ようつうしょう
腰痛症
さまざまな原因により、腰が痛くなる病気の総称
13人の医師がチェック 171回の改訂 最終更新: 2023.06.28

腰痛・ぎっくり腰の原因:ストレス、職業、病気など

ぎっくり腰や腰痛は誰しもが経験しうる病気です。近年では研究が進み、腰痛と関連する要因として職業やストレスなどが明らかになっています。今回は、腰痛の危険因子について解説します。

1. ストレス・腰の負担の多い職業は腰痛が出やすい

腰痛が起こる理由としてなんとなく想像できるのは、重いものを持って腰に負担がかかることではないでしょうか。

腰への負担と腰痛の関係は古くから研究されています。さらに、腰の動きに着目すると、無理に腰を曲げたり回転させたりすることでも腰痛を引き起こしやすいですし、ずっと同じ姿勢をとっているような「腰を動かさない」ということも腰痛の原因になります。

重いものを持ち上げると腰に負担がかかります。一方、重いものでなくても、前かがみで少し腰に力を入れる程度の場合でも腰が痛くなることもあります。時には、くしゃみや咳で腰を痛めることもあるのです。

以上のような腰への負担を大きくする職業が「腰痛診療ガイドライン2019」に紹介されています。

【腰痛を感じる職業別の割合】

  • 事務42-49%
  • 看護46-65%
  • 介護63%
  • 警察関係42%
  • 運輸71-74%
  • 清掃69%
  • 建設29%

職業柄、どうしても腰に負担のかかりやすい場合は、腰痛の起こりにくい姿勢を意識する必要があります。例えば、できるだけ腰を曲げて作業しないということや、同じ姿勢をとり続けないようにストレッチや体操を取り入れることで、腰痛の発症予防につながります。

また、職場における精神状態も腰痛と関係しています。以下の項目は腰痛を発症する危険性を高めると言われている要因です。

  • 仕事に対する満足度の低さ
  • 仕事の単調さ
  • 職場の人間関係
  • 仕事量の多さ
  • 精神的ストレス
  • 仕事に対する自己評価の低さ

また、仕事に不満がある、うつ状態である、社交性が低い、痛みに対する恐怖心が強い、という場合は腰痛が治りにくいことがわかっています。

2. 腰痛とうつ状態は関係している?

腰痛とうつ状態が関係していることは、前述した通りなのですが、ここでは少し詳しく説明したいと思います。

腰痛とうつ状態がどの程度関係しているかというと、「うつ状態にある人は、うつ状態でない人と比べて慢性的な腰痛に悩まされる危険性が2.88倍も高い」という報告があるくらいです。

逆に、心理状態を改善すると腰痛が軽減すると言われていますので、職場環境が腰痛の要因になっているのであれば、リラックスやリフレッシュを取り入れることも重要です。

3. 運動不足も腰痛の原因に?

腰痛の要因として運動不足も知られています。腰痛予防のために筋肉をつけることは良いことですが、実は筋肉をつけるよりもウォーキングなどのいわゆる有酸素運動を行うほうが腰痛予防にとって重要です。

ちなみに、肥満と腰痛は非常に関連していそうですが、実は肥満のひとつの指標であるBMI(Body Mass Index、体格指数)と腰痛はあまり関係していないことがわかっています。しかしその一方で、肥満の人は運動習慣がないことも多いため、運動不足が原因で腰痛になる危険性は十分に考えられます。もし現在腰痛がなかったとしても、一度運動習慣を見直してみるとよいでしょう。

4. 喫煙と腰痛の関係とは?

喫煙による害と言えば、肺の病気を思い浮かべるかもしれません。しかし、腰痛にも関係しています。

過去の報告では、喫煙の本数が増えれば増えるほど腰痛が発症するリスクが上がると言われています。この関係にはいくつかの理由がありますが、喫煙者の生活習慣として運動不足やストレス環境にいることも考えられるため、直接的な原因であるとは限りません。しかし、腰痛のあるなしに関わらず、健康全般のために禁煙は役立ちます。思い切って禁煙にトライしてみましょう。

参考文献 ・日本整形外科学会,日本腰痛学会/監修, 腰痛診療ガイドライン2019, 南江堂, 2019

5. ぎっくり腰やヘルニア以外の腰痛を引き起こす病気とは?

腰痛には急性腰痛(ぎっくり腰)や慢性腰痛などさまざまな種類があり、それらを引き起こす病気もさまざまです。ここでは、腰痛の原因となりうる病気とその特徴について解説します。

腰痛は原因が明らかであるものと不明であるものに大別されます。

腰痛の原因が明らかである場合、以下の5つに大別されることがほとんどです。

  • 脊椎背骨)が原因の腰痛
  • 神経が原因の腰痛
  • 内臓が原因の腰痛
    • 腎臓や泌尿器
    • 子宮
  • 血管が原因の腰痛
  • 心因性の腰痛(精神状態などが原因である腰痛)

これらのうち、複数の要因が重なることもしばしばあります。

また、原因の中には、腫瘍、感染、外傷といった、見逃すと命に関わるものもあります。

腰痛の原因となる病気は、いずれも治療しないでいると病状が進行していく危険性が高い病気です。そのため、何かおかしいと感じたらすぐに受診して早めに治療してください。

腰痛の原因が明らかである場合は、その原因に対する治療をすることで腰痛も改善していきます。原因を明らかにするためには、「症状が出現するタイミング」、「症状の内容」、「症状の強さ」、「症状の持続期間」が重要です。医師や看護師から聞かれたら、答えられるようにしておくと良いです。

6. 脊椎(背骨)が原因の腰痛

腰痛の代表的な原因として、背中の骨(脊椎)の異常が挙げられます。それらの病気を説明する前に、まずは少し複雑な脊椎(背骨)周囲の構造を知っておく必要があります。下の図をご覧ください。

腰痛の仕組み、椎体構造の画像

脊椎は、首(頚椎)、背中(胸椎)、腰(腰椎)、お尻(仙椎)と各々に名前が付いています。背骨は、椎体(ついたい)と呼ばれる骨と椎間板と呼ばれるクッション材の役割を持つ組織、脊髄で構成されています。脊髄は、脳とつながっています。この脊椎に異常が見られる病気は以下の通りです。

腰椎椎間板ヘルニア

腰痛を発症する代表的な病気です。上の図のように、腰椎と腰椎の間には椎間板と呼ばれるクッションがあります。椎間板の中には髄核と呼ばれるゼリー状の物質があり、その物質が飛び出ることで脊髄を圧迫します。脊髄を圧迫した場合に、痺れや脱力(力が抜けること)を伴う腰痛が見られることがあります。

腰部脊柱管狭窄症

背骨の中でも脊柱管と呼ばれる部位は、脊髄を取り囲むような配置になっています。この脊髄を覆う脊柱管の内側が狭くなると、脊髄を圧迫するため、腰痛を伴うことがあります。脊柱管が狭くなる理由としては、加齢であったり、脊柱管の内側にくっついている靭帯が分厚くなったりすることが挙げられます。年配の人に多いのが特徴です。

腰椎分離症・分離すべり症

腰椎分離症は腰椎の一部が分離してしまう状態を指します。運動などによって疲労骨折を起こすことが主な原因です。腰椎が異常な動きを起こしてしまうので、腰痛が生じます。分離症が進行して分離すべり症になることがあります。

骨粗鬆症・骨軟化症

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨がもろくなってしまう病気です。腰椎が骨折または変形して、強い腰痛やしびれが出現します。

骨軟化症は、骨が作られる成長期に骨が十分に固まらず、もろくなる病気です。主な原因はビタミンDの不足です。股関節の鋭い痛み、脚・腰・骨盤・肋骨の痛みがあらわれます。

側弯症・後弯症

側弯症は背骨が左右に曲がってしまう病気です。多くは思春期の女子にみられ、原因は不明のことが多いです。肩、腰、骨盤の傾きが非対称になり、腰痛があらわれることがあります。

後弯症は思春期頃に背中が丸くなってしまう病気で、男性に多いです。慢性的な背中や腰の痛みがあらわれます。

強直性脊椎炎・乾癬性関節炎

強直性脊椎炎は背骨や骨盤の関節・靭帯に炎症が起きる病気です。腰痛や関節が曲がらない症状があらわれます。乾癬性関節炎は、乾癬という免疫の異常で起こる病気が原因となり、関節に痛みや腫れが起こった状態です。

化膿性椎体炎(化膿性脊椎炎)

椎体やその周囲の組織に細菌が感染する病気です。感染によって椎体や椎間板がもろくなり、その周辺の組織に影響を及ぼします。その結果、腰痛や痺れを伴うことがあります。細菌が全身に感染しうるため、重症になることも多い病気です。

脊椎カリエス

椎体やその周囲の組織に結核菌が感染する病気です。結核菌への感染によって、椎体や椎間板が破壊されていきます。化膿性椎体炎と比べて、椎体や椎間板の破壊は広範囲であることが多いですが、症状は軽症であることが多いです。難治性であるため、長期的に治療する必要があります。

脊椎外傷

交通事故などによって外傷を負い、背骨が折れたり潰れたりした状態です。背骨の外傷の程度が重症である場合、脊髄もダメージを受けます。脊髄損傷のような病気に発展することもあります。もし脊髄損傷を発症した場合は下半身にしびれが生じたり、足や手が動かなくなったりします。後遺症となることも少なくありません。脊椎外傷が疑われた場合、仮に症状が軽くても徐々に進行することがあるので、専門的な診察が必要です。

脊椎靭帯骨化症(後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症)

背骨を構成している椎体は、上下の椎体と靭帯でつながっています。これらの靭帯の一部が骨のように硬くなってしまう病気が、靭帯骨化症です。椎体の背中側にある後縦靭帯や黄色靭帯と呼ばれる靭帯が骨化すると、脊髄を圧迫してしまいます。重症の場合では骨化した靭帯が脊髄を圧迫し脊髄損傷に至ります。軽症であっても、腰の動きが悪くなるため、腰痛が起こることがあります。

筋・筋膜性腰痛症(筋・筋膜性疼痛)

日常生活やスポーツなどで筋肉やその表面を覆っている筋膜に異常が生じ、痛みを生じることがあります。過度に運動した場合に生じることもありますし、職業などによっては無理な姿勢をとっていて、筋肉や筋膜が損傷することもあります。過労が続いた場合は、慢性的な腰痛を生じますので注意が必要です。

7. 神経が原因で起こる腰痛

背骨を構成する椎体のすぐ後ろを脊髄と呼ばれる太い神経が通っています。この脊髄に異常が起こると腰痛や、その他の神経症状があらわれることになります。具体的な病気の例としては、脊髄の腫瘍や脊髄損傷などが挙げられます。

8. 腎臓や泌尿器が原因の腰痛

実は、内臓の病気によっても腰痛が起こることがあります。

内臓に異常がある場合、その異常は神経にも影響を与えます。1つの神経は複数の臓器に働きかけるため、神経に異常があると複数の場所に異常な感覚が生じることがあります。これを放散痛と言い、内臓に異常があるとき、他の臓器(筋肉も含みます)に痛みなどの異常感覚が起こります。

放散痛の例として、心筋梗塞で起こる肩や腕の痛みがあります。

腰痛を起こす内臓の異常として頻度が高いのが、腎臓の異常と子宮の異常です。具体的には以下の病気が考えられます。

尿管結石

尿(おしっこ)が通る管(尿管)の中に、尿管結石という石ができることがあります。石のせいで尿がうまく流れず、尿管から腎臓に圧力がかかることの影響で腰痛が見られます。

水腎症

尿管結石や腫瘍などで尿の流れが悪くなり、尿がせき止められることで腎臓に圧力がかかった状態です。腎臓への圧力が刺激となり腰痛を起こします。

腎盂腎炎

腎皮質/髄質や腎盂と呼ばれる部位で感染が起こり、高熱や腰痛を引き起こす病気です。

9. 子宮の病気が原因の腰痛

生理時に腰痛を経験する女性は少なくないと思います。実は腰痛が子宮の病気のサインであることもあります。

子宮内膜症

子宮内膜が本来とは別の場所にできてしまう病気です。主にお腹の中の臓器に子宮内膜が存在することが多く、生理の周期に従って腹痛や腰痛を起こします。

月経困難症

生理痛が強く、日常生活に支障をきたすために治療の必要な状態を指します。腹痛や腰痛、頭痛が主な症状です。

その他関連することとして妊娠時の腰痛があります。妊娠は病気ではないのですが、子宮がいつもと違った状態に変化するため、腰痛を起こすことがあります。

10. 血管が原因の腰痛

腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)や解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)といった血管の病気でも腰痛があらわれることがあります。

11. 心因性の腰痛

心理面の病気も腰痛の原因となります。うつ病解離性障害ヒステリー)がその代表格です。腰痛と心理的な不調が重なることは多く、特に慢性腰痛においては心身を充実させることが症状改善につながります。

参考文献 ・日本整形外科学会,日本腰痛学会/監修, 腰痛診療ガイドライン2019, 南江堂, 2019