ひけっかくせいこうさんきんしょう
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)
結核菌以外の抗酸菌による感染症。ほとんどが肺への感染
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最終更新: 2024.02.22
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)の基礎知識
POINT 非結核性抗酸菌症(NTM感染症)とは
非結核性抗酸菌症は抗酸菌の中でも結核属以外が感染を起こした病気です。肺や皮膚に感染を起こすことが多いです。主な症状は咳・痰・倦怠感・体重減少・赤い発疹・しこりなどです。 症状と画像検査で非結核性抗酸菌症が疑われ、細菌検査で体内に非結核性抗酸菌が存在することを証明することで診断されます。ただし、非結核性抗酸菌は常在菌(環境中にも一般的にいる菌)でもあるので、細菌検査が2回以上必要となる人も多いです。治療は抗菌薬を複数・長期間飲むことで行います。非結核性抗酸菌症が心配な人や治療したい人は、呼吸器内科や感染症内科を受診して下さい。
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)について
結核菌 以外の抗酸菌による感染症 - MAC(Mycobacterium Avium Complex)菌(マイコバクテリウム アビウム・イントラセルラーレ)の感染が8割以上を占める
- MACをはじめとした非結核性抗酸菌の多くは身近な自然界に存在しているため、完全に避けることは不可能である
- 農作業やガーデニングなど、土壌
暴露 が多い人はやや感染率が高いと言われている - どのような年代でもかかることがあるが、中年以降の女性に特に多い
- 呼吸器(肺)への感染が多く、皮膚に症状を起こすこともある
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)の症状
- 感染初期は無症状のことが多い
- 経年的に徐々に悪化していき、症状が出る頃には長い時間が経過していることが多い
- 肺に感染した場合の症状
- 咳
- 痰(
血痰 ) - 全身のだるさ
- 体重の減少 など
- まれに、皮膚にも赤い
発疹 やしこり(肉芽腫 )が出ることがある
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)の検査・診断
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)の治療法
- 確実に有効な薬はない
- 治療は、菌の種類によって選択肢が変わってくる
- 一番多いMACでは3種類の
抗菌薬 (クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール)を同時に飲むことになる
- 一番多いMACでは3種類の
- 結核よりも治療の効果が表れにくい人が多い
- 治療は、菌の種類によって選択肢が変わってくる
- 治療が長引いたり、完全に治療しないまま症状を抑えて治療とすることも多い
- 薬による治療は1年から2年以上行うことが多く、状況によっては更に長く内服していくこともある
- また、抗菌薬治療で完治させることは難しい場合も多く、治療終了後も再び症状が起こるリスクがある
- 抗菌薬で菌の勢いを抑制しきれなかったり、
喀血 など強い症状が抑えきれない場合には、手術を行うこともある 血痰 がひどくなり、喀血することが多い場合は、カテーテルを用いた血管内治療 (気管支 動脈塞栓 術)も選択肢となる
非結核性抗酸菌症(NTM感染症)に関連する治療薬
アミノグリコシド系抗菌薬
- 細菌のタンパク質合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
- 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
- タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
- 本剤は細菌のリボソームにおけるタンパク質合成を阻害して抗菌作用をあらわす
- 薬剤によって抗菌作用の範囲に違いがあり、淋菌(淋菌感染症の原因菌)やMRSA(MRSA感染症の原因菌)などに抗菌作用をあらわす薬剤もある
マクロライド系抗菌薬
- 細菌のタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
- 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
- タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
- 本剤は細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑える
- マイコプラズマやクラミジアなどの菌に対しても高い抗菌作用をあらわす
- 服用する際、比較的苦味を強く感じる場合がある