しかんしゅっけつ
弛緩出血
胎盤の排出後に子宮筋が収縮せず、出血の量が多くなること
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最終更新: 2018.05.29
弛緩出血の基礎知識
POINT 弛緩出血とは
分娩後に「子宮の筋肉が十分に収縮しないこと」「胎盤が剥がれた部分や子宮静脈洞からの出血」が原因で大量出血を起こすことを弛緩出血といいます。分娩に時間がかかった場合や、急速に分娩となった場合、また子宮の中に胎盤の一部や血塊などの遺残物がある場合に起こりやすいと考えられています。弛緩出血が起きると分娩後にふらつき、気分不快などの症状が現れることがあります。「子宮内の遺残物を取り除く」「子宮筋のマッサージ」「子宮を収縮させる薬」などを使って治療を行います。出血量が多い場合には、状態が急変することもあるので、それに備えて設備の整った大きな病院に転院することもあります。
弛緩出血について
- 通常、胎盤が剥がれると子宮の筋肉は自然に収縮し、胎盤が剥がれた部位からの出血を止める作用が働く
- 弛緩出血とは胎盤娩出後に子宮筋が収縮せず、大量の出血がある場合をいう
- 分娩の際に500ml以上出血ある場合を異常出血といい、全分娩の10%程度にみられる
- 特に
経腟分娩 で1000ml、帝王切開で2000mlの出血を超える場合にはDICに移行する可能性が高まる
- 分娩時の出血は妊産婦死亡の最多原因であり、母体の健康状態に影響を及ぼすため、早期の治療が必要となる
- 主な原因
弛緩出血の症状
弛緩出血の検査・診断
弛緩出血の治療法
- 母体の全身管理
- 輸血可能な静脈路を確保し、十分な
輸液 を行う
- 輸血可能な静脈路を確保し、十分な
- 子宮筋のマッサージ
- 腹部の上から子宮筋を円を書くようにマッサージを行い子宮筋の収縮を促す
- 子宮筋が収縮しない場合には、腟からも手を入れてマッサージを行う場合がある(双手圧迫)
- 膀胱が充満している場合には、導尿を行うことで収縮が促されることがある
- 子宮収縮薬の投与
- オキシトシン注射薬(アトニン−O注)を第1選択として急速に投与する
- その他にメチルエルゴメトリンなどを用い、子宮の収縮を促す場合がある
- 輸血
- 1000ml以上の出血があった場合や出血性ショックの状態に至っている場合には、輸血が考慮される
- 抗DIC療法
- 産科DIC(http://www.jsognh.jp/dic/)と判断した場合に抗DIC製剤の投与を考慮する
- 子宮内容除去術
- 胎盤の遺残があった場合に麻酔下で内容物の除去を行うことで子宮の収縮を促す
- バルーンタンポナーデ法
- シリコン製のバルーンを子宮内で拡張させることで子宮内を圧迫し止血する
- バルーンの代わりにガーゼを用いて子宮内を圧迫する方法もある
- 子宮動脈
塞栓 術- マッサージや子宮収縮抑制剤の投与で止血が困難であった場合に考慮される
- 足の付け根からカテーテルを挿入し、子宮動脈を吸収性のゼラチンスポンジで塞栓する
- 止血効果だけではなく、妊娠可能であることと手術の様な侵襲がないことが利点となる
- 放射線科医と共同が必要なため、施設によっては行えない場合もある
- 子宮全摘術
- どのような処置を行っても止血が困難であった場合に考慮される
- 子宮を摘出することで出血の原因を取り除く方法
- 妊孕性が失われてしまうため、次の妊娠は行うことができない
- 弛緩出血に対しての治療は緊急性が高い
- 分娩を行った施設で対応困難な場合には、高度な治療が可能な施設に救急搬送になる