ヘルパンギーナの基礎知識
POINT ヘルパンギーナとは
口の中に水疱ができるウイルス感染です。患者は5歳以下の子供に多く、夏に流行します。症状はのどの痛みや口の中の水ぶくれ、発熱などです。重症になると髄膜炎や心筋炎を起こすため、意識障害や息切れが出現することがあります。口の中やのどの痛みが強く出ることがあるため、特に子どもでは食事がとれるかどうかがポイントになります。食事がとれる場合は入院する必要が無いことがほとんどですが、食事が取れない場合は入院治療が必要です。ただ、治療といってもウイルスを駆逐するような特効薬はありません。解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を用いて症状を和らげる治療が行われます。検査はのどや血液、便の中のウイルスをチェックします。しかし、ヘルパンギーナは自然に治る病気ですし、特効薬のない病気ですので、検査は必ずしも必要ありません。ヘルパンギーナを疑った場合は、小児科あるいは感染症内科・一般内科(成人の場合)にかかって下さい。
ヘルパンギーナについて
ウイルス が感染することにより、口の中に水疱 ができる病気飛沫感染 (くしゃみなどを介してウイルスを吸収する)と接触感染 (直接ウイルスが粘膜に触れる、便中のウイルスが口の中から体に入る)- 手や足に水疱ができることがあるが、手や足に水疱ができたら基本的にヘルパンギーナよりも手足口病と考える
- 主な原因
- コクサッキーウイルスが主
エコー ウイルスで起こすこともある- 一度感染したウイルスに対しての
免疫 はできるが、他の種類のウイルスに感染してヘルパンギーナを繰り返すことはある - ウイルスの種類はあまり重要ではない
- 5歳以下の子どもに多い(90%前後)
- 1歳代が最も多い
- 夏に流行する
- まれに起こる重篤な
合併症
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナの検査・診断
- 診断に検査は必須ではなく、症状と流行の状況で診断する
- 重症な場合には、のどや血液、便の中の
ウイルス の検査をすることもある- 検査結果が出た時には、病気が治ってしまっていることがほとんど
- ウイルスの検査が陽性とでても治療は変わらない
- 検査できる施設は少ない(病院の外の施設に検査を依頼する場合がほとんど)
合併症 を起こしている可能性がある場合には、検査を追加することがある
ヘルパンギーナの治療法
- 主な治療
ウイルス に対する根本的な治療法はない- 症状が強い場合に症状を取り除く治療(
対症療法 )をする- 発熱に対しては解熱剤(アセトアミノフェン)
- アセトアミノフェンは鎮痛剤としての効果もあり、口の痛みをとる意味でも重要
- 刺激が少ない食べ物を与える(味が薄く、軟らかいもの)
- 水分はできるだけこまめに与える
- 食事や水分を十分にとれないために脱水になっている場合には、点滴が必要になる
- 保育園や学校を休む必要のある期間は決まっていない
- 一般的には本人の症状が落ち着いていれば集団生活は可能
- その都度医師と相談する必要がある
- 予防、再発予防方法
- 手洗い、うがい
- 特におむつ交換の後には十分に手洗いをする
- タオルの共有は控える
- 食器やテーブル、おもちゃなどの消毒も可能な限り行う
- 完全に予防することは困難
- 有効なワクチンはない
- 症状がなくなってからも数週間は便の中にウイルスが存在するため、おむつの取り扱いには十分に気をつける
合併症 を起こした場合にはそれぞれの合併症に対する治療を行う
ヘルパンギーナの経過と病院探しのポイント
ヘルパンギーナが心配な方
ヘルパンギーナはのど風邪の一種で、のどの部分に口内炎のようなぶつぶつができる感染症です。熱とのどの痛みが特徴で、慣れた人が明るいところで見れば、のどにあるぶつぶつが見えることも多いです。ヘルパンギーナは検査で診断することができないため、そのぶつぶつの有無が診断の上で重要になります。
まず始めに理解しておきたいのは、ヘルパンギーナは通常の風邪と同じく、元々元気な方であれば深刻に捉える必要はあまりない病気であるということです。治療薬と言っても解熱薬のような対症療法薬のみでそれ以外は必要のない(そもそも特効薬がない)病気でもあります。「保育園でヘルパンギーナの人がいて、うつった可能性が高い」「ヘルパンギーナに特徴的な症状が出ている」といったような場合、高熱が出たり、のどの痛みで食事がまったく摂れていないというような場合を除けばとりあえず自宅で様子を見るというのも選択肢の一つです。
したがって、ヘルパンギーナで医療機関を受診する目的というのは、他の病気ではないことを確認すること、そしてヘルパンギーナの合併症が起きていないことを確認することということになります。熱も微熱程度のヘルパンギーナの場合、特に薬が出ないことも多いです。ご自宅で無理せず過ごして、様子をみてもらうことになるでしょう。
ヘルパンギーナではまれに無菌性髄膜炎や心筋炎といった合併症を発症することがあります。ぐったりして意識が悪くなり呼びかけに反応がない、胸が痛いなどの症状が出たら医師の診察を受けるようにして下さい。その他にヘルパンギーナで気をつけることがあるとすれば、周囲へ感染を広げないようにすることです。保育園や学校はお休みして、自宅では頻回の手洗いうがいを行いましょう。
受診先は、お子さんならば小児科のクリニック、成人の方であれば内科か耳鼻科のクリニックが良いでしょう。ヘルパンギーナは小児に多い病気ですが、成人もかかることがあります。小児科の医師は診断に慣れていますが、成人を主に診ている医師では、場合によってはヘルパンギーナの可能性が思い浮かびにくいこともあるかもしれません。お近くにヘルパンギーナの方がいるなど、ご自身の体調不良に心当たりがある場合は、最初に受診の目的や心配事をぜひ医師にお伝えください。