そうきょくせいしょうがい(そううつびょう)
双極性障害(躁うつ病)
躁状態と抑うつ状態を繰り返す病気。躁状態だけあらわれる場合も双極性障害と呼ぶ。
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最終更新: 2023.04.28
双極性障害(躁うつ病)の基礎知識
POINT 双極性障害(躁うつ病)とは
うつ病と躁病の症状(詳しくは下記参照)を行ったり来たり繰り返す病気です。躁病の程度によって、双極I型障害と双極II型障害の2つに分かれます。自覚症状や経過から診断が行われます。主な治療はリチウムやラモトリギンという薬を使って、躁状態を抑えます。躁状態をすみやかに抑える必要がある人には抗精神病薬が使われることがあります。また、治療を効果的に行うためには、自分が病気であることと、治療が必要なことを理解することが重要です。双極性障害が心配な人やその家族は精神科・心療内科を受診してください。
双極性障害(躁うつ病)について
- 英語名:Bipolar disorder
- うつ状態の症状と躁状態の症状を数ヶ月から数年のスパンで繰り返す病気
- 症状の特徴
- 頻度
- 100人に約1人程度の割合で
発症 すると考えられている
- 100人に約1人程度の割合で
- 問題点
- 躁状態にあると自分が病気であるという自覚がないこと(病識の欠如)が多いため治療に積極的でない
双極性障害(躁うつ病)の症状
- うつ状態の主な症状
抑うつ 気分(気分が落ち込んで元気が出ない状態)- 興味・喜びの喪失
- 食欲がない、食べ過ぎてしまう、体重が減る、または増える
- 睡眠の異常(目がすぐに覚めてしまう、熟睡できない、眠りが浅い、寝すぎるなど)
- 動きが鈍い、落ち着きがない
- 疲れやすい、やる気が出ない(気力の減退)
- 自分なんて価値がない人間だと思ってしまう、自分のせいで人に迷惑がかかっていると感じてしまう
- 集中力がない、ものごとをじっくり考えられない、決断できない
- 死んでしまいたいと思う(希死念慮)、自殺について考える、身辺整理など自殺の準備をする
- 躁状態の主な症状
- 異常に元気がある
- 異常に社交的
- 早口で次から次へと話す(相手は理解できないことが多い)
- やたら怒りっぽい
- 異常に自分に自信がある
- 寝なくても元気
- 次々といろいろな考えが出てきて止まらない
- 気が散ってしまう
- ついつい自分の快楽に走ってしまう(衝動買い、無分別な性交、賭け事など)
双極性障害(躁うつ病)の検査・診断
双極性障害(躁うつ病)の治療法
- 主な治療
- 薬物療法
- 気分安定薬(リチウムやラモトリギン)を使う
- 急いで躁状態の症状を抑える必要がある場合は、
抗精神病薬 (アリピプラゾールなど)が使われることがある - 治療効果は2週くらいで効果の有無が推定できる
- 電気刺激療法
- 自殺が懸念される人に行うことで、自殺に至る可能性が下がると考えられている
- 症状が落ち着いた後も維持療法を継続することで再発率を下げられる
- 薬物療法
- 治療を効果的に行うために大切なこと
- 自分が病気であることと、治療する必要があることを理解することが大切
- 無理をしない安定した生活を送る
- 治療薬を自己判断で飲んだり飲まなかったりすると症状の悪化を招くことがあるので、医師の指示を守って飲むようにする
- 飲み忘れをなくすために、お薬カレンダーや携帯のアラームを使ったりする
双極性障害(躁うつ病)に関連する治療薬
気分安定薬(炭酸リチウム)
- 感情の高まりや行動を抑えることで躁病などの改善や抗うつ薬などの作用を補助する薬
- 躁病は気分の高ぶっている躁状態が続き異常に元気であるなどの症状があらわれる
- 炭酸リチウムは中枢神経に作用し感情の高まりや行動を抑え、気分を安定化する作用をあらわす
- 炭酸リチウムは抗うつ薬などの効果を高める作用もあらわす
定型抗精神病薬
- 主に脳内のドパミンに対して抑制作用をあらわし、幻覚、妄想、不安、緊張、興奮などの症状を改善する薬
- 統合失調症は脳内のドパミンなどの働きに異常が生じ、幻覚、妄想などの陽性症状や感情の鈍麻、意欲の減退などの陰性症状などがあらわれる
- 脳内のドパミンの作用を抑えることにより陽性症状の改善が期待できる
- 本剤は脳内で過剰になっているドパミンの働きを抑える作用などをあらわす
- 本剤は統合失調症の他、躁病やうつ病などへ使用する薬剤もある
- 本剤は薬剤の成分の化学構造や作用などにより、フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンズアミド系などに分かれる
非定型抗精神病薬(ドパミンD2受容体部分作動薬)
- 脳内のドパミン受容体やセロトニン受容体への作用により、幻覚、妄想、感情や意欲の障害などを改善する薬
- 統合失調症は脳内のドパミンなどの働きに異常が生じ、幻覚、妄想などの陽性症状や感情の鈍麻、意欲の減退などの陰性症状などがあらわれる
- 脳内のドパミンD2受容体の拮抗作用により、陽性症状の改善が期待できる
- 本剤はドパミン神経伝達が亢進したD2受容体へ拮抗作用をあらわし、ドパミン神経伝達が低下したD2受容体へは適度に活性化する部分作動薬となる
- 本剤は脳内のセロトニン受容体への作用により陰性症状の改善作用もあらわす
- 本剤は双極性障害における躁状態の改善やうつ病、自閉スペクトラム症などへ使用する場合もある