ギラン・バレー症候群の診断のために行われる検査について
ギラン・バレー症候群が疑われる人には診断や重症度を調べるために、診察や検査が行われます。多くの場合、ギラン・バレー症候群の診断は診察が中心になりますが、必要に応じていくつか検査を追加で行い、その結果が参考にされます。
1. ギラン・バレー症候群の診察や検査
診察や検査の目的は
問診 - 身体診察
筋電図 検査- 血液検査
髄液検査 - 画像検査
CT 検査- MRI検査
ギラン・バレー症候群の診断では症状や
次からは、それぞれの診察や検査の内容について詳しく説明していきます。
2. 問診
問診は対話方式の診察方法で、患者さんの身体の状況や持病などの背景を確認する目的があります。具体的な例では、患者さんは自分の困っている症状を伝え、お医者さんは患者さんの持病や飲んでいる薬などについて質問します。
ギラン・バレー症候群が疑われる人はお医者さんから次のような質問を受けます。
- どんな症状を自覚するか
- いつから症状を自覚しているか
- 症状が軽くなったり重くなったりする変化はあるか
- 発熱や咳、痰、ひどい下痢などをここ数週間のうちに経験したか
- 現在治療中の病気はあるか
- 定期的に飲んでいる薬はあるか
どの質問も大事ですが、この中でも、「発熱や咳、痰、ひどい下痢などをここ数週間のうちに経験したか」は特に重要な質問です。ギラン・バレー症候群の人の約70%が、発病する1週間から3週間前に感染症が原因だと考えられる症状を経験していることがわかっており、これを先行感染と言います。手や足のしびれや脱力といった症状に加えて、先行感染があると、症状の原因がギラン・バレー 症候群である可能性がより強くなります。
3. 身体診察
身体診察では身体の状態をお医者さんがくまなく調べて、客観的な評価が行われます。問診で得られた情報と合わせて、疑わしい原因がさらに絞りこまれます。身体診察にはいくつか方法がありますが、ギラン・バレー症候群のように手や足のしびれや筋力の低下が主な症状である場合は、神経学的診察が身体診察の中心になります。
神経学的診察では神経の異常の有無を調べます。例えば、筋肉の腱を叩くことによって、その筋肉に司令を出す神経の状態を調べることができます。筋肉の腱を軽く叩くと、意識とは無関係に反射的に筋肉が動き、これを腱反射と言います。正常な腱反射に比べて腱反射が弱かったりなかったりする場合や、反射が強すぎる場合は神経に問題が起きていると判断されます。 また、筋力の低下が疑われる場合は、徒手筋力テストという方法を使って、客観的に筋力の低下の有無や程度が調べられます。
問診と身体診察でギラン・バレー 症候群かどうかの診断ができることが多いですが、判断がつかない場合や他の病気と区別が必要な場合はこの後説明する検査がいくつか行われます。
4. 筋電図検査
末梢神経は脳から出た電気刺激を筋肉に伝えて、身体を動かします。ギラン・バレー症候群のように末梢神経(脳と
5. 血液検査
ギラン・バレー症候群は問診や身体診察によって診断されることが多いですが、それだけでは診断が難しいことがあります。その際には血液検査で調べられる「抗ガングリオシド
6. 髄液検査
髄液検査で調べられる項目と行う目的
髄液検査では髄液の圧や外観、細胞数、糖、蛋白を調べることができます。ギラン・バレー症候群が起こると、髄液に特徴的な異常(蛋白細胞解離:タンパク質は増加するが細胞数は増加しない)が見られることがあるので、診断に役立ちます。ただし、髄液を取り出すための腰椎検査(後述)は身体に負担がかかるため、診察や他の検査で十分に判断がつく場合にはあえて髄液検査を行わないこともあります。
髄液を取り出す方法:腰椎穿刺
髄液を取り出す方法を
腰椎穿刺の詳しい方法については「腰椎穿刺(ルンバール)の目的、方法、合併症」で説明しているので、参考にしてください。
7. 画像検査
明らかにギラン・バレー症候群と診断できる場合は、画像検査が行われることは多くはありません。しかし、手や足のしびれや筋力低下といった症状が現れる別の病気と見分けるためにしばしば行われることがあります。
手や足のしびれや筋力低下の原因は、ギラン・バレー症候群より、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症であることが多いです。椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の可能性があると考えられる場合には、CT検査やMRI検査が行われます。
CT検査や
【参考文献】
・ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013
・「神経内科ハンドブック」(水野美邦/編集)、医学書院、2016