しぼうかん
脂肪肝
肝臓に脂肪が多く蓄積されている状態。放置すると肝炎・肝硬変・肝細胞がんなどの原因となる
7人の医師がチェック 156回の改訂 最終更新: 2026.02.24

脂肪肝の検査について:超音波検査(エコー検査)や肝生検の内容についての説明

脂肪肝はその原因によって治療法が変わってきます。脂肪肝の原因については問診などを中心にして調べられます。また、脂肪肝は進行して肝炎や肝硬変になることがあるので、脂肪肝の進行具合を確認する検査も行われます。

1. 問診:状況の確認

問診は身体の状況や患者さんの背景を確認するために大切です。脂肪肝はほとんどの場合で症状がありません。ですので、健診などで偶然に脂肪肝が疑われて医療機関を受診することが多いです。

以下は健診などで脂肪肝が疑われたときに問診で使われる質問の例です。

  • どんな症状を自覚するか
  • どの程度飲酒するのか
  • 普段運動はするのか
  • どのような食生活をしているか
    • 好んで食べるものは何か
    • 食事の量はどれくらいか
    • 外食はどれくらいの頻度でするか
    • 食事の時間は不規則か
  • 現在治療中の病気はあるか
  • 今までにかかった病気はあるか
    • 入院をしたことはあるか
    • 定期的に受診している病気はあるか
    • 輸血をしたことはあるか
    • 手術をしたことはあるか
  • 定期的に飲んでいる薬はあるか
  • 血のつながった家族はどんな病気にかかったことがあるか

脂肪肝に似た病気がいくつかあります。そのため、質問の結果を元にして、どんな病気が原因となっているのかが確認されます。

次に特に重要な問診内容について詳しく説明します。

どの程度飲酒するのか

飲酒は脂肪肝の原因の1つです。問診では「習慣的にアルコールをどれくらい飲んでいるか」または「過去にどのくらい飲んでいたか」を伝えてください。医師への伝え方は、できるだけ具体的な方がよいです。例えば「1日あたり缶ビール2本を週に5日ほど30年間飲酒している」などのような言い方をすると伝わりやすいです。

どのような食生活をしているか

脂肪肝は栄養摂取のバランスが乱れることにより起こるので、食生活に注目した問診が行われます。好きな食事やその量、外食の頻度、食べる時間について具体的に伝えるとよいです。例えば、「油ものを好み、食べ過ぎることが多々あり、外食はだいたい週に3回、22時以降に晩御飯を摂ることが週に2回はある」などのような言い方をすると伝わりやすいです。

現在治療中の病気はあるか

糖尿病脂質異常症などは脂肪肝に合併しやすいことが知られています。これらの病気の有無は脂肪肝について考える上で重要です。また、脂肪肝と関連が深い病気に限らず、治療中の病気がある場合は脂肪肝の治療方法の選択に関わってきます。「いつから治療を開始して、どのような治療をしているか」を具体的に伝えることが大切です。治療の内容や期間を伝えることで、お医者さんがより患者さんの背景をつかみやすくなり、その後の検査や治療をスムーズに運ぶことができます。

2. 身体診察

問診に続いて行われる身体診察では、身体の状態について客観的な評価が行われます。

脂肪肝が疑われる場合には主に以下のような診察を行います。

  • バイタルサインの確認
  • 身長・体重・腹囲の測定
  • 視診
  • 触診

それぞれの診察方法について説明します。

バイタルサインの確認

バイタルサインは英語の「vital signs」のことを指し、直訳すると生命徴候という意味です。バイタルサインは緊急の治療が必要な病気などで重視されますが、どんな病気が想定されていても重要な情報を得られます。バイタルサインは以下の5つを指すことが多いです。

  • 脈拍数
  • 呼吸数
  • 体温
  • 血圧
  • 意識状態

脂肪肝が疑われるときにはバイタルサインが異常値を示すことは多くはないですが、バイタルサインを確認することで、隠れている病気を見つけるきっかけなどになります。例えば、血圧が高ければ高血圧症について踏み込んで調べることもできますし、意識状態が悪ければ肝硬変に進行して肝性脳症に至っている可能性が考えられます。

身長・体重の測定

身長・体重を測定すると肥満の有無を客観的に評価できます。肥満は脂肪肝の原因の1つで、肥満の指標としてBMI(Body Mass Index)というものを用います。BMIは以下の計算方法でもとめられます。

  • 体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]

BMIの正常値は18.5から24.9で、日本人の場合、25を超えると肥満と診断されます。

身長・体重の測定に加えて腹囲も合わせて測定されることが多いです。腹囲は内臓脂肪型の肥満の評価に向いていると考えられています。腹囲の正常値はBMIと違い男女で別の数値が設定されており、男性は85cmを超えると、女性は90cmを超えると肥満と診断されます。

視診

視診は身体の見た目をくまなく観察する診察です。脂肪肝は身体に異常が現れることはほとんどありません。ただ、脂肪肝が進んで肝硬変を起こすと身体に変化が現れて視診で異常を指摘されることがあります。肝硬変などで現れる身体の変化については「肝硬変の症状」で詳しく説明しているので参考にして下さい。

触診

触診は身体の一部を押したり念入りに触ったりする診察です。脂肪肝では視診と同じく触診で、異常を指摘されることはほとんどありません。脂肪肝が疑われる場合の触診の目的は、肝炎・肝硬変への進行や他の病気の存在の有無を調べることです。

3. 血液検査

脂肪肝が疑われる時に行う血液検査の目的は、肝臓に起きている異常の程度や合併しやすい病気の有無を調べることです。

脂肪肝では以下の血液検査項目が注目されます。

  • 肝臓のダメージを調べる検査項目
    • AST
    • ALT
  • 糖尿病の有無を調べる検査項目
    • 血糖
    • HbA1c
  • 脂質異常症の有無を調べる検査項目
    • LDLコレステロール
    • 中性脂肪
    • HDLコレステロール

以下ではそれぞれの検査項目について解説します。

肝臓のダメージを調べる検査項目:肝臓逸脱酵素

肝臓を構成する肝細胞が壊れることで血液中に増える物質があり、これを肝逸脱酵素といいます。肝逸脱酵素の中でも重要なASTとALTの説明をします。

■AST(GOT)

ASTは肝細胞に多く含まれる物質で、肝細胞が壊れると血液中に放出されます。ASTは肝臓

に異常が起きていることを推測するためには有用なのですが、ASTは肝臓以外の心臓や筋肉、腎臓などの臓器にも存在しています。このため、AST値が上昇した場合でも肝臓以外に問題がある場合があります。この後に説明するALTという物質と合わせて検査結果が評価されます。

■ALT(GPT)

ALTはASTと同様に肝臓に多くある物質で、肝細胞が壊れると血液中に放出されます。このため、肝臓に病気があると血液検査でのALT値が上昇することが多いです。ASTと異なりALTはほとんどが肝臓にある物質です。したがって、肝臓に障害が疑われる場合は、血液検査でALTが測定されます。

糖尿病の有無を調べる検査項目:血糖値・HbA1c

糖尿病の診断には血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査項目が用いられます。

血糖値は血液中のブドウ糖の濃度を調べたものです。血糖値は食事の影響を受けやすいので、検査の何時間前に食事をしたかを医療者に告げるようにして下さい。また、必要に応じて食事していない状態で調べることもあります。

HbA1cは血糖値とくらべると馴染みが少ない検査だと思います。この検査は1−2ヶ月間前の血糖値の平均を反映するものです。血糖値は波があるので健康な人でも高くなることがありますが、HbA1cを見れば血糖値が全体的に高いかどうかがわかります。

血糖値が高くなりすぎる病気が糖尿病です。その診断はやや複雑なのですが、ざっくりいうと血糖値とHbA1cの値がともに定められている基準値を上回っていると糖尿病と診断されます。糖尿病と脂肪肝は合併しやすいため、脂肪肝が疑われた人は糖尿病の検査も合わせて行われることがあります。糖尿病の診断基準についてさらに詳しい情報を知りたい人は「糖尿病の詳細情報ページ」を参考にして下さい。

脂質異常症の有無を調べる検査項目:LDLコレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール

脂質異常症はかつて高脂血症と呼ばれていた病気で、生活習慣病の1つです。脂質異常症は身体の中の脂質のバランスが乱れる状態のことで、動脈硬化などを引き起こします。血液検査で次の状態になれば脂質異常症と診断されます。

  • LDLコレステロールが高値:140mg/dL以上
  • 中性脂肪が高値:150mg/dL以上
  • HDLコレステロールが低値:40mg/dL未満

脂質異常症があると、その後脂肪肝になる可能性やすでに脂肪肝になっている可能性が高いです。また、脂質異常症を治療することが脂肪肝を治すことにもつながります。食事療法や運動療法、薬物療法などが脂質異常症の治療として有効です。

脂質異常症についてさらに詳しい情報を知りたい人は「脂質異常症の基礎情報ページ」を参考にして下さい。

4. 画像検査

脂肪肝が疑われる場合には、超音波検査CT検査、MRI検査などを用いて肝臓の状態を調べます。それぞれの検査の特徴などについて説明します。

腹部エコー検査(腹部超音波検査)

エコー検査は超音波を利用して体内を調べる検査です。エコーを体外から送り込み、その反射の程度を把握することで体内の様子を画像にすることができます。超音波は空気やかたいものがある部分をうまく画像にできないという弱点があるため、骨や肺などの臓器はうまく観察することができません。しかし、お腹の場合は骨や空気が少ないため、身体の中の深い部分まで観察することができます。

エコー検査の機材にはプローブという超音波が出る部位があり、これを優しくあてて観察します。また、より正確に観察するために、観察する場所にゼリーを塗ります。

脂肪肝が起きていると、エコー検査では肝臓が白く光って映し出されます。隣にある臓器の腎臓よりも脂肪の沈着した肝臓は白く見えるので、両方の臓器を見比べることで脂肪肝は診断されます。

腹部CT検査

CT検査は放射線を利用して身体の断面を画像にする検査です。超音波検査と同様に肝臓の形や大きさを調べることができますが、CT検査のほうがより多くの情報を得られます。

CT検査を行うとCT値というX線を吸収した値がわかります。臓器の種類や臓器の状態でCT値は異なってくるため、状態を客観的に判定することができます。

CT値は-1000は空気で、0は水と決まっています。脂肪は水より密度が低いので0以下の数値になり、反対に骨などの密度の高いものになると数値は高くなります。

通常肝臓は水より密度が高いのでCT値は0より大きい数値を示します。しかし、脂肪肝になり肝臓での脂肪の成分が多くなると、それを反映してCT値も低くなります。このCT値の変化に注目して脂肪肝の診断が行われることもあります。

腹部MRI検査

MRI検査は磁気を利用して、身体の断面を画像にする検査です。CT検査とは違って放射線を使わないので被曝はしません。

MRI検査ではCT検査と同じように肝臓の形や大きさを観察することができます。MRI検査は超音波検査やCT検査とくらべて肝臓の脂肪のつき具合を判定しやすいとされています。このため、超音波検査やCT検査を行っても脂肪肝かどうかのの判断が難しいときにMRI検査が行われます。

5. 肝生検:肝臓に針を刺してその一部を取り出す検査

生検は病気が疑われる臓器の一部を取り出す検査のことです。脂肪肝が疑われる時に肝生検(肝臓の生検)が行われることがあります。一般的な肝生検は、身体の外から肝臓に直接針を刺して肝臓の一部を取り出します。生検で取り出した肝臓の一部を顕微鏡で観察すること(病理検査)で脂肪肝の状態がわかります。

肝生検は脂肪肝が疑われる人に必ず行う検査ではありません。脂肪肝が一歩進んで炎症を起こしていることが疑われる場合や、他の肝臓の病気と区別が難しい場合に行われます。生検は身体に負担の係る検査ですので、症状や他の検査の状況から脂肪肝と診断できる場合には生検を行わずに治療が始まることが多いです。

肝生検についてさらに詳しく知りたい人は「肝硬変の検査」を参考にして下さい。