精巣腫瘍(精巣がん)のステージ(病期分類)と治療について
精巣腫瘍のステージは画像検査や血液検査の結果によって決まります。患者さんの状態をステージに当てはめることで、最適な治療法の選択やその後の経過が見通しがしやすくなります。ここでは、精巣腫瘍のステージを詳しく説明するとともに、ステージごとの治療法について説明します。
1. 精巣腫瘍のステージ(病期)について
精巣腫瘍のステージはI(1)からIII(3)の3つに大別されます。胃がんや大腸がん、乳がんなどの他のがんでよく目にするステージIV(4)は精巣腫瘍にはありません。
精巣腫瘍のステージは次の4つを組み合わせて判断されます。
【精巣腫瘍のステージを決定する要素】
- 精巣での腫瘍の広がりや血管・リンパ管への侵入の有無
- リンパ節転移の有無とその広がり
- 遠隔転移(リンパ節以外の部位への転移)の有無
- 腫瘍マーカーの数値
詳しい内容は専門的なので省略しますが、ステージが4つの要素の組み合わせによって決まるということを憶えておくとお医者さんの説明がより分かりやすくなると思いますので、頭の片隅にとどめておいてください。
ステージI
ステージIは最も早期の状態で、転移がなく腫瘍が精巣にとどまった状態を指します。
ステージII
ステージIIは後腹膜(大動脈や大静脈があるスペース)のリンパ節に転移がある状態です。転移したリンパ節の大きさによってさらにIIAとIIBに分けられます。転移したリンパ節の大きさが5cm未満の場合はIIA、5cm以上の場合はIBに分類されます。
ステージIII
ステージIIIは後腹膜のリンパ節以外にも転移している状態です。精巣腫瘍が転移しやすいのは肺や肝臓などです。ステージIIIもステージIIと同様にさらに細かく6つに別れますが、専門的であり、治療の選択には大きくは影響しない内容なので、ここでは割愛します。ステージIIIの細かな分類については「がん情報センターの精巣腫瘍のページ」を参考にしてください。
2. 精巣腫瘍のステージと治療法の関係について
どのステージであっても、精巣腫瘍と診断されたらすみやかに腫瘍のある側の精巣が手術で取り除かれます。
精巣の摘出だけでは治療が完了しないこともあり、その後の治療方針は「腫瘍のタイプ」と「ステージ」によって決められます。精巣腫瘍にはセミノーマというタイプがあり、放射線治療が効きやすいという特徴があります。そのため、セミノーマであるかないかが治療法の選択にも影響します。
セミノーマのステージごとの治療法
セミノーマには放射線治療がよく効きます。手術や抗がん剤治療とともに放射線治療も重要です。
■ステージI(I期)
ステージIは腫瘍が精巣にとどまり転移が見られない状態です。基本的には腫瘍がある精巣を摘除することで治療が完了します。しかし、再発する人が一定数いることも知られているので、放射線治療や抗がん剤治療が再発予防として検討されます。
■ステージIIA(IIA期)
ステージIIAは大動脈周囲のリンパ節に大きさ5cm未満の転移がある状態です。
精巣を取り除くだけでは治療が不十分です。腫瘍が転移したリンパも治療する必要があります。リンパ節に対する治療には放射線治療と抗がん剤治療の選択肢があり、どちらの方法でも根治が可能です。
■ステージIIBおよびIII(IIB期およびIII期)
ステージIIBは大動脈周囲のリンパ節に大きさ5cm以上の転移がある状態で、ステージIIIは主に肺や肝臓などの臓器にも転移した状態です。ステージIIAと比べて転移の広がりが大きいため、精巣の摘除に続いて、全身に効果がある抗がん剤治療が行われます。抗がん剤治療後に腫瘍が残っていると考えらえる人には手術が行われます。取り除いた腫瘍に生きた腫瘍細胞がみられる場合には抗がん剤治療が追加されます。
非セミノーマのステージごとの治療法
セミノーマには放射線治療が効きますが、非セミノーマには放射線治療が効きにくいことが分かっています。非セミノーマの治療は抗がん剤治療と手術が中心になります。
■ステージI(I期)
ステージIは腫瘍が精巣にとどまり転移が見られない状態です。手術で腫瘍のある精巣を摘出します。セミノーマに比べると再発率が低いため、再発予防を目的とした抗がん剤治療や放射線治療が行われることは多くはありません。ただし、ステージIでも腫瘍が血管やリンパ管に入り込んでいる可能性が考えられる場合には、抗がん剤治療が追加で行われます。
■ステージII(II期)およびIII(III期)
ステージIIとIIIは転移がある状態です。ステージIIBは大動周囲のリンパ節に大きさ5cm以上の転移があり、ステージIIIは主に肺や肝臓などの臓器に転移があります。どちらも、抗がん剤治療で腫瘍をできるだけ小さくし、その後手術によって腫瘍が取り除かれることが多いです。
参考文献
・国立がん研究センター内科レジデント/編, 「がん診療レジデントマニュアル」, 医学書院, 2016年
・日本泌尿器科学会/日本病理学会/日本医学放射線学会/日本臨床腫瘍学会, 「精巣腫瘍取扱い規約」, 金原出版, 2018年
・精巣癌診療ガイドライン2024年度版
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