しんけいこうしゅ(ぐりおーま)
神経膠腫(グリオーマ)
脳にある細胞から発生する脳腫瘍の一つ。脳腫瘍の中では、転移性脳腫瘍についで2番目に多く、悪性度も様々。
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最終更新: 2021.09.24
神経膠腫(グリオーマ)の基礎知識
POINT 神経膠腫(グリオーマ)とは
悪性の脳腫瘍の1つです。 神経膠腫は神経膠腫細胞から発生した腫瘍のことです。 悪性度は4段階に分かれており、数字が大きくなるほど、悪性度が高くなります。腫瘍が小さなときには症状が現れることは多くはありませんが、大きくなると頭痛や吐き気、意識障害などが現れます。また、腫瘍ができた場所によっては手足が動かしづらくなる、喋りづらくなる、視野が狭くなるなどの症状が現れます。神経膠腫が疑われる人には頭部CT検査や頭部MRI検査などが行われます。診断を確定するために、腫瘍の一部分を切り取って顕微鏡でみる検査(病理検査)が行われることがあります。治療の中心は手術zになりますが、悪性度に応じて、放射線治療や抗がん剤治療(化学療法)が行われます。神経膠腫で当てはまる症状があり、心配な人は脳神経外科を受診してください。
神経膠腫(グリオーマ)について
神経膠腫(グリオーマ)の症状
神経膠腫(グリオーマ)の検査・診断
- 画像検査:
腫瘍 の大きさ、位置などを調べる頭部CT検査 頭部MRI 検査- 腫瘍の周りの脳の機能や、腫瘍の成分を調べたりもできる
PET検査 SPECT検査 - 画像検査は、
造影 剤を投与して検査することもある
頭部血管造影検査 :必要に応じて手術の前におこなわれることが多い- 組織検査
- 手術でとった腫瘍の一部を、組織の種類や
悪性度 について、顕微鏡などを用いて調べる - 切除した腫瘍を顕微鏡でよく観察し、「腫瘍の種類」と「悪性度(グレード)」を決定する
- 手術でとった腫瘍の一部を、組織の種類や
- 腫瘍の遺伝子検査
- 腫瘍にある遺伝子の異常を見つけることで、神経膠腫の種類の分類や治療方法の選択に役立つことがあります
- 血液検査や
CT 、PETを用いて、体の他の部分に腫瘍がないかを調べることもある
神経膠腫(グリオーマ)の治療法
- 基本的な治療方針
- できる限り手術をする
- なるべく
腫瘍 を残さないように、しかし正常な脳を傷つけてしまわないように切除する
- 手術で腫瘍を大きく取ると、正常な脳機能へのダメージも増える
- 手術時の
合併症 を防ぐ(脳機能を守る)ことが重要 - なるべく正常な脳機能を傷つけないように、「
覚醒下手術 」、「術中MRI 」などを行うこともある- 覚醒下手術:通常
全身麻酔 をしながら手術を行うため、患者は手術中意識がない状態である。覚醒下手術では、手術中に麻酔を覚まして、患者が起きた状態で手術を続ける。喋り続けてもらったり、手足を動かし続けてもらったりすることで、正常な脳を傷つけずにギリギリまで腫瘍を取りきることができる - 術中MRI:脳腫瘍と正常な脳の境目は、見た目ではなかなか分かりにくいため、手術中に
MRI を撮影することで、腫瘍の取り残しがあるかが分かる。術中MRIを組み合わせることで、腫瘍の全摘出に近づける
- 覚醒下手術:通常
- 手術時の
- 薬物療法:テセルパツレブという薬を腫瘍に注入する
- グレードごとの大まかな治療方針
- グレード1:そのまま様子をみるか、症状があったり大きくなったりするようであれば手術で全摘出。手術で全て取りきれば、治ることが多い
- グレード2:手術で全て取りきれば、治ることが多い。腫瘍が残った場合は、
放射線療法 や化学療法 を行うことがある - グレード3、4:手術の後、放射線療法と化学療法
- ただし神経膠腫の治療は、年々進化しており、施設や医師によって細かい治療方針も異なる
5年生存率 - グレード1:90%〜100%
- グレード2:50%〜70%
- グレード3:20%〜40%
- グレード4:10%以下
神経膠腫(グリオーマ)に関連する治療薬
アルキル化剤
- 細胞増殖に必要なDNAに作用しDNA複製阻害作用やDNAの破壊作用により抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し転移することで細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要となる
- 本剤は薬剤中のアルキル基というものがDNAに結合することで抗腫瘍効果をあらわす
分子標的薬(ベバシズマブ〔抗VEGFヒト化モノクローナル抗体〕)
- がん細胞の増殖に必要なVEGFという物質の働きを阻害し血管新生を抑えることで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- がん細胞の増殖には、がんに栄養を送る血管の新生が必要となり血管内皮増殖因子(VEGF)という物質が血管内皮の増殖や血管新生に関与する
- 本剤はVEGFに結合しVEGFの働きを阻害することで腫瘍組織の血管新生を抑制する作用をあらわす
- 本剤は他の抗がん薬の効果を高める作用もあらわす
- 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる