きゅうせいこつずいせいはっけつびょう
急性骨髄性白血病(AML)
骨髄で異常な血液細胞が急激に増殖する病気。「血液細胞のがん」にあたる
10人の医師がチェック 114回の改訂 最終更新: 2023.02.20

急性骨髄性白血病(AML)の基礎知識

POINT 急性骨髄性白血病(AML)とは

骨髄にある造血幹細胞から血液細胞(白血球、赤血球、血小板)へと成熟する過程にある細胞が癌化する病気です。白血病はまず、癌化した細胞がもし正常に成熟したら何になっていたかによって分類されます。たとえば、成熟したらリンパ球(白血球の一種)になるだろう細胞が癌化したものをリンパ性白血病と呼び、成熟したらリンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になるだろう細胞が癌化した場合を骨髄性白血病と呼びます。さらに、急激に発症した白血病を急性白血病、ゆっくり進むものを慢性白血病と呼びます。これらを組み合わせて、白血病は急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分けられます。急性骨髄性白血病は数日から数週単位で病状が進行する、進み方が早いタイプの白血病です。急性骨髄性白血病の症状としては、正常な血液細胞が作られなくなることによる症状として、感染を起こしやすくなる(発熱)、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、出血が止まりにくい、などが見られます。また、白血病細胞が臓器に浸潤することによる症状として、腹部の腫れ、歯茎の腫れや痛み、腰痛、関節痛、頭痛などが見られます。診断は採血検査、骨髄検査、画像検査、染色体検査、遺伝子検査などを用いて行われます。治療は抗がん剤が中心となります。造血幹細胞移植が行われる人もいます。急性骨髄性白血病が心配な人や治療したい人は血液内科を受診してください。

急性骨髄性白血病(AML)について

  • 血液細胞には大きく分けて以下の3種類がある
    • 白血球:主に病原体や異物と戦う役割
      • リンパ球は白血球の一種であり、主にウイルスなどを攻撃する機能を持つ
    • 赤血球:主に酸素を輸送する役割
    • 血小板:主に出血を止める役割
  • 血液細胞は骨髄にある造血幹細胞が成長して作られる
    • 造血幹細胞から血液細胞へと成熟する過程で、細胞が化することを白血病という
    • 白血病になると、癌化した細胞(白血病細胞)が骨髄を占拠し、正常な血液細胞は減少する
    • リンパ球になる過程で癌化した場合はリンパ性白血病、リンパ球以外の血液細胞になる過程で癌化した場合を骨髄性白血病という
  • 白血病は大きく分けて以下の4種類に分けられる
  • 急性骨髄性白血病AML)は数日から数週単位で急激に進行し、治療をしない場合は数ヶ月以内に死亡する
  • AML白血病のうちの半分程度を占めており、比較的よく見られる白血病である
    • 日本では毎年12,000人ほどが新規に白血病と診断されており、そのうち約半数がAML
    • AMLは男女どちらにも起きる病気だが、男性の方がやや多い
    • AMLは高齢者に多い病気である
  • 白血病は遺伝子や染色体が傷つくことで発症すると考えられている
    • 急性骨髄性白血病の一種である急性前骨髄球性白血病(APL: acute promyelocytic leukemia)では15, 17番染色体の異常が原因と分かっている
    • 抗がん剤治療放射線治療後に発症する二次性白血病や、上記のAPL以外では白血病になる明らかな原因は不明
    • 遺伝子や染色体の異常が原因ではあるが、ほとんど全ての白血病は子どもなどの血縁者に遺伝しない

急性骨髄性白血病(AML)の症状

  • 正常な血液細胞が減少することによる症状(骨髄白血病細胞が占拠して、正常な血液細胞は減少する)
    • 白血球の減少
      • 病原体への抵抗力が低くなり、感染を起こしやすくなる
    • 赤血球の減少
      • 貧血により、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、など
    • 血小板の減少
      • 血が止まりにくくなる
      • 歯茎からの出血や鼻血が止まらなかったり、すねなどに赤い点々(紫斑)が多発する
  • 白血病細胞が臓器に浸潤することによる症状、全身的な症状
    • 歯茎が腫れる、痛い
    • 肝臓や脾臓が腫れる(お腹が張る、腹痛)
    • 腰痛、関節痛(骨痛)
    • 頭痛
    • 発熱
  • 最初は「かぜをひいたような症状」(だるさ、発熱、頭痛など)のこともあるが、かぜと違って数週間経っても治らず、採血してみると白血病が見つかることもある

急性骨髄性白血病(AML)の検査・診断

  • 血液検査
    • 血液細胞の数や、異常な血液細胞の有無を確認する
    • 全身の臓器の機能を調べる
    • 治療をしていくうえで問題になるウイルス感染の有無を調べる
  • 骨髄検査
    • 腰骨や胸の骨から骨髄を採取する
    • 骨髄を顕微鏡で確認したり、染色体検査や遺伝子検査を行う
  • 画像検査
    • レントゲンX線)検査やCT検査で、合併症の有無を調べる
    • 腹部超音波検査腹部エコー)を行うこともある
  • 腰椎穿刺
    • 背中の下の方を針で刺して、脊髄の周りを流れる液体(髄液)を採取する
    • 脳に白血病細胞が浸潤していないかどうかを調べるために行われる
  • 急性骨髄性白血病AML)のタイプによっては、特に出血しやすいタイプであったり、特定の薬が効きやすいタイプであったりということがあるため、骨髄検査(遺伝子検査、染色体検査)は診断をつけて、治療法を選択するうえで非常に重要な検査
  • がんの進行具合を判断する基準として、他のがんでは病期ステージ)が決められているが、AMLでは診断時に既に全身へ白血病細胞が広がっているので、病期分類は存在しない
    • ただし、年齢や染色体異常、遺伝子所見によって予後良好群、予後中間群、予後不良群に分けられる
    • 近年はWHO分類という分類により、AMLはさらに細かく数十個の分類に分けられている
    • 主な分類方法であるWHO分類以外にも、昔から使われている簡便なFAB分類という分類もある(近年はWHO分類が主流)

急性骨髄性白血病(AML)の治療法

  • 診断時には通常、体内に1兆個ほどの白血病細胞が存在する。これをまずは10億個以下ほどに減らすことが治療の初期目標となる
    • 白血病細胞が10億個以下ほどになると、顕微鏡で白血病細胞が見えないほどの量になる
    • 顕微鏡で白血病細胞が見えないほどまで減ることを「寛解(かんかい)」とよぶ
    • 寛解を目指すための初期治療を寛解導入療法といい、強力な抗がん剤を使用する
    • 高齢者や、もともと全身の状態が悪い方の場合には寛解導入療法を施行できないこともある
    • 抗がん剤の効きが悪く、寛解導入療法で寛解が得られない場合もある
    • 寛解が得られた場合には残存した白血病細胞をさらに減らすために「地固め療法」と呼ばれる抗がん剤治療を行うことが多い
    • 予後があまり良くないと考えられるケースなどでは、ドナーがいれば造血幹細胞移植を行う場合もある
    • 寛解後に再発するケースも多く、再発した場合には予後が良くない場合が多い
  • AMLの寛解率や生存率は、病型によって大きく異なる
    • 寛解が得られる割合は予後良好群で80%以上、予後中間群で60-80%程度、予後不良群で40-50%程度
    • 3年間生存率は予後良好群で50%前後、予後中間群で20-40%前後、予後不良群で10%前後だが、若い方ほど予後が良い傾向がある
  • 急性前骨髄球性白血病(APL)の場合には治療法が若干異なる
    • APLはAML全体の10%程度を占めている
    • APLではオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と呼ばれる薬剤がよく効くので、抗がん剤と併用する
    • APLは治療成績がよく、90%以上の割合で寛解が得られ、再発率も10年間で25%程度
    • APLは特に出血しやすいため注意が必要

急性骨髄性白血病(AML)に関連する治療薬

レチノイド製剤(APL治療薬)

  • 前骨髄球の分化を妨げる遺伝子の抑制機構を崩すことで異常に増殖した前骨髄球を減少させる薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 急性骨髄性白血病の一つである急性前骨髄球性白血病(APL)は前骨髄球のがん化でおこり染色体異常でキメラ遺伝子が生じ、これが白血球の分化・成熟を阻害し前骨髄球が異常に増加する
    • 本剤はAPLにおけるキメラ遺伝子による白血球の分化抑制機構を崩す作用をあらわす
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急性骨髄性白血病(AML)が含まれる病気

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