せん妄の検査について:問診など
せん妄かどうか調べるには
1. 問診
問診では症状や背景について詳しくお医者さんに伝えてください。せん妄になると思考力が低下するため、本人から状況を伝えるのが難しくなります。家族や介護者などの周りの人が協力して伝えるようにしてください。問診でよく聞かれる質問を紹介します。
【症状について】
- 意識障害があるか
- もの忘れがあるか
- 夜眠れているか
- 幻覚があるか
- 不安、怒りなどの感情の変化があるか
- 痛み、便秘、排尿困難などの症状があるか
【背景について】
- アルコールを飲んでいるか(量や頻度など)
- 今までどんな病気にかかったか
- 最近どんな薬を使用したか
服用した薬については薬品名だけでなく、いつから、どれくらいの量を使っていたかも伝えてください。お薬手帳を持参すると、より正確に情報を伝えやすくなります。
2. 身体診察
身体診察とはお医者さんが直接身体の様子を調べることです。せん妄が疑われる人によく行われる
バイタルサイン
意識状態、脈拍数、呼吸数、体温、血圧などのことで、日本語に直訳すると「生命徴候」となります。せん妄では意識状態の確認が重要です。呼びかけたり身体を揺さぶったりして、はっきりと受け答えができるかどうかの確認をします。せん妄で起こる意識障害は比較的軽いことが多く、受け答えがまったくなくなるほど意識が悪くなることはあまりありません。
神経学的診察
認知機能、知覚、筋力などについて調べる診察です。計算問題や記憶力を確かめる質問が出され、これに答えることで認知機能障害の有無を調べることができます。また、身体を調べることで、知覚の異常や筋力低下を見つけることができます。脳卒中や脳炎といった、せん妄と似た症状があらわれる病気を見つけるのに役立ちます。
3. 血液検査
せん妄の原因となるような身体の異常を調べることができます。たとえば、下記の血液検査がよく行われます。
炎症 反応(白血球 数やCRP )- 貧血の検査(
赤血球 数やヘモグロビン ) - 肝臓の検査(AST、ALT、AFP、γGT、T-Bil)
腎機能 や脱水を調べる検査(BUNやクレアチニン)電解質 のバランスを調べる検査(Na、K、Cl)ビタミン の検査(ビタミンB1など)甲状腺 の検査(TSH、FT4、FT3)- 糖尿病の検査(
血糖 値、HbA1c) - 栄養不足の有無を調べる検査(アルブミン)
一方で、血液検査をしても見つかりにくい病気として、脳の病気(脳卒中、脳腫瘍など)、胃腸の病気(胃潰瘍や大腸
4. 頭部CT・MRI検査
参考文献
・井上真一郎/著, せん妄診療実践マニュアル. 羊土社, 2019
・Delirium:prevention,diagnosis and management. National Institute for Health and Care Exelence.(2020.6.22閲覧)