肝性脳症で知っておきたいこと:予防法・注意が必要な場面
肝性脳症は肝臓の機能が低下することが原因で、精神症状が起きることを指します。血液中のアンモニアの濃度が高くなることが
1. 食事の注意点
肝性脳症と食事には関わりがあります。このため、食事に注意すると肝性脳症を起こしにくくなります。
ここではタンパク質と水分の摂取という2点について説明します。
タンパク質を摂りすぎない
肝性脳症は血液中のアンモニア濃度が高くなることで起こります。食事に含まれるタンパク質が腸内
アンモニアはタンパク質からできるので、食事で摂るタンパク質の量を控えると、アンモニアが発生する量も少なくなり肝性脳症の予防につながります。とはいえタンパク質は生きていく上で欠かすことが出来ないものなので、全く摂らないというわけにはいきません。タンパク質は肝性脳症を起こさない範囲で、必要な量をとるのが理想的です。しかし、自分に合ったタンパク質の適正量を知ることは簡単ではありません。
自分にとって適切なタンパク質の摂取量を知るには、専門的な知識を持った管理栄養士に相談してアドバイスを受けるとよいです。管理栄養士に栄養面について相談したい場合には主治医などの医療者に相談して依頼してもらうとスムーズです。
食物繊維の摂取
便秘になると腸内細菌がタンパク質を分解しやすい環境が作られて、体内のアンモニアの量が増えるため、便秘は避けるほうが望ましいです。便秘の解消には食物繊維の摂取が有効です。食物繊維には便通を良くする効果が期待できるので、積極的に摂取することが望まれます。食物繊維は野菜や果物に多く含まれているので、いつもより多めに摂るなどの工夫をしてみて下さい。
適度な水分の摂取を心がける
身体の中の水分が不足することを脱水と言います。脱水は肝性脳症を起こしやすくする原因になります。脱水になると、血液から水分が失われて濃くなるので、含まれるアンモニアの濃度も高くなります。アンモニアの濃度が高くなると肝性脳症が発症しやすくなります。
脱水を避けるには水分を摂取することが有効ですが、肝性脳症の人の場合は水分の摂り方に注意が必要です。なぜなら、肝臓の機能が低下していると、肝性脳症とともに
また、水分が足りなくなると便秘になりやすくなります。上の段落でも述べましたが、便秘は肝性脳症を引き起こしますので、この観点からも適量の水分を摂取する必要があります。
肝臓の機能が落ちている人が摂取するべき水分量は個人によって異なります。よいバランスを見つける方法としては、水分の摂取量を記録しておくと、客観的に摂取した水分量を振り返ることができるのでよいかもしれません。
2. こんな時は肝性脳症に要注意
肝臓の機能が低下している人にとって、肝性脳症を起こしやすい状況はいくつか知られています。肝性脳症の予防や速やかな対応のために起こしやすい状況のポイントを抑えておくようにして下さい。
肝性脳症を起こしやすいのは以下のような状況です。
- 食欲がない
- 腹水
穿刺 の後 - 黒い便が出ている
それぞれについて以下で説明します。
食欲がない
食欲がなくなると食べ物だけではなく水分の摂取もできなくなることがあります。身体の中の水分が不足して脱水になると、肝性脳症に関係があるアンモニアの濃度が高まってしまいます。食欲がなく水分も摂れない場合は、点滴などの治療を検討しなければなりません。医療機関を受診するようにして下さい。
腹腔穿刺の後:お腹の水を抜く治療の後
肝性脳症と同時に腹水(お腹の中の水が増えること)が現れることがあります。腹水が多くなるとお腹が張ることによって苦しさなどを感じます。腹水の治療の1つに、お腹に針を直接刺して水を抜く治療(腹腔穿刺)があります。腹腔穿刺の後には肝性脳症が起こりやすいことが知られているので注意が必要です。腹腔穿刺は外来で行うこともあり、治療後には注意が必要です。治療後にいつもと様子が違うと感じた場合は、肝性脳症が起きている可能性があるので再度、医療機関を受診して下さい。
黒い便が出ている
黒い便が出ている人は、食道や胃、十二指腸から出血していること(上部
肝臓の機能が低下している人に黒い便が出ると、肝性脳症を起こす可能性が高くなるので注意が必要です。また、肝性脳症にならなくても上部消化管出血は治療が必要な病気です。放置しておくと貧血を起こしてめまいや