尿毒症性脳症の基礎知識
POINT 尿毒症性脳症とは
腎臓が十分に機能しないことによって、身体の中に老廃物が蓄積する状態を尿毒症といい、尿毒症の影響が脳に出ることを尿毒症性脳症と言います。集中力の低下や幻覚、錯覚、抑うつ状態、手足の震えが現れます。血液検査や脳波検査、画像検査(CT検査、MRI検査など)によって詳しく調べられます。尿毒症性脳症の治療は老廃物を身体の外に出すことと、可能であれば腎臓の機能を回復させることです。尿毒症性脳症は内科や腎臓内科、泌尿器科で検査や治療が行われます。
尿毒症性脳症について
尿毒症性脳症の症状
- 主な症状
- 集中力や注意力の低下
- せん妄(幻覚や錯覚がみられる)
- 怒りっぽくなる
抑うつ 状態になる- 神経症状
- 手足の震え
- 顔や手足の
ミオクローヌス (ぴくぴくする) - けいれん
尿毒症性脳症の検査・診断
- 血液検査
腎機能 の低下している程度を調べる- 体の中に蓄積されている老廃物の程度を調べる
脳波検査 :脳の働きを調べる- その他の原因による脳症と区別するために、下記の検査が行われることもある
頭部CT検査 頭部MRI 検査髄液検査 - 脳波検査
尿毒症性脳症の治療法
尿毒症性脳症の経過と病院探しのポイント
尿毒症性脳症が心配な方
尿毒症性脳症は一つの病気というよりも、腎機能が低下したことで出てくる症状の一つです。軽いものであれば手足のふるえや頭がぼーっとするといった症状が出ますし、重症であれば意識がなくなってしまうといった状態を引き起こします。腎機能が正常な状態で尿毒症性脳症だけを突然発症するということはありません。
腎臓は体内に溜まった老廃物を体の外に出すための臓器です。尿の中にはそのような老廃物が多く含まれています。しかし腎臓の機能が低下して尿が出せなくなると、老廃物が溜まって様々な臓器に悪影響を及ぼすことで尿毒症性脳症を発症します。
尿毒症性脳症の治療のためには、根本的には腎臓の機能を改善させることが第一です。急性腎障害と呼ばれる、数日間以内の経過で腎機能が悪くなってきた状況であれば、まだ腎臓の機能は改善が見込めます。そのような場合には、腎臓の治療そのものが尿毒症性脳症の治療になります。このような治療は、腎臓内科や救急科のある病院で行われます。
一方で、慢性腎臓病と呼ばれ徐々に数か月から年単位で腎機能が低下してきている場合には、腎臓の機能は元通りにならない場合があります。このような時には、対症療法としての透析(血液透析、腹膜透析)が、尿毒症性脳症を改善させるために必要となります。腎臓移植も選択肢の一つではありますが、他の方から腎臓の提供を受けなければならないため、現在の日本では多くの方が受けられる治療ではありません。
臨時の血液透析であれば太めの点滴(カテーテルと呼びます)を血管に入れて行われることもあるのですが、慢性腎臓病があってその後も継続的に血液透析を続けるためには、血管の手術を受ける必要があります。手術を行っている科は病院ごとに異なりますが、血管外科があれば血管外科が担当の科です。総合病院で、外科と腎臓内科が両方あるようなところでは、血管の手術が行えるところが多いでしょう。一部のクリニックでも日帰り手術で行っているところがあります。その上で、血液透析が行えるクリニックや病院に週3回通院するというのが透析の標準的な方法です。慢性腎臓病で低下した腎臓の機能は残念ながら回復が見込めないため、週3回、1回3時間の通院を生涯続けることになります。従って、通院先選びは極めて重要です。医療機関のスタッフ(医師や医師以外も)が信頼できることに加え、通いやすい立地にあるということも無視できません。午前午後の2枠で透析を行っているところや、朝昼晩の3枠で行っているところ、近所から送迎バスが出ているところなど様々な条件があります。ご自身の中で大切にしたい条件を考えた上で、いくつかの箇所を見学に行って決められるのが良いのではないかと思います。
腹膜透析の場合、手術を受けた上で、退院後はご自身で自宅で透析を行うことになります。正しい手順で行えないと体内に菌が入ったり、手術で挿入したカテーテル(体の内側と外側をつなぐ管)の交換が必要になってしまったりなどのリスクがあるため、身体的にも精神的にも、生活が自立している人でないと行うことができません。腎臓内科のある医療機関に入院の上で、手術を受けつつ、自宅での透析処理の方法や注意点をしっかりと習得した上で退院となります。腎臓専門医のいる病院を選択されるのが良いでしょう。中には腹膜透析に特に積極的に取り組んでいる病院もあります。