ぎらんばれーしょうこうぐん
ギラン・バレー症候群
細菌やウイルスの感染をきっかけに、免疫が自分の神経を攻撃してしまい、感覚障害や筋力低下が起こる。
12人の医師がチェック 156回の改訂 最終更新: 2023.06.19

ギラン・バレー症候群の治療について

ギラン・バレー症候群は免疫機能の異常によって起こる病気なので、免疫の異常を整える治療(免疫調整療法)が有効です。治療には回復を早める効果や重症化を防ぐ効果があります。また、後遺症がある場合には、回復に向けてリハビリテーションが行われます。

1. ギラン・バレー症候群の治療法

ギラン・バレー 症候群の主な治療は免疫調整療法とリハビリテーションです。

  • 免疫調整療法
    • 免疫グロブリン療法
    • 血液浄化療法
  • リハビリテーション

ギランバレー症候群は免疫機能の異常が原因の病気なので、免疫機能を整える治療(免疫調整療法)が有効です。免疫調整療法には「免疫グロブリン療法」と「血液浄化療法」の2つがあります。

また、後遺症がある場合は、回復に向けてリハビリテーションを行います。

それぞれの治療について次から詳しく説明します。

2. 免疫調整療法

ギラン・バレー症候群の免疫調整療法は「免疫グロブリン療法」と「血液浄化療法」の2つです。免疫調整療法には症状の重症化を防いだり、回復を早めたりする効果があります。免疫グロブリン療法と血液浄化療法の効果はほとんど同等だと考えられているので、患者さんの身体の状態や病気の状態を鑑みてどちらかが選ばれます。

どちらでも可能と判断された場合は、患者さんの身体に負担をかけることなく行うことができる免疫グロブリン療法が選ばれることが多いです。

免疫グロブリン療法

免疫グロブリン(Immunoglobulin:Ig)は免疫機能を担う物質で血液や体液に含まれています。免疫グロブリン製剤は献血で得られた血液を基にして作られるもので、免疫グロブリンの一種であるIgGという物質が含まれています。免疫グロブリン療法では免疫グロブリン製剤を点滴で身体の中に入れます。1回分の点滴には数時間かかり、5日間続けて行われます。

血液浄化療法

血液浄化療法は血液から病気の原因と考えられる不要な成分を取り除く治療のことで、ギラン・バレー症候群では免疫機能を担っている物質を含んだ成分を取り除きます。免疫グロブリン製剤と同様に、ギラン・バレー症候群の回復を早めたり重症化を防いだりする効果があります。

具体的には、血液を抜き出すために太い管を血管に入れ抜き出した血液から不要と考えられる成分を機械で取り除いて、身体に戻します。1回の治療には数時間かかり、治療は1日おきに数回行われます。

3. リハビリテーション

ギラン・バレー症候群によって起こった症状が長く残ること(後遺症)があります。後遺症を軽くしたり、もとの状態に近づけたりするために、リハビリテーションは欠かすことができません。リハビリテーションの目的やその実際について説明します。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションの目的は、残った症状を軽くしたり機能を回復に向かわせたりすることです。リハビリテーションを行うことで、一人ひとりの環境に合ったよりよい生活を送れるようになることが期待できます。

リハビリテーションの実際

後遺症は軽い人から重い人までさまざまです。後遺症の状態に合わせて、リハビリテーションもさまざまな形で行われます。

リハビリテーションの種類には、次のようなものがあります。

  • 理学療法
    • 歩く
    • 起きる
    • 座る
    • 立つ など
  • 作業療法
    • 食事をする
    • 文字を書く
    • 着替えをする
    • 掃除をする など
  • 言語聴覚療法
    • 話す
    • 飲み込む

理学療法では日常生活の基本的な動作のリハビリテーションが行われ、作業療法ではより細かな動きが要求される動きが訓練されます。また、話すことに加えてものを飲み込む動作に特化したリハビリテーションを言語聴覚療法と言います。後遺症の程度も種類も一人ひとりで異なるので、その状態に合わせてリハビリテーションのメニューが考えられます。

リハビリテーションは主に医療機関で行われますが、日常生活の中でも行うことができます。例えば、施設で箸を使う訓練がはじまったのであれば、それを自宅の食卓でも取り入れるのはリハビリテーションの1つです。リハビリテーションのスタッフに、日常生活への組み込み方について相談してみると、より上手にリハビリテーションが行えます。

4. ギラン・バレー症候群の入院期間や治療費について

ギラン・バレー症候群のように入院期間が長引くことがある病気では、入院期間や治療費が気になるものです。ここでは「入院期間」と「治療費」の2つについて説明していきます。

入院期間について

入院期間は病気の重さや患者さんの身体の状態によって大きく変わるので、一概には言えません。1週間程度の入院で済むこともあれば、数ヶ月の入院が必要になることもあります。入院期間は気になる情報ですが、お医者さんからははっきりとした期間の説明がないこともあります。

ギラン・バレー症候群は進行することがある病気のため、治療を開始後に病状が悪化することがあります。そのため、治療を始めたばかりの時期にはお医者さんも具体的な入院期間を明言しにくい側面があります。はっきりとした説明がないと不安になるかもしれません。不安に思うことは遠慮なくお医者さんや看護師さんに話してみてください。一つひとつ不安を解消していくことが精神面の安定に大切です。

治療費について

治療費は入院期間によるところが大きいので、入院期間と同様に一概には言えません。入院期間が長期になると費用が高額になり負担額が気になるところですが、高額療養費制度をつかうことで自己負担額を抑えることができます。

■高額療養費制度

高額療養費制度とは家計に応じて医療費の自己負担額に上限を決めている制度です。医療機関の窓口で医療費の自己負担額を一度支払ったあとに、月ごとの支払いが自己負担限度額を超えた部分について、払い戻しがあります。

たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。

仮にこの人の医療費が1,000,000円かかったとします。このうち3割が自己負担なので、窓口では300,000円払うことになります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。ですので、払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。 所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-842,000円)×1%まで幅があります。

高額療養費制度については厚生労働省のホームページ内の「高額療養費制度を利用される皆様へ」やこちらの「コラム」も参考にしてください。

5. ギラン・バレー症候群の治療ガイドラインについて

ギラン・バレー症候群のガイドラインとしては神経内科学会によって作成された「ギラン・バレー 症候群診療ガイドライン」があります。ガイドラインが作られる目的は、治療の成績や安全性の向上です。過去の治療結果などを根拠に、最適だと考えられる検査や治療の方法が示されているので、ガイドラインを踏まえて検査や治療を計画することで、より成功率が高い治療方法を選ぶことができます。

一方で、ガイドライン通りに治療することが最適だとは限りません。医療は日進月歩で次々と有効な治療がみつかります。進歩についていくために、ガイドラインも数年に1回は改訂が行なわれてはいます。しかし、ガイドラインの改訂前に新しい治療が浸透することもあれば、不明だった治療の効果が明らかになって治療法が変わることもあります。また、ガイドラインは患者さんの一人ひとりの身体の違いを鑑みて作られているわけではありません。一人ひとりに最適な治療を行えるように、最新の知見や患者さんの状態を加味して、アレンジして使うことでガイドラインはよりその力を発揮することができます。

【参考文献】

高額療養費制度を利用される皆さまへ
ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013
・「神経内科ハンドブック」(水野美邦/編集)、医学書院、2016