脊椎圧迫骨折の基礎知識
POINT 脊椎圧迫骨折とは
背骨は骨がいくつも重なり合っています。その中の背骨の1つが圧迫されて押しつぶされてしまうことを脊椎圧迫骨折と言います。高齢の女性に多く見られ、「寝たきり」の原因になります。脊椎圧迫骨折が起こると背中に強い痛みを感じ、痛みのために動作が難しくなります。また、重症例になると、背骨の中の神経を圧迫して、脚の麻痺やしびれを起こすこともあります。レントゲン検査やCT検査、MRI検査によって診断され、骨折が見つかった場合はコルセットを使って安静にし、痛みを和らげるために鎮痛剤が使われます。圧迫骨折の程度が重い場合や悪化する可能性がある場合は手術を行い、骨の固定や補強が行われます。予防には骨粗鬆症の治療をしたり、骨に負担がかからないような姿勢や動きをすることが有効です。脊椎圧迫骨折が心配な人は整形外科を受診してください。
脊椎圧迫骨折について
脊椎 (背骨 )が押しつぶされるように変形してしまった状態- 女性に多い
- 50歳-69歳で20%
- 70歳代で25%
- 80歳代で43%
- 男性では50歳以上で12.5%の人に見られる
- 分類
- 外傷性骨折:転落して腰を打つなど強い外力による骨折
病的骨折 :骨粗しょう症や、がん の背骨への転移 が原因で、重いものを持った際や、くしゃみなど、ごくわずかな外力によって起きる骨折
- 寝たきりの原因の第3位
脊椎圧迫骨折の症状
- 主な
症状 - 骨折直後の時期には強い痛みがある
- 背中、腰など骨折のある部位が痛む
- 起き上がったり歩くのが辛くなる
- 重症例では脊髄損傷を起こし、脚の
麻痺 やしびれが生じる場合がある
- 時間が経ったあとの症状
- 骨折が複数箇所に生じると背中が丸くなり、身長が低くなる
脊椎圧迫骨折の検査・診断
レントゲン 検査:骨折の状態を調べる- 必要であれば
CT 検査やMRI 検査などの検査を行う場合もある
- 必要であれば
脊椎圧迫骨折の治療法
- 主な治療法
保存療法 :コルセットなどの専用装具を使って安静にする。通常では、3-4週で骨が形成され痛みが治まってくる- 薬物療法
NSAIDs :痛み止め- アセトアミノフェン:痛み止め
- カルシトニン:骨の吸収を抑える
ホルモン で、骨粗しょう症がある場合に悪化を防ぐため使うことがある
- 手術:高度の圧迫骨折や、骨折部が更に変形する可能性がある場合、痛みがずっと残る場合には手術が必要になることがある
脊椎 固定術:脊椎をプレートで固定する- セメント固定術:つぶれた脊椎を固めて、もとの形に戻す
- 骨折を治す目的ではなく、骨折によって大事な神経(
脊髄 )が傷つくことを防ぐために行われる
- 予防、再発予防方法
- 骨折した骨に負担をかけないような姿勢、動き方をすることで再発を防ぐことができる
- 手術で悪化を防ぐことができる
- 骨粗しょう症の薬物治療を行う
- 長期的な経過
- 神経は一度働きが落ちると回復することはない
- 骨折した骨は元の状態に戻ることは難しい
脊椎圧迫骨折に関連する治療薬
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)
- 体内で炎症などを引きおこす体内物質プロスタグランジンの生成を抑え、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げる薬
- 体内で炎症や痛み、熱などを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGは体内でCOXという酵素などの働きによって生成される
- 本剤はCOXを阻害することでPGの生成を抑え、痛みや炎症、熱などを抑える作用をあらわす
- 薬剤によっては喘息患者へ使用できない場合がある
- COX阻害作用により体内の気管支収縮を引きおこす物質が多くなる場合がある
- 気管支収縮がおきやすくなることよって喘息発作がおこる可能性がある
脊椎圧迫骨折の経過と病院探しのポイント
脊椎圧迫骨折が心配な方
脊椎圧迫骨折は、転落などの怪我によって起こる場合や、骨粗しょう症などの状態で重いものを持った際、また、くしゃみなど、ごくわずかな外力によって起こる場合があります。
背中の強い痛みがあったり、背中が真っ直ぐにならず曲がっていたりといった症状がご心配な方は、まずは整形外科クリニックの受診をお勧めします。検査には、レントゲン、CT、MRIなどが実施されます。痛みの様子と合わせてレントゲンで診断することも多くありますが、急性の圧迫骨折があるかどうかはっきり診断するためにはMRI検査が行われます。ただし多くのクリニックなどではMRIがないので症状と合わせてレントゲンで診断することがほとんどです。
脊椎圧迫骨折でお困りの方
基本的には、コルセットなどの専用装具を使って、ベッド上で安静にし、骨が形成されるのを待つ保存療法が主体となります。通常では、3-4週で骨が形成され、痛みが治まってきます。痛みがある間は痛み止めの服用を行います。
脊椎圧迫骨折の中でも、破裂骨折といって神経を障害するような場合では、緊急手術が必要となります。その他にも、骨折部の変形が進行する可能性が高い場合や、痛みがずっと残る場合には手術が必要になります。脊椎を金属のプレートで固定する手術や、つぶれた脊椎にセメントを入れて、もとの形に戻す手術を行います。骨粗しょう症が原因で骨折を起こした場合は、骨粗しょう症の悪化を防いで骨を強くする薬を服用することが勧められます。
また、骨折した骨が元の状態に戻ることは難しいため、長期的にリハビリが必要になります。痛みがよくなるにつれて、徐々に活動範囲を広げ、安定して自宅での生活が行えることがリハビリの目標です。長期的な取り組みが必要となるため、急性期病院に入院している場合は、回復期病院に転院することになるでしょう。
患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を探す上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、土日もリハビリをやっているかといった点は、回復期の病院を探す上でのポイントとなります。
自宅復帰後は転倒しないように気をつけることだけでなく、自宅内を転びにくい、段差のない環境にすることも重要です。