ちょうじゅうせき
腸重積
腸管の肛門側に口側の腸管が入り込んで内腔を閉塞させ、もとに戻らなくなった状態
13人の医師がチェック 97回の改訂 最終更新: 2019.09.25

腸重積の原因について

腸重積になる人の8割は2歳以下の子どもです。子どもの腸重積では原因がわからないことが多く、他の病気がきっかけで発症することは少ないです。一方、大人で腸重積を発症した場合には、原因の多くが大腸がんなどの悪性腫瘍であるといわれています。ここでは、腸重積の原因について詳しく説明します。

1. 子どもの腸重積は原因がはっきりしないことが多い

子どもの腸重積は、ほとんどが小腸と大腸のつなぎ目で起こります。もともと子どもでは、この部位が腸重積になりやすい構造をしているといってよいかもしれません。しかし、子どもが腸重積になるきっかけは、はっきりしないことが多いです。アデノウイルスなどの病原体への感染が腸重積の発症と関係していると考えられてはいますが、腸重積になった患者さんが何らかの感染症にかかっていたからと言って、その感染症が腸重積のきっかけになったと言い切ることは難しいです。

2. 子どもの腸重積の原因となる病気

まれなことですが、腸に本来存在しないはずの「変形」や「できもの」があると腸重積になることがあります。腸の動きによって「変形」や「できもの」が肛門側に押し出される力を受けると、周りの腸が腸内に引きずり込まれて腸重積になります。このような病気の代表例にメッケル憩室や若年性ポリープがあります。

メッケル憩室

メッケル憩室とは、小腸の壁の一部が外側へ袋状に飛び出たように変形したものです。メッケル憩室が肛門側に押し出されると、腸が腸の中に引きずり込まれて腸重積になります。メッケル憩室は小腸にあるので、メッケル憩室によっておこる腸重積では小腸が小腸にはまり込んでいることが多いです。

若年性ポリープ

若年性ポリープは腸にできる「できもの」で、がんにはならない良性のものです。名称に「若年性」とありますが、大人でも見つかることはあります。

子どもにできる腸のポリープのほとんどは若年性ポリープです。一度にたくさんできることはなく、ほとんどの人で1個だけみつかります。若年性ポリープは大抵、肛門に近い直腸やS状結腸にできるため、大腸に大腸がはまり込む腸重積であるときには、若年性ポリープが原因である可能性が高いです。治療法には、肛門から大腸カメラを挿入し、ポリープを切除する方法などがあります。

3. 腸重積とロタウイルスのワクチン接種の関連

ロタウイルスに感染すると胃腸炎を引き起こし白色の下痢や嘔吐などの症状が出ます。5歳になるまでにほとんどの人が感染をすると言われていますが、日本ではワクチン接種による予防が可能で、2020年10月1日から定期接種になりました。

一方で、ロタウイルスのワクチン接種によって、ごくわずかではありますが腸重積になる確率が上がるという報告があります。ワクチンの初回推奨接種時期は14週6日までであり、この期間に接種すれば腸重積は起こりにくいことがわかっています。

ワクチンを接種することでロタウイルス感染症の重症化リスクが減るため、WHOはロタウイルスワクチンの接種を推奨しています。

参考文献

・Ntoulia A et a. Failed Intussusception Reduction in Children: Correlation Between Radiology. AJR Am J Roentgenol.2016 Aug;207:424-433.