2017.02.22 | ニュース

体が麻痺する病気「ギランバレー症候群」とマイコプラズマと免疫の関係

189人の大人と24人の子どもの検査から
from Annals of neurology
体が麻痺する病気「ギランバレー症候群」とマイコプラズマと免疫の関係の写真
(C) vschlichting - Fotolia.com

細菌などに感染したあとにギランバレー症候群が現れる例が知られています。原因は不明ですが、感染に対する免疫反応が関係すると考えられています。マイコプラズマに対する抗体の関与が検証されました。

ギラン・バレー症候群は、手足が麻痺して力が入りにくくなるなどの症状を特徴とする原因不明の病気です。症状が出る場所や重症度は人によってかなり差があります。

完全に回復する人も、後遺症が残る人もいます。適切に治療すれば多くの人は日常生活ができる程度まで回復します。

ギラン・バレー症候群の症状が始まる前の体調を問診すると、かなりの割合で直前数週間以内に風邪や下痢などの感染症の症状があったことが見つかります。

感染症に続いてギラン・バレー症候群が起こることから、感染に対する体の反応がギラン・バレー症候群の原因に関わっていると考えられています。つまり、体に侵入してきた異物を排除するための免疫システムが異常に働いて自分自身の体を攻撃してしまう自己免疫」というしくみが関係すると考えられています。

 

肺炎などを起こす細菌マイコプラズマギラン・バレー症候群の関係について調べた研究を紹介します。オランダの研究班が専門誌『Annals of Neurology』に報告したものです。

マイコプラズマ・ニューモニエ(肺炎マイコプラズマ)は、もともと健康な人に肺炎などの病気を起こす代表的な原因です。マイコプラズマ肺炎は子どもで特に多いとされますが、大人でもよくあります。

マイコプラズマに感染したあとにもギラン・バレー症候群が起こることがあります。

この研究では、ギラン・バレー症候群の患者の体内で作られている抗体を調べています。抗体とは免疫が特定の異物を攻撃するために働く物質です。抗体が作られることで体は異物と有効に戦うことができます。その一方で、抗体が自己免疫として働き、病気の原因になる場合もあります。

ギラン・バレー症候群が現れた189人の成人と24人の子どもが対象とされました。対象者は、ギラン・バレー症候群ではない人たち(対照群)と比較して、血液に含まれる抗体の量に違いがあるかを検査されました。

検査ではマイコプラズマに対する抗体と、GalCという体内物質に対する抗体を測定しました。

GalC(ガラクトセレブロシド)は神経組織に含まれている物質です。

 

検査の結果、ギラン・バレー症候群患者の9%から抗GalC IgG抗体というタイプの抗体が見つかりましたが、ギラン・バレー症候群ではない対照群からは見つかりませんでした。

GalCに対する抗体を持っていた人は、マイコプラズマに対する抗体も持っている傾向がありました。

研究班は検査結果の解釈として「マイコプラズマ・ニューモニエの感染はギラン・バレー症候群と関連し[...]抗GalC抗体を呼び起こす。抗GalC抗体の中でも特に抗GalC IgG抗体はギラン・バレー症候群病態発生に寄与しているかもしれない」と述べています。

 

マイコプラズマギラン・バレー症候群を結び付けているかもしれない物質についての研究を紹介しました。

ギラン・バレー症候群には有効な治療がありますが、ほぼ全員の患者を完治させるとは言い難いのが現状です。また、マイコプラズマなどに感染した人の中で誰にギラン・バレー症候群発症するかは予測できません。

ギラン・バレー症候群が現れるしくみは正確にはわかっていません。関係がある物質の中から、将来特に重要なものが特定されれば、効果的な治療の開発に結び付くかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Mycoplasma pneumoniae triggering the Guillain-Barré syndrome: A case-control study.

Ann Neurol. 2016 Oct.

[PMID: 27490360]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。