しきゅうけいがん
子宮頸がん
子宮の入り口(子宮頚部)にできるがん。HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が主な原因
9人の医師がチェック 226回の改訂 最終更新: 2024.05.29

子宮頸がんの検査について

子宮頸がんの人に行われる診察や検査には、主に2つの目的があります。1つは「子宮頸がんかどうかの診断すること」、もう1つは「子宮頸がんのステージを調べること」です。このページでは子宮頸がんの診察や検査について説明します。

1. 問診

問診はお医者さんと患者さんが主に対話形式で行う診察のことです。患者さんの「身体の状態」や「背景」を把握する目的があります。具体的には、患者さんが困っている症状をお医者さんに伝えて、お医者さんからは背景となる持病や、服用している薬などについて詳しい質問を受けます。

【子宮頸がんを疑われる人が受ける質問の例】

  • 症状について
    • どんな症状を自覚するのか
    • 自覚症状はいつからあるのか
    • 症状が軽くなったり重くなったりすることはあるのか
  • 月経(生理)について
    • 生理を初めて経験したのは何歳か
    • 妊娠や出産は何回経験したか
  • 妊娠・出産について
  • 持病や過去にかかった病気について
  • 内服歴について
  • 血縁者の病気について

子宮頸がんは無症状のうちにがん検診や健康診断でみつかることがあります。一方で、「性器からの出血」「おりものの異常(量の増加・色調の変化・匂いの変化)」といった症状をきっかけに見つかる人もいます。これらの症状は子宮頸がんに限った症状ではなく、他の病気によっても現れるものです。お医者さんが原因をしぼりこみやすくするためには、症状や背景を詳しく伝えることが鍵になります。上の例を参考に問診の答えを準備してみてください。

2. 身体診察

お医者さんが患者さんの身体の状態を直接くまなく調べることを身体診察と言います。身体診察を行うことで、患者さんの身体に起こっている異変を把握しやすくなります。

「視診(身体の外見を観察すること)」や、「触診(身体を触って痛みの有無や硬さを調べること)」「聴診(聴診器を使って身体の中の音を聞くこと)」などが身体診察に含まれます。

子宮頸がんが疑われる人には内診(膣・子宮・卵巣といった女性器の診察)が重要です。内診によって、女性器の状態を確認することができるので、がんの有無の判断材料の1つになります。がんがある状態では、内診によってがんの広がりが確認できます。また、子宮頸がんが進行すると、子宮に接している直腸に広がることがあります。がんが直腸に広がっている疑いがある人には、直腸診(お医者さんが肛門から指を入れて直腸の状態を調べること)が行われます。

3. コルポスコープ検査

コルポスコープは拡大鏡の一種です。子宮頸部の粘膜表面を拡大して観察することで、がんが疑われる部分を見つける際に役立ちます。コルポスコープで観察することをコルポ診と呼ぶことがあり、結果はその後組織診を行うかどうかの判断材料になります。

4. 病理検査

病理検査とは身体の細胞や組織を一部取り出して顕微鏡で観察する検査です。細胞レベルで確認できるので、肉眼でみるよりがんの有無を判断しやすくなります。病理検査には「細胞診」と「組織診」がありますが、内容や目的が少し異なるので個別に説明します。

細胞診

がん細胞には「形がいびつ」、「核(細胞の真ん中にある構造物)が大きい」といった正常な細胞にはない特徴があります。細胞診では、ブラシの付いた綿棒のようなものを膣から挿入して子宮頸部の表面の細胞をこすって取り出します。この細胞に薬で色をつけて異常の有無を観察します。細胞診は子宮頸がんが疑われる人に加えて、子宮頸がん検診でも行われます。検診では20-69歳を対象に2年毎の細胞診検査が推奨されています。

組織診

組織診では、がんが疑われる部分を小さく切り出され、細胞診と同じく薬品で色をつけて顕微鏡で観察されます。細胞診でがんが疑われた人が対象になり、細胞診より取り出される組織の量が多いので、診断に十分な情報が得られます。このため、組織診の結果をもとにして子宮頸がんの診断が確定されます。

組織診はコルポスコープでがんが疑われる場所を探しながら行われます。疑わしい箇所が見つかれば、その部分をつまみだしたり、切り取ったりします。この方法は狙いを定めて組織を取り出すことから「狙い組織診」と呼ばれます。出血や痛みがありますが、外来で受けることができます。痛みや出血は数日で気にならなくなりますが、長引くときには検査を受けた医療機関で相談してください。

5. ウイルス検査(HPV-DNA)

子宮頸がんの多くはヒトパピローマウイルスの持続感染によって起こると考えられています。ヒトパピローマウイルスには100を超えるタイプがありますが、子宮頸がんを起こしやすいタイプ(高リスク型HPV:16、18、31、33、45、52、58型など)がいくつか分かっています。ウイルス検査では、専用のブラシを用いて子宮頸部の細胞を取り出して高リスク型HPV感染の有無を調べます。子宮頸部が前がん状態(がんになる手前の状態)でかつ高リスクHPVが見つかった人には、数ヶ月ごとに細胞診が提案され、進行の有無が調べられます。検診では30-60歳を対象に5年毎のウイルス検査が推奨されています。

6. 画像検査

画像検査は身体の中の状態を画像化することができ、がんの広がりを調べるのに適しています。画像検査にはいくつか種類があり、それぞれで目的が異なるので個別に説明します。

超音波検査(エコー検査)

エコー検査では身体に超音波をあててその反射の程度を利用して、体内を画像化します。子宮を調べる超音波検査には「膣から行う方法(経膣超音波検査)」と「お腹から行う方法(経腹超音波検査)」の2つがあります。

■経膣超音波検査

経膣超音波検査は親指くらいの太さの棒状の機械(プローブ)を膣から挿入して行われます。後述する経腹超音波検査に比べて、子宮や卵巣などを詳細に観察できます。膣からプローブを挿入する際に痛みを伴うことがありますが、超音波による痛みはありません。プローブを挿入する際に潤滑剤を使うなど痛みに対する配慮はされていますが、痛みを感じるときには遠慮なく伝えてください。

■経腹超音波検査

お腹にプローブを当てて検査が行われます。経膣超音波検査に比べると子宮頸部がはっきりと見えないこともありますが、その一方で、腹部全体を見渡せる利点があります。具体的に言うと、経膣音波検査では見るのが難しい、肝臓や血管の周りのリンパ節などの観察に適しています。

CT検査

CT検査では放射線を利用して身体の断面を画像化します。超音波検査より詳しく調べることができるので、「がんの広がり」がよく分かります。また、一度に全身を調べることもできるので、「転移の有無」を確認することができます。がんの広がりや転移の有無はステージを決める判断材料になります(ステージについては「こちらのページ」を参考にしてください)。

また、より詳細に調べるために造影剤という薬を注射してCT検査が行われること(造影CT検査)があります。CT検査で得られる画像は白黒ですが、造影剤を使うと白黒のはコントラストがはっきするため、より詳しい情報が得られます。なお、「腎臓の機能が低下している人」や「一部の糖尿病治療薬(メトグルコ®など)を内服している人」には造影剤を使うことができません。当てはまる人はCT検査を受ける前に「腎臓の機能が低下している」「糖尿病治療薬を内服している」とお医者さんに伝えてください。CT検査のより詳しい説明は「こちらのコラム」を参考にしてください。

MRI検査

MRI検査では磁気を利用して身体の断面を画像化します。CT検査とは異なり、放射線を利用しないので、被ばくの心配はありません。子宮頸部の周りを詳しく調べられます。

CT検査と同様により詳しく調べるために、造影剤を注射して検査を行うことがあります。MRI検査で使う造影剤はCT検査で用いるものとは異なりますが、CT検査と同様に「腎臓の機能が低下している人」には使うことができません。腎臓の病気を治療中の人や機能が低下していると言われている人はその旨をお医者さんに伝えてください。

MRI検査のより詳しい説明は「こちらのコラム」を参考にしてください。

参考文献
・日本婦人科腫瘍学会/編, 「子宮頸癌治療ガイドライン2022年版」, 金原出版, 2022年
・国立がん研究センター内科レジデント/編, 「がん診療レジデントマニュアル(第7版)」, 医学書院, 2016年
・日本産婦人科学会,日本産婦人科医会/編, 「産婦人科 診療ガイドライン-婦人科外来編 2017」, 2017年