ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう
腰部脊柱管狭窄症
脊柱管が狭くなることで、脊髄やその他の神経が押されて、腰や脚にしびれや痛みがでる病気です。
7人の医師がチェック 139回の改訂 最終更新: 2022.03.11

腰部脊柱管狭窄症とはどんな病気?

腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の中に存在する脊柱管という管状の構造物が狭くなり、中を通る神経が圧迫される病気です。歩行時に足に痛みやしびれを感じて、長い距離を歩けなくなるのが代表的な症状です。このページでは腰部脊柱管狭窄症の概要として症状や原因、検査、治療などについて網羅的に説明します。

1. 腰部脊柱管狭窄症とはどんな病気なのか?脊柱管とは?

背骨の中には脊髄(神経の束)が納まっている脊柱管という構造物が存在します。脊柱管が狭くなると、中を通る神経に悪影響が及んでさまざまな症状が現れます。首から腰付近まで伸びている脊柱管のうち、腰部分の脊柱管が狭くなる病気が腰部脊柱管狭窄症です。

腰部脊柱管狭窄症:脊柱管が狭まり中を通る神経が圧迫されている

2. 腰部脊柱管狭窄症の症状について

腰に起こる病気の症状と聞くと、「腰痛」が思いつきやすいかもしれません。腰部脊柱管狭窄症の人でも「腰痛」は自覚する症状ですが、それよりも「間欠性跛行」と呼ばれる症状が代表的です。間欠性跛行とは、ある程度の距離を歩くと足にしびれや痛みが現れ、休憩を挟まないと歩き続けるのが難しくなる症状のことを指します。どの程度の距離で痛みやしびれが生じるかは脊柱管狭窄症の程度によるので、個人差があります。 また、その他の症状としては、会陰部の違和感・しびれや、残尿感などがあります。 症状について詳しくは「こちらのページ」で説明しているので、参考にしてください。

3. 腰部脊柱管狭窄症の原因について

腰部脊柱管狭窄症の原因はさまざまです。脊柱管が生まれつき狭い場合(先天性脊柱菅狭窄症)もあれば、加齢によって脊柱管が狭くなることもあります。若い人でも、腰への負担が大きい姿勢や動作が日常的になっている人では、これらが腰部脊柱管狭窄症の引き金になるとも考えられています。また、交通事故や骨粗鬆症などをきっかけとした脊椎圧迫骨折の後遺症として起こることもあります。

4. 腰部脊柱管狭窄症の検査について

腰部脊柱管狭窄症が疑われる人には診察や検査が行われます。その目的は腰部脊柱管狭窄症の有無と腰部脊柱管狭窄症の程度を調べることです。

【腰部脊柱管狭窄症の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 画像検査
    • X線検査レントゲン検査)
    • CT検査
    • MRI検査
    • 脊髄造影検査

診察や検査はどれも重要なのですが、特に画像検査の結果で多くのことが分かります。手術の必要性の判断材料になることも多いです。それぞれの検査については「こちらのページ」で説明しているので参考にしてください。

5. 腰部脊柱管狭窄症の治療について

腰部脊柱管狭窄症の治療は保存的治療と手術の2つに大別されます。保存的治療は主に薬物療法とリハビリテーションの組み合わせです。薬の効果や筋力を強化することで症状の緩和を図ります。手術では狭くなった脊柱管を広げて、脊髄への圧迫を解除し、症状の改善をはかります。 多くの人ではまず、保存的治療が試されます。症状の改善が見られれば、そのまま保存的治療が継続されます。一方で、保存的治療で十分改善しない人には手術が検討されます。 それぞれの治療法の詳しい内容については「こちらのページ」で説明しているので、参考にしてください。

6. 腰部脊柱管狭窄症で知っておいて欲しいこと

ここまで腰部脊柱管狭窄症のあらましを説明してきました。最後に、患者さんに必ず押さえておいてほしいポイントを2つほど説明します。 

治療期間はどの程度なのか

治療に必要な時間は程度によってまちまちです。程度が軽く数週間で改善することもあれば、数ヶ月を要することもあります。個人差が大きな病気だと言えます。いずれにしても数日で治ることは少なく、長い目でみていく必要があると考えてください。

危険な症状が出た場合にはためらうことなく受診を

尿閉(膀胱に溜まった尿が出ない状態)や尿意の消失、尿失禁、便失禁といった膀胱および直腸機能の異常による現象を膀胱直腸障害と言います。膀胱直腸障害が起こった人には早期に手術をしないと、機能が戻らない場合があります。腰部脊柱管症と診断を受けた人で膀胱直腸障害が現れた人はすみやかにかかりつけのお医者さんや緊急外来を受診してください。

上記以外の患者さんからよく出る質問については「こちらのページ」でも説明しているので、目を通してみてください。

参考文献

井樋 栄二, 他/編集「標準整形外科」, 医学書院, 2016