肝のう胞とはどんな病気なのか:症状、検査、治療など
肝のう胞とは肝臓の中にできる袋状の
1. 肝のう胞とは何か
肝のう胞とは肝臓の一部に袋状の空間ができ、なかに液体が溜まったものです。肝のう胞があっても、症状を感じることはほとんどありません。このため肝のう胞は、健康診断の
腹部超音波検査で無害な肝のう胞であると診断されれば心配は不要で、お医者さんからは治療の必要はないと説明されます。
2. 肝のう胞はよくあるものなのか
肝のう胞はよくある病気です。古い文献では
年齢が上がるほど肝のう胞が見つかりやすい
国内のある病院で行われた集計によると、健康診断の超音波検査を受けた人では年齢が高い人のほうが肝のう胞がみつかりやすかったということです。具体的には、30歳代の人で肝のう胞が見つかったのは10%程度であったのに対し、60歳を超えた人では30%以上だったと報告されています。若い人でも肝のう胞が見つかる可能性は十分ありますが、高齢の人ではとくに見つかりやすいといえます。
3. 肝のう胞の症状について
肝のう胞があっても症状を感じない人がほとんどです。しかし、まれに、症状を生じる人もいます。たとえば、感染を起こした肝のう胞や巨大化した肝のう胞の人は、腹痛や腹部圧迫感を感じます。また、出血している肝のう胞の人は、貧血が起きてふらつきを感じることがあります。
4. 肝のう胞の原因について
はっきりと原因はわかっていませんが、ほとんどの肝のう胞が先天的(生まれつきであること)のもので、胎児のときに肝臓に異常な
5. 肝のう胞の検査について
肝のう胞の検査には、
血液検査
肝のう胞で血液検査が異常になることはほとんどありません。しかし、肝のう胞が「感染」、「出血」、「
- 感染があると異常になる値:
白血球 数、CRP - 出血して貧血があると異常になる値:
赤血球 数、ヘモグロビン 濃度 - 肝機能を調べる検査:AST、ALT、γGT、ALP、総
ビリルビン 腫瘍 があると上昇する検査:CEA、CA19-9- 病原体の種類を同定する項目:血液
培養検査 、エキノコックス抗体
症状や画像検査の結果を考慮してこれらの血液検査をすることがあります。
画像検査
肝のう胞の画像検査でよく行われるのは、腹部超音波検査です。必要に応じて
検査について詳しくは、こちらのページで説明しています。
6. 肝のう胞の治療について
肝のう胞のほとんどが無害で、命をおびやかすようなことはなく、治療の必要のないものです。しかし、まれに症状を生じたり、治療が必要な人もいます。どんな肝のう胞にどんな治療があるのか、簡単に表にまとめます。
【治療が必要な肝のう胞の特徴】
肝のう胞の特徴 | 受ける可能性がある治療法 |
巨大で腹部圧迫感などの症状を引き起こしている | 手術 |
エキノコックスに感染してできたものである | |
がんの可能性がある | 手術 |
肝臓と腎臓に多数できている | 内服薬、 |
詳細について知りたい人は、こちらのページを参照してください。
参考文献
・Ian J. Martin, et al. Tailoring the Management of Non Parasitic Liver Cysts. Ann Surg.1998 ;228(2):167-172.
・白石和仁 他:当院における一年間の健診腹部超音波検査の現状について. 医学検査.65 (1) 103-109:2016.