腰痛が襲ってきた時、何が起きているのか?
腰痛は何気ないときに
目次
1. 30代の男性が突然、腰痛に襲われたケース
身近な病気である腰痛について、架空の患者を例にして紹介します。
東京都に住んでいる30代の男性・田中さん。子どもの運動会で綱引きをしていると急に腰が痛くなり、思うように動けなくなってしまいました。なんとか歩いて整形外科に向かい、診察を受けることにしました。
病院につくときには、腰を手で押さえながら、数歩ずつしか歩けない状態に。
「急に腰が痛くなっちゃって。受診したいんですけど。」
医師の診察を受ける前に、まず看護師に症状を説明することになりました。田中さんは、どのようなことを伝えると良いのでしょうか?
腰痛に危険な症状は潜んでいないか
腰痛を発症すると「数日で治るだろう」と考えてしまうのですが、実は一言で腰痛と言っても原因や症状の重症度はさまざまです。そのため、危険な症状がないかどうかを確認することが重要です。
腰痛には危険性を示すいくつかの症状があり、その状態を放置していると命の危険性も出てきます。具体的に以下のような症状です。
【腰痛とともにあらわれた場合、危険性を孕んでいる可能性がある症状】
- 急速に筋力が低下する(力が入りにくくなる)
- おしっこが出しにくくなる
- 排便しにくくなる
- 腰痛よりも特に片側の足のほうが痛みが強い
- 足首やつま先にまで痛みが出ている
- 痛みのある部位に感覚の
麻痺 も出現している - 痛みが非常に強い
- 発熱や寝汗を伴う
上記に当てはまるからといって必ずしも命の危険性があるわけではないのですが、危険性を孕んでいる可能性がありますので、受診する際には必ず伝えるようにしてください。
腰痛に明らかな原因はあるのか
腰が痛い理由は必ずあるはずなのですが、その原因を見つけることができない場合は多いと言われています。
原因を探るヒントになるものが、以下の3つです。
- 腰痛が出るタイミング
- 腰痛の悪くなるタイミング
- 過去に腰痛を患ったことがあるか
これらのヒントから、どのようなことが原因で腰痛を発症したのか考え、もしその原因がわかればその原因を取り除く治療に移っていきます。受診時には上記のことを伝えられるようにしておくと良いです。
2. 腰痛を起こす背景を探ろう
急に腰痛が出た原因に何か思い当たることがありますか? と聞かれた田中さんは、子どもの運動会について次のように答えました。
「子どもの運動会で綱引きをしたら急に腰が痛くなってきました。足がしびれたり、おしっこが出にくくなったりとかはありませんが、腰が痛くて歩くのがとてもしんどいです。以前から腰痛持ちなんですが、ひどくなっちゃった感じです。」
すると田中さんは看護師さんに「最近ストレスが多かったり、気分が晴れないことはありますか?」と聞かれました。
田中さんは、「ストレスですか!? (なぜそのようなことを聞いてくるのだろう)」と、突然の思いがけない質問にびっくりしてしまったようです。
腰痛とストレスや気分にあまり関係はなさそうですが、なぜ看護師さんはストレスや気分の様子を聞いたのでしょうか。
腰痛にはストレスや気分が大きく関わっている
腰痛で受診したのにストレスや気分について聞かれる理由は、さまざまな研究で、うつ病やストレスが、腰痛の出現や悪化に関わっていることがわかっているからです。
今回のような腰痛のきっかけ(綱引き)が明らかだったとしても、心理的な側面や社会的背景がどういった状況であるのか把握することは、治療を行ううえで非常に重要になります。
なぜこんなことを聞かれるのだろう? と不思議に思われる人もいるかもしれませんが、このような理由があるのです。
心理的に落ち込みがあるようであれば、原因の排除やリフレッシュが腰痛を改善させる
ストレスが原因で腰痛を引き起こすことも稀ではありません。
そのため、腰痛の原因が明らかかどうかに関わらず、ストレスを引き起こす要因を排除したり、気分転換の時間を持つことは腰痛を改善させる可能性があります。特に腰痛が慢性化して困っている人は、ストレス解消を対処法のひとつとして考えると良いでしょう。
気分転換の方法に特に決まりはなく、おしゃべりでもスポーツでも自分に適したものであればいずれでも構いません。
3. 腰痛が出たら安静にしなくてはならないか
ストレスや生活への不安などを聞かれた田中さんは、「特に思い当たるものはありません」と答えました。
しかし、田中さんは疑問に思っていることを看護師さんに投げかけました。
「急に腰痛が出た場合、安静にする必要があるんですよね?」
この田中さんの疑問は急に腰が痛くなった多くの人が持つものだと思います。腰痛に安静は本当に必要なのでしょうか?
腰痛に対して必ずしも安静は必要ではない
急に腰が痛くなったら、動かないほうが良いと思っている人は少なくありません。しかし、腰痛があるからといってずっと安静にしていたら、筋力は落ちてしまいますし、精神的にもだんだんと落ち込んでしまうことでしょう。
実は、先に述べた危険症状(激しい痛み、しびれ、おしっこの出づらさなど)がない限りは、強い痛みの出ない範囲の運動が望ましいと考えられています。
ただし、痛みが強い中、グイグイ押したり伸ばしたりといった運動を行うと、頭(脳)が痛みを覚えてしまう可能性もあるので、あくまで強い痛みの出ない範囲で運動を行うことをおすすめします。
また、腰の痛みが動けないほど強く、そもそも安静にせざるを得ないという人もいます。もちろん、動けない場合には安静にして、無理をしないことが大事です。
4. 腰痛への対処法を考える
田中さんは看護師さんに一通りの現状を話した後、お医者さんの診察を受けました。腰を動かしたり、長い時間座っていたりするとかなり痛むようです。
急にあらわれた腰痛で悩まされていた田中さんは、手術も覚悟し、不安な気持ちでいました。
するとお医者さんに「しびれもないし手術は受けなくて大丈夫ですよ。コルセットをつけて、痛み止めを飲んでください。今日は痛み止めの注射をしておきましょうか。」と言われました。
腰痛の手術はどんな時に受けるものなのか?
腰痛に対する手術は基本的に受ける必要がないことがほとんどです。手術を受けても腰痛が改善しないこともあれば、むしろ悪化することもあります。そのため、手術は、腰痛で歩くのがままならない場合や、神経が障害を受けてしびれや感覚異常などの症状がある場合に限ります。
今回の田中さんのケースでは、しびれもなく歩くこともなんとかできていますので、手術は考えずにまずは痛みが引くのを待ちながら様子を見ることとなります。
コルセットは有効か?
急に腰痛が出た場合、コルセットを装着することがあります。腰椎(腰骨)を安定させて痛みを起こさせない、という効果が期待できます。しかし、暑かったり違和感があったりしますので、効果がないのであれば付ける必要はないです。また、長い時間装着していると、お腹や背中の筋肉が衰える可能性もありますので、注意が必要です。
コルセットを装着するのに適した人は、急に腰痛が出てきた人(急性腰痛)の中で、特に、腰をひねったり前後に動かしたりすると痛みが強くなる人、と考えられます。
腰痛がどんな時に出現し悪化するのかを把握する
腰痛に対して効果的であると言われている治療法のひとつに、
いわば、古い中国の教え(孫子の兵法)にある「敵を知り己を知らば、百戦危うからず」を実践しているようなものです。
つまり、腰痛の状況を分析して、行える動きを見つけていくことが、腰痛を治していく時に重要なキーになるというわけです。
5. 二度と腰痛を味わいたくないならどんなことに気をつけるか
痛み止めを注射して腰痛がすっかり改善した田中さんは、ふとこんなことを思いました。
「今回は良くなったが、また腰痛を繰り返すのではないか」
腰痛持ちの人はよく経験することかもしれませんが、突然あらわれる腰痛でも
腰痛を予防する方法
腰痛はさまざまな原因で起こるため、予防策もそれに応じさまざまです。詳しいことに関しては「 腰痛の予防法は?」の項に譲りますが、休息の時間を確保しながら、疲労の残らない程度の適度な運動を行うように心がけることが、もっともよい予防になります。また、マインドフルネスと呼ばれる方法のような「心身を調えるような取り組み」も有効性が言われつつあります。
腰痛を予防するには姿勢や歩き方も見直そう
腰痛は骨格の歪みからも起こりえます。そのため、姿勢が偏っていると腰痛に悩まされることが多くなります。
【腰痛予防のための姿勢の改善】
- 左右に偏りがない歩き方をする
- 腰をひねる動きを控える
- 腰を曲げすぎたり反らせすぎたりするような姿勢をさけ、正しい姿勢を取る
- デスクワークの人は、無理のない姿勢で座れるよう、モニター・机・イスの高さを調整する
パソコン作業の多い人は腰痛に悩まされやすいものです。モニターの位置は、正しく椅子に腰掛けている状態で無理なく見れる位置としましょう。机の高さも肘(ひじ)が90度になるような高さに設定すると腰痛は出現しにくくなります。
今回、急な腰痛に襲われた田中さんは、姿勢が悪いという自覚もあったため、気づいた時に姿勢を直すように気をつけていたところ、その後腰痛はあまり見られなくなりました。
6. 誰にでも起こりうる腰痛に詳しくなろう!
上記に挙げた例は、腰痛を起こした人の一例に過ぎません。腰痛は多くの原因や症状を持ち、適切な治療法や予防法を講じないと慢性化したり重症化します。腰痛の原因、症状、治療法などを詳しく理解することで、適切な対処を選択できる確率が高くなるでしょう。
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