 分娩時の出血は妊産婦死亡の最多原因であり、母体の健康状態に影響を及ぼすため、早期の治療が必要となる
  • 主な原因
    • 巨大児羊水過多、多胎妊娠などの子宮筋の過伸展
    • 分娩の遷延
    • 母体疲労
    • 子宮筋腫合併
    • 胎盤の遺残
    • 子宮収縮促進剤の長時間の投与
    • 膀胱や直腸の充満
    • 全身麻酔による手術
    • 弛緩出血の既往

弛緩出血の症状

  • 子宮の収縮不良
    • 子宮の底部が触診で分かりにくい
  • 暗赤色の持続的な出血
    • 分娩時の裂傷や子宮内反症でも出血量の増加がみられるため、診察をくまなく行って鑑別することが必要
  • 母体の全身状態の悪化
    • 血圧の低下
    • 心拍数の増加
    • 顔面蒼白
    • 呼吸促進
    • 吐き気(悪心)
    • 嘔吐
  • 弛緩出血後には貧血の症状が強く出ることがある
    • 無理はせずに家族のサポートを得ながら育児などを行うようにする

弛緩出血の検査・診断

  • 診察
    • 子宮収縮の状態、胎盤遺残の有無の確認を行う
    • 頸管裂傷や子宮内反症などがないかを確認する
    • 膀胱に尿が溜まりすぎていないかを確認する
  • 超音波検査
    • 子宮の大きさ、胎盤遺残の有無を確かめる
  • 血液検査
    • 貧血の有無、血液を固まらせる仕組みの異常の有無を調べる

弛緩出血の治療法

  • 子宮筋のマッサージ
    • 腹部の上から子宮筋を円を書くようにマッサージを行い子宮筋の収縮を促す
    • 子宮筋が収縮しない場合には、膣からも手を入れてマッサージを行う場合がある(双手圧迫)
    • 膀胱が充満している場合には、導尿を行うことで収縮が促されることがある
  • 子宮収縮薬の投与
    • オキシトシン注射薬(アトニン−O注)を第1選択として急速に投与する
    • その他にメチルエルゴメトリンなどを用い、子宮の収縮を促す場合がある
  • 輸血
    • 1000ml以上の出血があった場合や出血性ショックの状態に至っている場合には、輸血が考慮される
  • 子宮内容除去術
    • 胎盤の遺残があった場合に麻酔下で内容物の除去を行うことで子宮の収縮を促す
  • バルーンタンポナーデ法
    • シリコン製のバルーンを子宮内で拡張させることで子宮内を圧迫し止血する
    • バルーンの代わりにガーゼを用いて子宮内を圧迫する方法もある
  • 子宮動脈塞栓
    • マッサージや子宮収縮抑制剤の投与で止血が困難であった場合に考慮される
    • 足の付け根からカテーテルを挿入し、子宮動脈を吸収性のゼラチンスポンジで塞栓する
    • 止血効果だけではなく、妊娠可能であることと手術の様な侵襲がないことが利点となる
    • 放射線科医と共同が必要なため、施設によっては行えない場合もある
  • 子宮全摘術
    • どのような処置を行っても止血が困難であった場合に考慮される
    • 子宮を摘出することで出血の原因を取り除く方法
    • 妊孕性が失われてしまうため、次の妊娠は行うことができない
  • 弛緩出血に対しての治療は緊急性が高い
    • 分娩を行った施設で対応困難な場合には、高度な治療が可能な施設に救急搬送になる


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