いんのうすいしゅ
陰のう水腫
陰のうに水がたまる病気で先天的なものと他の病気が原因のことがある
8人の医師がチェック 100回の改訂 最終更新: 2022.02.09

陰のう水腫とはどんな病気なのか?

陰のうは精巣が収まっている袋状の構造物です。この袋の中に液体が溜まる病気が陰のう水腫です。陰のう水腫が命に影響を及ぼすことはほとんどありませんが、膨らみが大きくなると、違和感や歩きにくさの原因になり日常生活に支障が現れます。このページでは陰のう水腫の概要として、症状や検査、治療などについて網羅的に説明していきます。

1. 陰のう水腫とはどんな病気なのか?

陰のうの構造

陰のうとは精巣(睾丸:こうがん)を収める袋状の構造物を指します。陰のう水腫は陰のうの中に液体が溜まる病気です。陰のう水腫になると、陰のうが腫れて大きくなります。「がん」のような命を脅かす病気ではありませんが治療が必要になる場合があります。

2. 陰のう水腫の症状について

陰のう水腫の主な症状は「陰のうの腫大」です。腫大とは身体の臓器や器官が腫れて大きくなることを指します。痛みはないことがほとんどで、陰のうがプニプニとして水風船に近い感触となります。陰のうが大きくなることで、違和感や歩きにくさが現れます。

3. 陰のう水腫の原因について

陰のう水腫の原因は先天性(生まれつき)と後天性(生まれつきではない)の2つに大別されます。

■先天性:生まれつきのタイプ

精巣は数枚の膜に包まれて、陰のうの中に収まっています。精巣ができる過程で精巣を包む膜がうまく形成されないと、膜と膜の間にスペースが空き、陰のうとお腹の中がつながった状態になったりすることがあります。この状態になると水分がたまりやすく、陰のう水腫の原因になります。1歳未満でみつかった場合には先天性陰のう水腫の可能性が高く、自然に治りやすいことが分かっているので、経過観察することが多いです。1歳を超えても治らない場合には治療が検討されます。

■後天性:生まれつきではないタイプ

精巣ができる過程での異常が主な原因とである先天性に対して、後天性陰のう水腫の原因は怪我や感染症腫瘍などです。感染症とは身体に侵入した病原性の微生物が繁殖し、悪影響を及ぼす病気です。精巣や精巣上体に感染が起こると、その影響で周りに水分がたまり、陰のう水腫が起こります。また、まれではありますが、精巣腫瘍という精巣の「がん」も陰のう水腫の原因となります。

4. 陰のう水腫の検査について

症状から陰のう水腫が疑われた人には診察や検査が行われ、原因や状態を詳しく調べます。

【陰のう水腫が疑われた人の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 画像検査
    • 超音波検査
    • MRI検査
    • CT検査

陰のうが腫れる病気はいくつかあります。例えば、精巣腫瘍精巣炎精巣上体炎などです。これらの病気と陰のう水腫を見分けるために診察や検査が必要になります。 特に重要なのが画像検査です。陰のうの中の状態を画像としてとらえることができるので、陰のうが腫れた原因を詳しく調べられます。画像検査で、陰のうの中身が液体とわかれば、陰のう水腫である可能性がかなり高くなります。一方で、精巣自体が腫れている場合や精巣上体が腫れている場合には、他の病気の可能性が高くなります。

5. 陰のう水腫の治療について

陰のう水腫は自然治癒することがあるので、必ずしも治療しなければならないわけではありません。陰のう内部の液体が少ない場合には、治療の必要がないことが多いです。しかし、陰のうが大きくなったり、違和感・歩きにくさなどの症状がある場合には治療が検討されます。

陰のう水腫の治療は2つあります。一つは注射器で陰のうの中に溜まった液体を抜き出す方法(穿刺排液液治療)です。もう一つは手術で水分がたまりやすいスペースを塞ぐ方法です。穿刺排液治療は外来で短時間のうちに終わるので、身体への負担が小さくて済みますが、再発が多い点がデメリットです。対して、手術は入院や麻酔が必要ではありますが、再発することはほとんどありません。 治療について詳しくは「こちらのページ」を参考にしてください。

6. 陰のう水腫で知っておいてほしいこと

陰のうのようなデリケートゾーンに起こる病気は相談しづらいものです。患者さんの中には、かなり前から気になっていたものの放置していたと話す人が珍しくありません。気恥ずかしさはあるとは思いますが、受診をお勧めします。症状が軽ければ、経過観察を選んでもよいですし、違和感や歩きづらさがある人は早めに治療したほうがよいです。

また、陰のう水腫以外にも陰のうが腫れる病気があることは知っておいてください。中でも精巣腫瘍は命に危険が及ぶことがあり、治療を急ぐ病気です。ですので、陰のうが腫れたらまずは医療機関を受診することをおすすめします。 このページでは陰のう水腫の全体像を掴むために網羅的に説明しました。患者さんからよく受ける質問については「こちらのページ」でも説明しているので、参考にしてください。

参考文献

・「標準泌尿器科学」(赤座英之/監 並木幹夫、堀江重郎/編)、医学書院、2014
・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011