かんのうほう
肝のう胞
肝臓の中に液体の溜まった袋(のう胞)ができる病気。悪性化することはなく、基本的に治療の必要性もない
5人の医師がチェック 100回の改訂 最終更新: 2019.11.19

肝のう胞とはどんな病気なのか:症状、検査、治療など

肝のう胞とは肝臓の中にできる袋状の病変です。袋の中は液体で満たされています。肝のう胞があってもほとんどの人は症状を感じず、特に身体に悪い影響もありません。しかし、まれに症状を生じたり治療が必要になることがあります。このページでは肝のう胞の概要について説明をします。

1. 肝のう胞とは何か

肝のう胞とは肝臓の一部に袋状の空間ができ、なかに液体が溜まったものです。肝のう胞があっても、症状を感じることはほとんどありません。このため肝のう胞は、健康診断の腹部超音波検査など、何らかの検査がきっかけで見つかる人が多いです。また、肝のう胞の大半は身体に悪さをしない良性のものです。

腹部超音波検査で無害な肝のう胞であると診断されれば心配は不要で、お医者さんからは治療の必要はないと説明されます。

2. 肝のう胞はよくあるものなのか

肝のう胞はよくある病気です。古い文献では超音波検査を受けた人の数%にしかみつからなかったという報告が多いですが、近年の報告では健康診断の超音波検査で約20%の人にみつかるといわれています。みつかる頻度が増えてきた理由は、超音波検査をはじめとする画像検査が進歩したためと考えられています。肝のう胞は誰にでも起こりうるありふれた病気といえます。

年齢が上がるほど肝のう胞が見つかりやすい

国内のある病院で行われた集計によると、健康診断の超音波検査を受けた人では年齢が高い人のほうが肝のう胞がみつかりやすかったということです。具体的には、30歳代の人で肝のう胞が見つかったのは10%程度であったのに対し、60歳を超えた人では30%以上だったと報告されています。若い人でも肝のう胞が見つかる可能性は十分ありますが、高齢の人ではとくに見つかりやすいといえます。

3. 肝のう胞の症状について

肝のう胞があっても症状を感じない人がほとんどです。しかし、まれに、症状を生じる人もいます。たとえば、感染を起こした肝のう胞や巨大化した肝のう胞の人は、腹痛や腹部圧迫感を感じます。また、出血している肝のう胞の人は、貧血が起きてふらつきを感じることがあります。

4. 肝のう胞の原因について

はっきりと原因はわかっていませんが、ほとんどの肝のう胞が先天的(生まれつきであること)のもので、胎児のときに肝臓に異常な胆管の組織が作られることでできると考えられています。また、遺伝によって肝のう胞ができる人や、エキノコックスという寄生虫によって肝のう胞が作られる人もいます。

5. 肝のう胞の検査について

肝のう胞の検査には、問診や身体所見に加えて、下記のような血液検査や画像検査があります。

血液検査

肝のう胞で血液検査が異常になることはほとんどありません。しかし、肝のう胞が「感染」、「出血」、「がん化」していると、下記の血液検査が異常になることがあります。

  • 感染があると異常になる値:白血球数、CRP
  • 出血して貧血があると異常になる値:赤血球数、ヘモグロビン濃度
  • 肝機能を調べる検査:AST、ALT、γGT、ALP、総ビリルビン
  • 腫瘍があると上昇する検査:CEA、CA19-9
  • 病原体の種類を同定する項目:血液培養検査、エキノコックス抗体

症状や画像検査の結果を考慮してこれらの血液検査をすることがあります。

画像検査

肝のう胞の画像検査でよく行われるのは、腹部超音波検査です。必要に応じて腹部CT検査腹部MRI検査もすることがあります。

検査について詳しくは、こちらのページで説明しています。

6. 肝のう胞の治療について

肝のう胞のほとんどが無害で、命をおびやかすようなことはなく、治療の必要のないものです。しかし、まれに症状を生じたり、治療が必要な人もいます。どんな肝のう胞にどんな治療があるのか、簡単に表にまとめます。

【治療が必要な肝のう胞の特徴】

肝のう胞の特徴 受ける可能性がある治療法
巨大で腹部圧迫感などの症状を引き起こしている 手術
細菌感染を起こしている 抗菌薬や、針でのの排出
エキノコックスに感染してできたものである 内服薬や手術
がんの可能性がある 手術
肝臓と腎臓に多数できている 内服薬、血液透析、腎移植

詳細について知りたい人は、こちらのページを参照してください。

参考文献

・Ian J. Martin, et al. Tailoring the Management of Non Parasitic Liver Cysts. Ann Surg.1998 ;228(2):167-172.
・白石和仁 他:当院における一年間の健診腹部超音波検査の現状について. 医学検査.65 (1) 103-109:2016.