せんもう
せん妄
意識障害の一種で、程度の差はあるが一時的な混乱状態におちいってしまった状態。高齢者に起こりやすい
16人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2021.04.21

せん妄について知っておくとよいこと

せん妄は高齢者に起きやすく、超高齢社会においては多くの人に知って欲しい病気です。せん妄が心配な人や、すでに診断を受けた人、またその家族が知っておくと良いことを紹介します。

1. どんな症状があったら医療機関に相談するとよいか

早期発見は難しいことが多いものの、特徴をよく知っておくことでせん妄に早く気づけます。

周りの人が気付きやすいのは、暴言や暴力などの症状が現れたときです。急激な変化に何が起こったのかと驚くかもしれません。これは対処が必要な状態ですので、できるだけ早めに受診をしてください。

一方で、話しのつじつまが合わなかったり、もの忘れしやすかったりと、一見わかりづらい症状としてあらわれることもよくあります。さらには、だまり込んだり塞ぎがちになったりといった、一時的な気分の落ち込みのような症状が、実はせん妄であることもあります。症状がはっきりしない場合には受診をためらう人も思いますが、少しでも普段と違うと感じれば、遠慮なくお医者さんに相談してみてください。

どこに相談したらよいのか

平日の日中であれば一般内科や神経内科などに、夜間や休日は救急外来などに受診してください。せん妄の原因を調べたうえで、その原因次第で適切な診療科を紹介してくれます。

2. せん妄と診断を受けた人やその家族へ

せん妄はときに激しい暴言や暴力としてあらわれることもあり、困惑する家族が少なくありません。また、医療機関などでは身体拘束をされることがあり、家族はそれを見て不安になるかもしれません。そこで、患者さんの家族に知っておいてほしい、せん妄という病気の見通し、身体拘束の必要性について、ここで紹介します。

せん妄は治るのか

原因がなくなれば、せん妄の症状はなくなってきます。たとえば、外科手術が原因でであれば、手術やその後の治療が終わって退院する頃には、せん妄から回復していることが多いです。また、細菌性肺炎などの感染症によるせん妄でも、感染症がおさまればせん妄もおさまります。

アルコール依存症では、断酒後1週間くらいはせん妄が続く可能性がありますが、そこを過ぎれば大抵はおさまります。さらに、その後断酒を続けることで、せん妄はまず起こらなくなります。ただし、お酒をやめたり飲んだりを繰り返しているうちは、お酒の効果が切れるたびに、せん妄が起きてしまいます。

身体拘束はどんなときに必要なのか

せん妄の症状が激しい場合、本人や周りの人が危険に晒されることがあります。たとえば、興奮状態になってベッドから落ちて怪我したり、暴力的になってしまうことも珍しくありません。そのような時には、止むを得ず手足や身体をベッドに固定(身体拘束)することがあります。ただし、本当に拘束が必要な状態なのかは定期的に確認し、できるだけ必要最小限に行われるよう工夫をしています。

とはいえ、身体拘束は苦痛を伴うことであり、家族にとっても抵抗を感じるものと思います。身体拘束の必要性について疑問に思った時は、遠慮なくスタッフに身体拘束をしている理由を聞いてみてください。

もし、せん妄のリスクが高いとの判断で身体拘束となっているとしたら、予防策を試みることでリスクを下げることができます。たとえば、できるだけ面会を増やし、患者と日常会話をして安心感を与えてあげる、普段使っている身の回り品を持ってきて見えるところに置いてあげる、といった方法です。

このように、せん妄のリスクを下げることが、身体拘束の回避につながります。なお、こちらで「せん妄予防のために周りの人ができること」について詳しく説明していますので、もっと知りたい人は参考にしてください。

参考文献

・井上真一郎/著, せん妄診療実践マニュアル. 羊土社, 2019
・Delirium:prevention,diagnosis and management. National Institute for Health and Care Exelence.(2020.6.22閲覧)