はんげつばんそんしょう
半月板損傷
半月板(膝関節内にありクッションの役割がある)が損傷した状態
4人の医師がチェック 110回の改訂 最終更新: 2022.04.26

半月板損傷とはどんなものなのか?

半月板とは膝関節にある三日月状の構造物のことです。膝関節を安定させて、歩行時はクッションの役割を果たしています。半月板損傷は半月板が傷ついた状態で、膝に過度な力が加わったときに起こります。このページでは半月板損傷の概要として、症状や原因、検査、治療などを網羅的に説明します。

1. 半月板損傷(英語名:Meniscus damage)とは?

半月板の構造

半月板は膝関節に存在する軟骨組織です。上の図で示したように、膝の内側と外側に分かれて2枚あります。軟骨とはプラスチック製の消しゴムのような硬さと弾力がある物質で、半月板には主に膝の安定化と、歩いたり走ったりするときのクッションの役割があります。 膝を捻ったり着地が上手くいかなかったときなどに半月板損傷は起こります。若い人ではサッカーやバスケットボールなど急な切り返し動作を頻繁にするスポーツ時に経験することが多く、高齢者ではちょっとした動作で起こることがあります。

2. 半月板損傷の症状

半月板の傷つき方や程度によって症状は変わります。主なものとしては、膝の痛みや腫れ、関節の動かしづらさです。それ以外では、特徴的な症状として「ロッキング」というものが知られています。ロッキングとは膝を動かそうとすると、引っかかったようになり動かなくなる(ロックされる)症状のことです。この現象の原因は半月板がずれたりちぎれたりして膝関節の間にはまり込んでしまうことです。ロッキングは強い痛みを伴いますし、速やかな処置が必要なので、すぐに整形外科を受診してください。また、慢性化した半月板損傷では関節に水が溜まって腫れたり、変形性膝関節症の原因となることもあります。 症状についてより詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。

3. 半月板損傷の原因

前述のように、半月板損傷は膝に強い力が加わった際に起こります。それ以外の要因として半月板損傷を起こしやすい人の特徴がいくつか分かっています。

【半月板損傷を起こしやすい人】

円板状半月板とは半月板が三日月形ではなく、円盤状に近い形をしたものです。円盤状半月かどうかは検査をしないとはっきりとは分からないので予防は難しいことが多いのですが、詳しく調べたうえで説明を受けることが再損傷の予防に役立ちます。 変形性膝関節症や円盤状半月などが分かっている人は専門家(医師・理学療法士・作業療法士など)のアドバイスをよく聞いて予防に努めてください。また、「こちらのページ」のセルフケアも参考にしてください。

4. 半月板損傷の検査

半月板損傷が疑われる人には診察や検査が行われます。治療法の選択や、全治までにかかる期間の予測といったことが診察や検査からなされます。

【半月板損傷の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 画像検査
    • X線検査レントゲン検査)
    • MRI検査

どれも重要なのですが、あえていうとMRI検査の結果が特に重要視されます。半月板の状態を画像化することができるので、治療法を決める際の判断材料になることも少なくありません。それぞれの診察や検査の内容は「こちらのページ」で詳しく説明しているので参考にしてください。

5. 半月板損傷の治療

スポーツ選手が半月板損傷をした場合、手術をすることが多いので、半月板損傷の治療と聞くと「手術」が頭に浮かぶ人が多いかもしれません。しかし、全員に手術が必要なわけではありません。

【半月板損傷の治療】

  • 手術
    • 半月板切除術
    • 半月板縫合
  • 保存的治療
  • リハビリテーション

手術が必要なのは「競技スポーツをしている」、「半月板の損傷程度が重い」、「保存的治療(手術をしない治療)で症状が良くならない」、「ロッキング症状がある」などの条件にあてはまる人になります。お医者さんは画像検査などから半月板の損傷の程度については把握できますが、症状やスポーツをしているかどうかなどは話してもらわないと分かりません。受診前にメモなどを使ってまとめておくと、詳しく伝えられるので、活用してみてください。

保存的治療もよく選ばれる治療法です。運動療法や関節内注射などによって、半月板の機能を補って症状を緩和します。

手術と保存的治療のどちらを選んでも必要になるのが、リハビリテーションです。競技復帰や以前の日常生活に戻るうえで欠かすことができません。

それぞれの治療法の詳しい内容については「こちらのページ」を参考にしてください。

6. 半月板損傷を治療した後に気をつけること

治療が上手くいったとしても、膝が怪我前の状態に完全に戻りきることは多くありません。そのため、膝を大事にいたわりながら生活やスポーツをしていく必要があります。具体的には、次のようなことを必ず行うようにしてください。

【半月板損傷後に気をつけるべきこと】

  • 適正体重を保つ
  • 運動前後の十分なケア:ストレッチ・サポーター・テーピング
  • 筋力トレーニング

膝への負担を軽くするために体重は常に適正体重を保つことが大切です。また、再発をさけるために運動前後でストレッチを行い、必要に応じてサポーターやテーピングを活用してください。低下した半月板の機能を補うためには筋力(主に太腿)も保つ必要があります。 ここで挙げた内容は手間がかかるものばかりであり、日々積み重ねなければ意味がないものでもあります。体重キープは一日でなんとかなるものではありませんし、短期で減量してもリバウンドしてしまえば意味があるとはいえません。また、運動前の準備を怠れば怪我のリスクは高まりますし、筋肉の維持には定期的なトレーニングが必要です。 毎日地道な努力をかかさずやり抜くのは大変なことです。しかし、全ては膝のためだと思い、自分の身体を慈しみながら取り組んでみてください。怪我することなく無事に過ごす日々が続けば、ふとしたとき自らの努力に感謝すると思います。

参考文献

Dennis A Cardone, Bret C Jacobs, Meniscal injury of the knee. UpToDate.最終更新日2020.7.14