かんせいのうしょう
肝性脳症
肝臓の機能が低下したことにより体内にアンモニアがたまり、意識障害などの神経症状が出現する病態
6人の医師がチェック 112回の改訂 最終更新: 2026.02.08

肝性脳症とはどんな病気か?症状・原因・検査・治療など

肝臓の機能が低下することが原因で起こる精神症状を肝性脳症と言います。ここでは肝性脳症の症状や原因、検査、治療などについて説明します。

1. 肝臓の機能が低下すると現れる肝性脳症とはどんな病気か?

肝臓の機能が低下することによって意識障害や性格の変化などの精神症状が現れることを肝性脳症といいます。アンモニアという物質の血液中の濃度が高まることが関係していると考えられています。

2. 肝性脳症の症状

肝性脳症ではさまざまな精神症状が現れますが、その程度によって症状が異なります。現れている症状を4段階に分けたものが、昏睡度分類であり、肝性脳症の程度を客観的に評価するために用いられます。

昏睡度分類別の症状

昏睡度は4段階で分類され、以下のようになります。

昏睡度 症状
I
  • 睡眠と覚醒のリズムが逆転する
  • 多幸気分、ときに抑うつ状態
  • だらしなく、気にとめない態度(周りに対して興味がない態度)
II
  • 指南力(時・場所)障害、物を取り違える異常行動 
  • ときに傾眠状態
  • 無礼な言動があるが医師の指示に従う態度をみせる
III
  • しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる
  • ほとんど眠っている
  • 刺激で眼を開くことができるが、指示に従わないまたは従えない
IV
  • 昏睡
  • 初期は痛み刺激に反応するが進行すると全く反応しない

症状を客観的に4段階に評価した昏睡度分類では、数値が小さいほど軽症であることを意味します。昏睡度を把握することで、治療効果やその後の経過を予測することができます。昏睡度は意識の状態や精神症状について注目したものですが、肝性脳症ではこの他にも特有の口臭(肝性口臭)や羽ばたき振戦といった特徴的な症状も現れます。

肝性脳症の症状について詳しく知りたい人は「肝性脳症の症状」も参考にしてください。

3. 肝性脳症の原因

肝性脳症の発症にはアンモニアという物質が強く関与していることが分かっています。ここでは肝性脳症が起こるメカニズムや肝性脳症を起こしやすくする原因について説明します。

肝性脳症が起こるメカニズム

肝性脳症の発症には血液に含まれるアンモニアの濃度の上昇が関与していることが分かっています。アンモニアは腸内細菌によってタンパク質が分解された結果、発生します。アンモニアが多くなると体に悪影響を及ぼすので、身体のバランスを保つために余計なアンモニアは肝臓に運ばれて無毒化されます。しかし、肝臓の機能が低下すると、アンモニアを無毒化するスピードも遅くなるので、血液中のアンモニアが過剰に蓄積し、肝性脳症が起こりやすくなります。

肝性脳症が起こる主な原因は肝機能の低下ですが、それ以外にも肝性脳症が起こりやすくなる原因があります。

次に肝性脳症が起こりやすくなる原因について解説します。

肝性脳症を起こしやすくする原因

血液中のアンモニア濃度が高くなると肝性脳症は起こります。食事や病気などの中にはアンモニアの濃度を高めてしまうものがあります。

【肝性脳症を起こしやすくする原因】

  • 高タンパク食
  • 便秘
  • 脱水
  • 食道や胃、十二指腸からの出血:上部消化管出血

肝臓の機能が低下している状況で、上に示した原因が重なると、血液中のアンモニアの濃度が高くなり肝性脳症が起こります。

それぞれの原因がどのようにして血液中のアンモニアの濃度を高くするかは「肝性脳症の原因」で詳しく説明しているので参考にしてください。

4. 肝性脳症の検査

肝性脳症が疑われる場合には、いろいろな検査が行われます。検査では肝性脳症の程度や肝性脳症以外の原因が隠れていないかを調べます。

主な検査は次です。

【肝性脳症が疑われる人に行われる検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • 画像検査
    • 頭部CT検査
    • 頭部MRI検査

肝性脳症の検査について詳しく知りたい人は「肝性脳症の検査」も参考にしてください。

5. 肝性脳症の治療

血液中のアンモニア濃度を下げると肝性脳症の症状は改善します。薬物治療や食事療法を用います。

  • 薬物治療
    • 分岐鎖アミノ酸
    • 抗菌薬
    • 高アンモニア血症治療薬
    • その他の治療薬
  • 食事療法

薬物治療はいくつか種類があります。

■分岐鎖アミノ酸

分岐鎖アミノ酸は筋肉でアンモニアを代謝するときに必要な物質であり、人間の身体では作り出すことができません。そのため筋肉で分岐鎖アミノ酸の消費が増えると薬によって補い、アンモニアの代謝を行いやすくします。

■抗菌薬
アンモニアは主に腸内細菌がタンパク質を分解することによって作られます。抗菌薬で腸内細菌を少なくすると腸で作られるアンモニアの量を減らすことができます。

■高アンモニア血症治療薬
高アンモニア血症治療薬は腸からのアンモニアの吸収を妨げる効果と下剤としての効果があります。便秘はアンモニアができやすい環境を作るので、解消するとアンモニアの量も減少します。

■その他の治療薬
アンモニアの増加には亜鉛やカルニチンという物資の不足も関係していると考えられています。亜鉛やカルニチンが不足している場合には不足分を薬剤で補充します。

食事療法ではタンパク質の摂取量を減らし、アンモニアができる量を抑えます。
肝性脳症の治療については「肝性脳症の治療」でも詳しく説明しているので参考にしてください。

6. 肝性脳症が起こりやすい状況

肝臓の機能が低下するとアンモニアの処理が不十分になるので、血液中のアンモニア濃度が高くなり肝性脳症が起こりますが、身体の中でアンモニアが発生する量が増えると、肝性脳症が起こりやすくなっててしまいます。ここでは体の中でアンモニアが増えやすい状況について説明します。

タンパク質の摂りすぎ

腸内細菌によってタンパク質が分解されるとアンモニアが作られます。このため、食事でタンパク質を摂りすぎると、アンモニアも増えやすくなり肝性脳症が起こる危険性が高まります。

食欲がない

食欲がなくなると水分の摂取も不十分になり、脱水になることもあります。脱水の状況では、アンモニアの濃度が高くなり肝性脳症が起こやすくなります。

腹腔穿刺の後:お腹の水を抜く治療の後

肝臓の機能が低下すると、腹水(お腹の中のスペースに溜まる水が増えること)が見られることがあります。腹水が増えるとお腹の張りなどの症状が現れるので、症状を和らげるために、お腹に針を刺して溜まった水を身体の外に出す治療(腹腔穿刺)を行います。

腹水穿刺を行うと短時間に多くの水分や電解質などが身体から失われて、脱水に近い状況が発生し、アンモニア濃度が高くなりやすくなってしまいます。そのため、腹腔穿刺を行う際には、肝性脳症の危険性を高めないように注意深く穿刺で抜き出す水の量を決めます。

黒い便が出ている

食道や胃、十二指腸から出血(上部消化管出血)すると黒い便が出ることがあります。血液はアンモニアの原料になる窒素を多く含んでいるので、腸に流れ込むと腸内細菌によってアンモニアが作られて肝性脳症が起こりやすくなります。黒便が出ている際には、緊急での止血が必要な可能性がありますし、肝性脳症のリスクも高まっていると考えられるので、すみやかに主治医に相談してください。

肝性脳症が起こりやすい状況については「肝性脳症で知っておきたいこと」でも詳しく説明しているので参考にして下さい。