せっぱくそうざん
切迫早産
早産になる危険性が高い状態のこと
6人の医師がチェック 111回の改訂 最終更新: 2022.01.28

早産の赤ちゃんの特徴は?

妊娠22週から妊娠36週6日までに出産に至った赤ちゃんのことを早産児といいます。早産児の赤ちゃんの特徴は、早産に至った背景や週数、出産時の状況によっても異なります。一般的な特徴を以下に記載します。

1. 早産児、低出生体重児とは?

妊娠22週0日から妊娠36週6日までの間に出産に至った赤ちゃんを早産児といいます。

生まれたときの体重(出生体重)が2,500g未満の赤ちゃんのことを低出生体重児といいます。低出生体重児の中でも1,500g未満の赤ちゃんを極低出生体重児、1,000g未満の赤ちゃんを超低出生体重児といいます。低出生体重児の中には、妊娠37週以降の正期産ではあるが、何らかの理由によって体重が2,500g未満であった場合の赤ちゃんも含まれます。特に出生体重が2,000g未満の場合にはNICU(新生児集中治療室)で治療する場合が多いです。NICUでは赤ちゃんを保育器に入れて体温管理や呼吸器の管理など集中的な治療を行います。

厚生労働省の人口動態調査によれば、平成28年に早産児の割合は5.5%。低出生体重児の割合は男児で8.3%、女児で10.6%となっています。

2. 早産となった赤ちゃんの生存率はどのくらい?

日本は世界でも最も新生児死亡率(生後4週未満の死亡の割合)が低い国の1つです。新生児死亡率は1000人あたり0.9人となっています。

厚生労働省が公開している「低出生体重児保健指導マニュアル」によれば、2003年から2007年出生の在胎週数別早産児のNICU退院時点での生存率は表のとおりでした。

在胎週数 NICU退院時点での生存率
22週から23週 54.9%
24週から25週 82.1%
26週から27週 90.9%
28週から29週 95.6%
30週から31週 96.5%

出生時の体重別では表のとおりでした。

出生体重 NICU退院時点での生存率
500g以下 50.0%
501gから750g 78.9%
751gから1000g 96.6%

3. 早産の赤ちゃんの特徴は?

赤ちゃんはお母さんのお腹の中で正期産になるまで徐々に成長を遂げていきます。そのため、早産となった赤ちゃんは出産時点での在胎週数(お腹の中で妊娠何週まで過ごすことができたか)によってその特徴が異なります。生まれてきたときの状態などによって異なることもありますが、一般的な特徴を以下に記載します。

妊娠22週0日から妊娠27週6日までの赤ちゃん

妊娠28週未満で出産された赤ちゃんは生命の維持に必要な器官がまだ未熟な状況でありNICU(新生児集中治療室)での集中的な管理が必要になります。赤ちゃんは保育器の中に入ります。体温の管理や人工呼吸器による呼吸のサポート、心拍や血圧のモニタリング、点滴治療、細菌などからの感染予防などを行います。また、妊娠28週未満の場合には網膜の発達が未熟であり未熟児網膜症となる確率が高く、将来の視力に影響がある場合があります。

発達の障害を合併する場合もあります。割合は出生体重や在胎期間によって異なります。日本での低出生体重児の調査によれば、出生体重が1,000g以下の赤ちゃんは3歳時点での発達障害(発達指数が70未満)の発生頻度は21%でした。また発達がボーダーライン上(発達指数が70から84)の赤ちゃんは32.7%でした。

しかし、これらの発達の障害は、合併症の疾患の改善や体格の成長などにより改善したり、学童期(6歳以降)に変化する場合もあります。病院で継続的に観察しつつ発達をサポートします。

妊娠28週0日から妊娠33週6日までの赤ちゃん

出生体重が1,000g以上になると、3歳までの死亡率は3.4%とかなり低くなります。しかし、出生直後は集中治療が必要になる場合が多く、NICU(新生児集中治療室)での管理が必要になります。妊娠34週未満の場合には赤ちゃんの肺の成長が未熟であるために呼吸窮迫症候群や未熟児無呼吸発作などを起こしやすく、人工呼吸器によるサポートが必要になる場合があります。

妊娠34週を過ぎて体重が2,000gほどになると体温を維持する機能や母乳やミルクを哺乳する力もついてくるとされています。発達の障害に関しては妊娠28週未満に比較して障害が現れる割合は少なくなります。病院での観察を続けます。

妊娠34週0日から妊娠36週6日までの赤ちゃん

正期産に近い早産であってもいくらかのリスクが指摘されています。妊娠37週0日以降の赤ちゃんに比べると呼吸障害や母乳の飲みが悪い(哺乳障害)、病的黄疸低血糖になりやすいなどの影響が現れる場合があります。発達の遅れに関しても、正期産の赤ちゃんに比べると発生率が高いと言われています。しかし、多くの場合は遅れもなく正常な発達を遂げることができます。

参考文献
Pediatrics. 2009 Apr;123(4):e622-9.

4.早産の赤ちゃんに起こりやすい病気は?

早産の赤ちゃんは、妊娠37週0日以降に比べるとさまざまな病気が起こりやすい状況にあります。下記に頻度の多い代表的な疾患を記載します。

新生児呼吸窮迫症候群(RDS)

特に34週0日未満で出生した赤ちゃんは、肺サーファクタントという肺をふくらませる物質が不足していることから、新生児呼吸窮迫症候群を起こしやすくなります。新生児呼吸窮迫症候群は出生直後に、チアノーゼ(皮膚が青くなること)や陥没呼吸(息を吸うときに胸の一部が凹むこと)など赤ちゃんが苦しそうに呼吸している兆候をあらわします。肺サーファクタントの補充や人工呼吸器による管理が必要になることがあります。妊娠中に母体にステロイドを投与することで予防を行うことがあります。

未熟児無呼吸発作

20秒以上持続する呼吸停止もしくは20秒未満であっても徐脈やチアノーゼを伴うような呼吸停止が起こる場合を未熟児無呼吸発作といいます。早産児では、呼吸のリズムを調整する呼吸中枢の機能が未熟であるために起こりやすい疾患です。妊娠28週0日未満で生まれる場合には90%ほどの赤ちゃんが未熟児無呼吸発作を起こすともいわれています。皮膚の刺激や赤ちゃんの体勢を変えることで呼吸を促したり、呼吸中枢を刺激するような薬物の投与(テオフィリン)、鼻から酸素を送り込むことで無呼吸を予防するような nasal CPAP(ネイザルシーパップ)や人工呼吸器での管理が必要になることがあります。

新生児壊死性腸炎(NEC)

腸管が未熟であるために血液の流れが障害され、それに細菌の感染が加わって起こる病気です。低出生体重児に起こりやすいといわれ、新生児壊死性腸炎になった赤ちゃんの内の80%は1,500g未満の赤ちゃんです。ミルクや母乳を飲み始めて5日から6日頃に起こることが多く、お腹が張る、嘔吐、母乳やミルクの消化が悪い、飲みが悪くなる、活気がないことなどの症状があらわれます。新生児壊死性腸炎と診断された場合には、母乳やミルクを中止して腸を休ませ抗生剤を投与したり、場合によっては手術が必要な場合もあります。またできるだけ母乳を与えることが、新生児壊死性腸炎の予防にも繋がるといわれています。

動脈管開存症(PDA)

赤ちゃんの動脈管肺動脈大動脈をつなぐ血管)は、通常では生後に閉鎖をしますが、自然に閉じる時期を過ぎても閉鎖をしない場合を動脈管開存症といいます。早産児では動脈管開存症が起こりやすいといわれています。動脈管が開存していると、全身にながれるべき血液の一部が心臓へ逆戻りしてしまうために心臓や肺にかかる負担が大きくなります。呼吸が荒くなる、ミルクや母乳の飲みが悪くなる、体重が増えない、汗をたくさんかく、機嫌が悪い時間がながいなどの症状がある場合があります。

治療としては動脈管の収縮を促すための薬物療法や手術が行われます。

脳室内出血

脳の中には脳室というスペースが4か所あります。脳室の中は液体で満たされています。脳室周囲の血管から出血を起こした状態を脳室内出血といいます。

出生体重が1,500g未満の極低出生体重児は生後数時間から数日の早期に脳室内出血が起こりやすいといわれています。けいれんや呼吸停止、大泉門の膨隆などが症状として挙げられます。出血によってたまった血液が脳室を拡大させてしまうような重症例になると麻痺などの後遺症が残る場合があります。

症状に合わせた薬物療法や手術を行う場合があります。

脳室周囲白質軟化症

4か所の脳室のうち側脳室に面して血管分布が乏しい領域があります。その部分が血流の悪化によって障害されることで脳室周囲白質軟化症が現れます。運動機能に影響がでるなどの症状を来す場合があります。出生体重が1,500g未満の極低出生体重児の5%から7%に脳室周囲白質軟化症が現れ、脳性麻痺の赤ちゃんの約1/3が脳室周囲白質軟化症が原因とされています。

未熟児網膜症(ROP)

出生時の網膜の発達が不十分であることが原因で、網膜の発達に異常があることを未熟児網膜症といいます。早産児、特に妊娠32週未満では未熟児網膜症が多いとされます。妊娠週数が短く、出生時の体重が軽いほど起こりやすいといわれています。赤ちゃんは自身の視力を訴えることができないため、早産の場合には定期的に検査を行っていきます。軽症の場合は自然に治癒することを期待して経過をみる場合もありますが、症状が進行して改善しない場合や急速に進行する場合にはレーザー治療や手術を行う場合もあります。