急性膵炎の症状:腹痛・吐き気・嘔吐など
急性膵炎の代表的な症状はみぞおちやお腹の痛みです。
1. 初期の症状

急性膵炎の初期の症状は、腹痛を中心とした局所的なものが多いです。それぞれの症状についてその特徴や要因を説明します。
みぞおちの痛み
膵臓は腹部の上の方(上腹部)にある臓器です。このため、急性膵炎が起こるとみぞおちが痛みます。痛みは膵炎の程度により幅があり、我慢できる程度の不快感に近い痛みもあれば、持続的に苦痛を伴う痛みもあります。
急性膵炎によるみぞおちの痛みは、上体を曲げて胸を膝につけるような姿勢で和らぐことが特徴です。痛みは鎮痛剤を用いて抑え、それでも抑えられないような激しい痛みには麻薬性鎮痛剤を使います。
腹痛
急性膵炎による腹痛には3つの要因が考えられます。
1つ目は炎症です。膵臓には消化
2つ目は腸の動きが弱くなることです。消化酵素は周りにも影響して腸の動きを弱くします。腸の動きが弱くなると腸の中にガスや内容物が停滞します。腸の中身が停滞すると腸が拡張して痛みを引き起こします。
3つ目は腹膜炎です。腹膜炎はお腹全体を覆う腹膜に炎症が広がった状態です。腹膜炎が起きると、お腹を押したときより離したときに痛みが強くなるという特徴があらわれます。この特徴は診察にも応用されます。
また、急性膵炎の腹痛は飲酒や脂肪食で悪化するという特徴もあります。
急性膵炎の特徴が明らかであったり、腹痛でもみぞおちに痛みがあるとより急性膵炎である可能性は高まります。しかし、腹痛は他の多くの病気でも起こる症状ですので、腹痛だけで急性膵炎と診断することは困難です。いつもと様子の違う痛み方や痛みが増してくる、他の症状もあらわれてきた、といった場合には急性膵炎に限らず身体の中で大きな問題が起きていることが心配されます。このような場合には、速やかに医療機関を受診して腹痛の原因を調べてもらって下さい。
吐き気・嘔吐
急性膵炎のために漏れ出た膵液により腹膜炎が起きたり腸の動きが弱くなったりすることで、吐き気や嘔吐が引き起こされます。腸の動きが停滞すると、腸に食べ物が溜まって腸の壁が引き伸ばされます。腸の壁が引き伸ばされた刺激は、脳の嘔吐中枢という場所に伝えられて吐き気や嘔吐が起きます。
腸の動きの悪さの原因が急性膵炎の炎症の場合は、すぐには改善しないこともあるので、吐き気もしばらく続くことがあります。吐き気に対しては、吐き気止めの薬を注射したり鼻から胃に管を挿入して胃の中身を身体の外に出したりなどの治療が有効です。
背中の痛み:背部痛
膵臓は背中側にある臓器で、胃の後ろ側に位置します。このため、急性膵炎の炎症が背中側に広がると背部痛を感じます。
背部痛は急性膵炎の症状として知られていますが、それ以外の病気でもあらわれる症状です。例えば、緊急で対応が必要な血管の病気が原因になることもあるので注意しなければいけません。治療を急がないものとしては、筋肉の病気が背部痛の原因のこともあります。
痛みが収まらなかったり強くなったりするときは、治療を急ぐ病気が原因の可能性があるので、速やかに医療機関を受診してください。
げっぷ
げっぷは胃の中に空気がたくさん溜まることで起こります。急性膵炎が起こると腸の動きが悪くなり、腸の中に食べ物やガスが溜まりやすくなります。手前にある胃にまでガスが溜まるとげっぷが出ます。げっぷは急性膵炎でもありますが、食事中に空気を胃に多く取り込んでしまう呑気症(どんきしょう)でもあらわれる症状です。
発熱
急性膵炎で起きる炎症が強いと、全身にさまざま影響を及ぼします。その1つが発熱です。別の理由でも発熱は起こります。
急性膵炎では膵臓の一部が溶けてしまうことがあります。溶けた膵臓は機能を失い、その場に残ります。少量であれば身体に吸収されますが、量が多いとそこに
感染性膵壊死には
腹部膨満感
腹痛とともに腹部が膨らんで、苦しさがあらわれることがあります。この症状を
急性膵炎では強い炎症がお腹の中で起こっています。強い炎症は腸にも影響し、腸の動きを弱くします。動きが弱くなると腸の中には食べ物や空気が停滞して腹部の張りにつながります。
腹部膨満感は、急性膵炎が落ち着いて腸の動きがよくなると和らいでいきます。腹部膨満感は食事を中止することで良くなることが多いのですが、腸の張りが強い場合には鼻から管を入れるなどの処置を行うことがあります。
2. 重症化した場合の症状
急性膵炎は「お腹の火傷(やけど)」と呼ばれるように、とても強い炎症が身体の中で起きています。強い炎症が起きると身体の中で
脈が早くなる
サイトカインの影響の1つとして、血管の壁から水分が染み出しやすくなります。多くの水分が血管から出て全身を循環する血液量が減ってしまうため、それを補うために心臓が頑張って脈を打つ回数を増やして対応しようとします。このために脈が早くなります。脈が早くなっている原因は血管の中の水分が不足していることなので、点滴で水分を補います。
ふらつく、冷や汗が出る
血管の中の水分が少なくなると、最初は心臓が頑張って脈拍数を増やして対応しますが、それでも補えなくなることがあります。そうなると血圧が低下して、ふらつきや冷や汗などの症状があらわれます。これらの症状も血管内の水分不足が原因なので、点滴で水分を補います。
尿量が少なくなる
尿は腎臓で血液から不要なものを取り除いて作られています。急性膵炎の影響で血管の中の水分が外に出て少なくなると、腎臓に流れ込む血液の量も減少します。尿の原料である血液が少なくなると、それに伴って尿量が少なくなります。
尿は余分な水分を身体の外に出す役割だけではなく、身体にとって害になる物質を排泄する役割も果たしています。そのため、尿量が少ない状態が続くと、身体の中に有害な物質が溜まります。状況によっては、命に危険を及ぼすような不整脈を引き起こし、危険な状態にもなってしまいます。
腎臓の機能が低下して命に危険を及ぼすことが懸念される場合は、血液を一度取り出して機械によって有害物質を取り除いて再び身体に戻す、
呼吸が苦しくなる
急性膵炎の激しい炎症は肺にも影響を及ぼします。サイトカインが影響して血管から水分が染み出しやすくなると、肺に水分たまり、酸素を体内に取り込みにくくなります。酸素が不足すると呼吸が苦しくなるなどの症状があらわれます。
酸素の取り込みの悪さが生命を維持できないほどに悪化した場合は、人工呼吸器を用いて呼吸のサポートを行います。
筋肉が痙攣(けいれん)する
急性膵炎は、重症化すると膵臓だけではなく周りの脂肪も溶かしてしまいます。少し難しい話になりますが、脂肪組織は溶けると一部は遊離脂肪酸に分解されます。遊離脂肪酸は血液中のカルシウムと結合して他の物質になります。血液中の遊離脂肪酸が多くなるとカルシウムはどんどん消費されていき、カルシウム濃度が低下します。
血液中のカルシウム濃度が低下すると、筋肉痛や痙攣、足がつるなどの症状があらわれます。点滴でカルシウムを補うなどして治療します。
参考文献
・福井次矢, 黒川 清/日本語監修, ハリソン内科学 第5版, MEDSi, 2017
・急性膵炎診療ガイドライン2015改訂出版委員会, 急性膵炎診療ガイドライン2015, 金原出版, 2015