ちゅうすうしんけいげんぱつあくせいりんぱしゅ
中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)
血球の一種であるリンパ球から出来たがん。脳にできる悪性リンパ腫
14人の医師がチェック 190回の改訂 最終更新: 2022.10.24

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)の基礎知識

POINT 中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)とは

リンパ球は血液中を流れる白血球の一種であり、免疫に関わる細胞です。リンパ球に由来する悪性腫瘍(がん)のことを悪性リンパ腫と呼びます。悪性リンパ腫には様々なタイプがありますが、中枢神経原発悪性リンパ腫はそのうちのひとつで、脳にできるので脳腫瘍の一つとして分類されることもあります。症状は、脳のどこにリンパ腫ができるかによって異なりますが、手足のしびれや動かしにくさ、言葉の出にくさ、意識がぼーっとする、けいれんする、などが挙げられます。診断のために脳腫瘍を手術で摘出したものを顕微鏡で観察します。抗がん剤や放射線を使って治療します。中枢神経原発悪性リンパ腫は血液内科や脳神経外科で診療が行われます。

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)について

  • 脳腫瘍の一種
    • 血球の一種であるリンパ球が脳の中で異常に増える病気。脳にできる悪性リンパ腫
  • 以下のような場合に発症しやすい
    • 中高年(50歳以上の人が全体の80%以上を占める) 
    • 免疫力が落ちている人
      • 臓器移植を受けた人
      • 免疫抑制薬を使っている人
      • HIV感染症患者  など
  • 脳腫瘍のうち約3%を占める、比較的まれな脳腫瘍
  • 腫瘍が大きくなるスピードが早いので、発見され次第、診断と治療を速やかに行う

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)の症状

  • 頭蓋内圧亢進症状
    • 頭蓋骨の中の圧が高まることで起こる症状
    • 代表的な症状は頭痛や吐き気
  • 腫瘍のできる場所によりさまざまな症状を出す
    • 手足のしびれ
    • 手足の動かしづらさ
    • 言葉が出づらさ
    • 意識がぼーっとする
    • けいれん発作   など
  • 腫瘍が増大するのが早く、数日や数週間の単位で症状が悪化していく

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)の検査・診断

  • 血液検査
    • 異常な悪性化した血球(リンパ球)がいないかを調べる
  • 骨髄穿刺
    • 腰の骨から骨髄を採取し、異常な悪性化した血球(リンパ球)がいないかを調べる
  • 髄液検査
  • 画像検査:脳腫瘍の有無や位置を確認する
    • 頭部CT検査
    • 頭部MRI検査
    • PET検査
  • 組織検査(生検
    • 手術で切り取った脳腫瘍の一部を、組織の種類や悪性度について、顕微鏡などを用いて調べる
    • 診断の確定を行うための検査
  • 画像検査では似て写り、区別が難しい病気

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)の治療法

  • 治療の原則は放射線療法化学療法抗がん剤
    • 放射線療法と化学療法を行う前に、診断を確定させる必要がある
    • 診断を確定させるために、簡単な手術によって腫瘍生検が行われる
    • 手術で腫瘍をとっても、別の場所に次々とできるため、完治させるための手術は行わない
  • 長期的な経過
    • 放射線療法と化学療法を組み合わせても、平均生存期間は6-7年程度と報告されている
      • ただし病状や治療の効き具合によってばらつきがある
    • 治療効果の高い患者では良くなる(寛解する)可能性もある
  • 一般的な「がん」よりも、化学治療放射線治療が良く効く
    • 抗がん剤を点滴をしても脳には届かないものもあり、一般的なリンパ腫とは治療方針が異なる

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)の経過と病院探しのポイント

中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)が心配な方

中枢神経原発悪性リンパ腫脳腫瘍の一種で、症状は腫瘍の場所によって異なります。頭痛や吐き気、ぼーっとする、性格や行動の異常、けいれん、手足の動きにくさ、言葉の出づらさなどさまざまな症状が出ます。

なかなかご自身で(中枢神経原発の)悪性リンパ腫を疑うことはないと思います。上記の症状のいずれかが出現して困った時に、内科、総合内科、総合診療科、神経内科や脳神経外科のクリニックや病院を最初に受診して、頭のCTやMRIを撮った時に脳腫瘍を指摘され、中枢神経原発悪性リンパ腫も可能性の一つとして疑われることが実際には多いです。

頭のCTやMRIを撮って脳の悪性リンパ腫を疑われた場合には、一定規模以上の病院での入院が必要となるでしょう。大学病院でしたら脳腫瘍の方は多く入院していますし、他にも脳腫瘍の多い一般病院もあります。webで探したり、最初に受診したクリニック、病院の医師にそういった病院を紹介もらうのが良いでしょう。

脳腫瘍は年齢や性別、CTやMRIの画像所見、脳の中での部位からある程度種類を予測できますが、最終的には手術か生検で腫瘍の組織を採取して、病理検査を行うことで診断が確定します。

手術か生検を行って病理検査をしなければ、診断は確定しません。手術を行うか、生検を行うかは、予測される脳腫瘍の種類や部位によって判断されます。手術で取りきれば治る脳腫瘍の可能性が高い場合や、脳の表面に腫瘍があって簡単に手術で取れそうな場合などに手術が選択されます。手術で取ってもあまり意味がない場合や他の治療法(放射線療法や化学療法)でほとんど治る場合、部位が運動や言葉の領域にまたがっていて手術をすれば麻痺や失語が出そうな場合などに生検が選択されます。

上記は脳腫瘍一般についての説明ですが、中枢神経原発悪性リンパ腫が疑われる場合、手術で取りきっても再発するので効果が乏しいこと、脳の奥にできることも多いことから、手術ではなく生検が行われることが多いです。ただしCT、MRIの画像所見だけでは他の脳腫瘍の可能性も残るため、生検にするか、手術にするか悩ましいこともあります。

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中枢神経原発悪性リンパ腫(原発性脳リンパ腫)でお困りの方

中枢神経原発悪性リンパ腫が完治することは難しく、5年生存率は30-40%程度と報告されています。治療法としては、手術で取ってもすぐ再発するためデメリットの方が大きく、化学療法と放射線療法が行われます。

中枢神経原発悪性リンパ腫は年間で人口10万人あたり10-20人程度しか発症しない原発性脳腫瘍のうち、3%を占める程度なので、非常に珍しいです。中枢神経原発悪性リンパ腫の症例が集まり、化学療法(メトトレキセートという抗がん剤を使った治療が一般的)をよく行っていて、かつ放射線療法を受けることのできる病院の脳神経外科で治療を受けることが望ましいです。

メトトレキセートによる化学療法と放射線療法を組み合わせた治療が一般的ですが、効かない場合や再発の場合、他の抗がん剤を使った化学療法が試されています。条件を満たせば最先端の臨床試験に参加することができるかもしれません。詳しくは主治医に尋ねてみてください。

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