せいそうしゅよう
精巣腫瘍
精巣に生じる腫瘍の総称でそのほとんどが悪性腫瘍である
6人の医師がチェック 87回の改訂 最終更新: 2024.03.13

精巣腫瘍(精巣がん)について知っておくとよいこと

このページでは、患者さんが抱きやすい精巣腫瘍の疑問と、治療について知っておくと良いことについてまとめています。

1. 精巣腫瘍の疑問について

「精巣腫瘍の進行速度」や、「放置した場合の経過」、「左右両方の精巣に腫瘍ができる可能性」について説明します。

精巣腫瘍の進行速度はどれくらいなのか

一人ひとりで程度は異なりますが、精巣腫瘍の進行はかなり早いです。精巣腫瘍は陰嚢腫大(陰嚢が大きくなること)から見つかることが多いのですが、陰嚢の腫れに気づいたときには、すでにリンパ節や肺に転移があることは珍しくはありません。早期に治療を始めるためにも、精巣腫瘍が疑われる症状が現れた人はすみやかに医療機関を受診してください。なお、精巣腫瘍がみつかるきっかけとなる症状については「こちらのページ」を参考にしてください。

精巣腫瘍を放置するとどうなるのか

精巣腫瘍が自然に治ることはありません。放置すると時間の経過とともに精巣が大きくなり、後腹膜のリンパ節や肺などに転移を起こし、さまざまな症状(詳しくは「こちらのページ」を参考)が現れます。陰嚢が大きくなる原因は精巣腫瘍だけではありませんが、何らかの問題が起こっている可能性が高いので、医療機関を受診してください。

両側の精巣に腫瘍ができることがあるのか

片方の精巣に腫瘍ができた人には、反対側の精巣にも腫瘍ができやすいことが知られています。したがって、両側の精巣に腫瘍ができることはありえます。両側に精巣腫瘍ができるパターンには、同時にできる場合(同時性)と時間が経ってからできる場合(異時性)の2つがあります。

2. 精巣腫瘍の治療について知ってほしいこと

精巣腫瘍の治療には難しい問題がついて回ります。ここでは治療を受ける患者さんに知っておいて欲しいことを2つ説明します。

精巣腫瘍の治療は妊娠に影響するのか

精巣は精子を作り出す臓器です。治療では精巣を取り除く手術が行われるので妊娠への影響がきになるところです。ここでは、精巣腫瘍の治療が妊娠に与える影響や対応について説明します。

■精巣を摘除した影響

精巣腫瘍の治療では精巣を摘出する必要があります。精巣は2つあり、1つなくなったとしても残ったもう1つ精巣でも精子を作り出すことができるので、妊娠できなくなることは多くはありません。しかしながら、もともと精子が作られる数が少ない人にとっては片側の精巣を摘除する影響が小さくないとはいいきれません。妊娠への影響が心配な人はお医者さんに相談して、精液検査や、精子の凍結保存(後述)も検討してみてください。

抗がん剤治療の影響

精巣腫瘍に抗がん剤治療を行うと精巣での精子を作る機能が低下して、妊娠しにくくなることがあります。治療の直後は特に妊娠しにくくなっている時期なので、自然妊娠は難しいと考えてください。精巣の機能は少しずつ回復していきますが、数年かかる人も少なくはなく、中には回復しきらない人もいます。

挙児を希望する人は抗がん剤治療の前に精子を凍結保存しておくことをお勧めします。精子を凍結保存しておけば、のちのち人工授精で子どもをもうけられる可能性があります。精子の凍結保存ができる施設の一覧は「日本産科婦人科学会のウェブサイト」に掲載されているので、参考にしてください。

精巣腫瘍の再発率はどれくらいなのか

精巣腫瘍の再発率はセミノーマと非セミノーマで若干の違いがあります。精巣腫瘍の患者さんの経過を調査した研究結果によると、治療から5年間病気の進行なく生存できた人の割合(無増悪生存率)は、セミノーマで67%から82%、非セミノーマで41%から89%でした。

無憎悪生存率に幅があるのは、治療前の病気の進行具合に幅があることによります。無憎悪生存率は「転移の状態」や「腫瘍マーカーの値」を使ったIGCC分類という方法で予測するのが一般的です(詳細な条件については「こちらのページ」を参考にしてください。)

再発の可能性は治療してから時間が経つとだんだん小さくなっていきます。2年経過すると、再発率は大きく低下します。反対の見方をすると、治療後2年は再発に特に気を配らなければいけないということです。定期的な診察や検査は欠かさないのはもちろんのこと、心配な症状が現れた人はかかりつけのお医者さんに相談してください。