せんもう
せん妄
意識障害の一種で、程度の差はあるが一時的な混乱状態におちいってしまった状態。高齢者に起こりやすい
16人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2021.04.21

せん妄の検査について:問診など

せん妄かどうか調べるには問診と身体診察が重要です。意識障害の原因を調べる検査として、血液検査や頭部CTMRI検査などを受けることもあります。

1. 問診

問診では症状や背景について詳しくお医者さんに伝えてください。せん妄になると思考力が低下するため、本人から状況を伝えるのが難しくなります。家族や介護者などの周りの人が協力して伝えるようにしてください。問診でよく聞かれる質問を紹介します。

【症状について】

  • 意識障害があるか
  • もの忘れがあるか
  • 夜眠れているか
  • 幻覚があるか
  • 不安、怒りなどの感情の変化があるか
  • 痛み、便秘、排尿困難などの症状があるか

【背景について】

  • アルコールを飲んでいるか(量や頻度など)
  • 今までどんな病気にかかったか
  • 最近どんな薬を使用したか

服用した薬については薬品名だけでなく、いつから、どれくらいの量を使っていたかも伝えてください。お薬手帳を持参すると、より正確に情報を伝えやすくなります。

2. 身体診察

身体診察とはお医者さんが直接身体の様子を調べることです。せん妄が疑われる人によく行われるバイタルサインの確認と神経診察について説明します。

バイタルサイン

意識状態、脈拍数、呼吸数、体温、血圧などのことで、日本語に直訳すると「生命徴候」となります。せん妄では意識状態の確認が重要です。呼びかけたり身体を揺さぶったりして、はっきりと受け答えができるかどうかの確認をします。せん妄で起こる意識障害は比較的軽いことが多く、受け答えがまったくなくなるほど意識が悪くなることはあまりありません。

神経学的診察

認知機能、知覚、筋力などについて調べる診察です。計算問題や記憶力を確かめる質問が出され、これに答えることで認知機能障害の有無を調べることができます。また、身体を調べることで、知覚の異常や筋力低下を見つけることができます。脳卒中や脳炎といった、せん妄と似た症状があらわれる病気を見つけるのに役立ちます。

3. 血液検査

せん妄の原因となるような身体の異常を調べることができます。たとえば、下記の血液検査がよく行われます。

  • 炎症反応(白血球数やCRP
  • 貧血の検査(赤血球数やヘモグロビン
  • 肝臓の検査(AST、ALT、AFP、γGT、T-Bil)
  • 腎機能や脱水を調べる検査(BUNやクレアチニン)
  • 電解質のバランスを調べる検査(Na、K、Cl)
  • ビタミンの検査(ビタミンB1など)
  • 甲状腺の検査(TSH、FT4、FT3)
  • 糖尿病の検査(血糖値、HbA1c)
  • 栄養不足の有無を調べる検査(アルブミン)

一方で、血液検査をしても見つかりにくい病気として、脳の病気(脳卒中脳腫瘍など)、胃腸の病気(胃潰瘍や大腸腫瘍など)、尿路の病気(結石、尿閉など)があります。これらを見つけるためには画像検査や内視鏡検査などが必要になります。

4. 頭部CT・MRI検査

CT検査では放射線を、MRI検査では磁力を利用して、頭の断面を映し出します。意識障害を生じる病気には、せん妄の他に脳卒中脳腫瘍なども挙げられますが、それらを見分けるために頭部CT・MRI検査が使われます。

参考文献

・井上真一郎/著, せん妄診療実践マニュアル. 羊土社, 2019
・Delirium:prevention,diagnosis and management. National Institute for Health and Care Exelence.(2020.6.22閲覧)