Beta 腰部脊柱管狭窄症のQ&A
腰部脊柱管狭窄症の原因、メカニズムについて教えて下さい。
腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管(背骨に囲まれた神経の通り道)が、多くは加齢変化に伴い狭くなる病気です。変形性脊椎症(背骨や椎間板が痛んだ状態)や変性すべり症(背骨の関節や椎間板が痛み、背骨が前後にずれた状態)により、椎間板や椎間関節、黄色靭帯といった脊柱管の周囲の組織により下肢を支配する神経が圧迫されることで症状が出ます。
腰部脊柱管狭窄症は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
過去の報告によると、高齢者の10-20%程度が腰部脊柱管狭窄症の症状を自覚していると言われています。年齢が上がる程、その割合は増加すると言われています。
腰部脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの違いについて教えて下さい。
どちらも脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで症状がでます。しかし、前者は高齢者に多く、徐々に症状が悪化するのに対し、後者は若年者に発症し、突然症状がでることが多いです。前者は腰を前屈みにすると症状が楽になることが多く、後者では前屈みでかえって腰痛が強くなることが多いです。
腰部脊柱管狭窄症は、どんな症状で発症するのですか
下肢を支配する神経が圧迫されるため、下肢のしびれや重だるさ、痛みといった症状が出ます。進行すると歩行に伴い症状が悪化し、長時間歩くことが難しくなります。前屈みになって休むと症状は改善し、このことを「間欠跛行」と言います。さらに神経の圧迫が高度になると、排尿障害や失禁、会陰部の灼熱感などの「膀胱直腸障害」といわれる症状が出ることがあります。また、筋肉への指令がうまく伝わらなくなるため、筋力が落ちて足があがらなくなったり、つまずきやすくなったりすることがあります。
腰部脊柱管狭窄症は、どのように診断するのですか?
まずは問診により、間欠跛行や膀胱直腸障害といった特徴的な症状が無いか確認します。つづいて筋力検査や知覚検査を行い、神経障害の有無を確認します。レントゲンは痛んだ骨の状態を確認するのに重要な検査ですが、神経の状態までは確認できません。最終的にはMRIを撮影して、神経の圧迫状態を確認し診断します。
腰部脊柱管狭窄症の、その他の検査について教えて下さい。
心臓ペースメーカーが入っていたり、閉所恐怖症の患者さんの場合はMRIが撮影できないことが多いため、脊髄造影検査を行うことがあります。神経をつつむ袋の中に造影剤を注射し、レントゲンやCTを確認することで神経の圧迫が確認できます。侵襲的な検査なので、必要な患者さんにのみ行います。
腰部脊柱管狭窄症と診断が紛らわしい病気はありますか?
下肢のしびれを呈する疾患としては、糖尿病が代表的です。 また、間欠跛行を呈する疾患としては末梢動脈疾患(PAD)あるいは閉塞性動脈硬化症(ASO)とよばれる、血管の障害により下肢の痛みやしびれが出現する病気が有名です。
腰部脊柱管狭窄症の治療法について教えて下さい。
まずは内服薬での治療を行います。内服薬で改善がない場合、痛みの原因となる神経のブロック注射を行うことがあります。これらの保存治療に効果がなく、日常生活の障害が強い場合には手術治療が行われます。
腰部脊柱管狭窄症の治療薬の使い分けについて教えて下さい。
いわゆる一般的な痛み止め(消炎鎮痛剤)や、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩薬が用いられます。また、プロスタグランジンE1製剤は神経に伴走する血管の血流を良くすることでしびれを改善させる効果があると言われています。最近では、神経痛を抑える薬や、頑固な痛みをおさえる軽い麻薬が含まれた薬も使用されることが多いです。
腰部脊柱管狭窄症の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?
薬によって痛んだ骨や椎間板、靭帯がもとに戻ることはないので、内服を続けなければならない人は多いです。しかしながら、薬が一度著効することで痛みのサイクルが断ち切られ、内服がいらなくなる人もいます。
腰部脊柱管狭窄症のブロック注射とはどういったものですか?
痛みの原因となっている神経の近くに針をさして麻酔やステロイドの注射をすることで神経の炎症を取り除き、痛みを抑える治療です。痛んだ神経は非常に敏感なため、近づいた針で刺激をうけて下肢に痛みが走ります。その後薬を使うことで痛みは改善します。障害されている神経がはっきりしない場合、診断目的でブロック注射を行うこともあります。
腰部脊柱管狭窄症の手術はどういったものですか?
神経周囲の組織により神経が圧迫されることで症状がでているため、神経の圧迫を取り除く手術を行います。具体的には背中の皮膚を切って筋肉を骨からはがし、神経周囲の痛んだ骨や靭帯、椎間板を取り除くことになります。背骨の変性が強く、特にすべり症などで不安定性を要する場合には、圧迫を取り除くだけでなくボルトをいれて背骨を固定する必要があります。最近では顕微鏡や内視鏡をつかった低侵襲手術も行われています。
腰部脊柱管狭窄症は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?
症状が軽度であれば、内服や手術で症状がなくなることが多いです。しかし、しびれの改善には時間がかかり、最終的にしびれが残る人もいます。手術では神経の圧迫を取り除くことはできますが、現代医学では痛んだ神経そのものを新しい物に入れ替えたり、神経のダメージを取り除くことはできません。症状が高度であるほど、しびれや筋力低下といった症状が残ることになります。そのため早めの専門医受診が望ましいでしょう。