きゅうせいすいえん
急性膵炎
膵臓が作り出している消化液(膵液)によって、膵臓の周りにある臓器がダメージを受けてしまう病気
14人の医師がチェック 110回の改訂 最終更新: 2018.02.27

Beta 急性膵炎のQ&A

    急性膵炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    日本では、アルコールと胆石が2大原因です。男性にはアルコールによるものが多く、女性では胆石によるものが多いです。これらの割合は国や地域によって大きく異なり、また、最後まで原因が分からないものもあります(特発性と呼ばれます)。

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    上記以外の原因としては、膵臓の腫瘍、脂質異常症、使用している薬剤の影響や、またERCPと呼ばれる検査・治療の合併症として、一定割合で生じてしまうことも知られています。

    急性膵炎は、どんな症状で発症するのですか?

    急性膵炎の初期の症状で最も多いのは、みぞおち周囲の痛み、背中の痛み、嘔吐です。

    参考:「急性膵炎全国疫学調査(2013年)厚生労働科学研究補助金難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究」

    急性膵炎は、どのように診断するのですか?

    1. 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
    2. 血中または尿中に膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ)の上昇がある
    3. 超音波、CT、MRIで膵臓に急性膵炎に伴う異常所見がある

    以上の3項目のうち、2項目以上を満たし、かつ明らかに急性膵炎以外の病気であるものを除外したものを、急性膵炎と診断するとされています。

    参考:「急性膵炎の診断基準(2008年)厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班」

    急性膵炎の治療法について教えて下さい。

    急性膵炎の治療法は、胆石が原因か、そうでないかによって大きく異なります。

    • 胆石が原因の場合
      • この胆石を取り除くことが最大の治療となります。
      • ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)やES(内視鏡的乳頭括約筋切開術)と呼ばれる、胃カメラを使用した治療を行います。胃カメラで食道→胃→十二指腸と進むと、十二指腸には膵臓へつながるトンネル(膵管)があります。ここに詰まっている胆石を取り除くために、出口の部分を切って広げたり、ワイヤーで詰まりを解消させたりします。
      • 無事に胆石が取り除けた後は、以下の「胆石が原因でない場合」の治療を加えて行います。
    • 胆石が原因でない場合
      • 最も基本的な治療は、点滴による水分補給になります。急性膵炎では、血液中の水分が体内に漏れ出て、血管内が脱水状態になってしまうためです。
      • 炎症そのものを直接抑えて、急性膵炎の経過を改善させる薬(内服薬、点滴薬含む)は、未だ明確な効果が証明されたものがありません。したがって、点滴で水分補給をした上で、例えば細菌感染があれば抗菌薬1)を使用しますし、痛みが強ければ痛み止めを使用するなどの対症療法を行うことになります。十分な水分補給をした上で、一定の限度を超えない急性膵炎であれば、自然と炎症が治まってくることが多いです。

    また、胆石があってもなくても、初期には食事摂取を中断して、初期には点滴から栄養を摂取するようにします。

    急性膵炎は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    国内での発生頻度は、年間10万人あたり9人前後であり、かつ男性には女性の2倍起こりやすいと報告されています。

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    急性膵炎の、その他の症状について教えて下さい。

    急性膵炎が進行すると、腹部や背部の痛み、嘔吐に加え、下痢、黄疸、意識障害などが生じることがあります。

    急性膵炎の、その他の検査について教えて下さい。

    画像検査としては、腹部レントゲン、腹部エコー、腹部造影CT、腹部MRIなどが行われます。

    特にCTは、膵炎の重症度を確認する上で重要な検査です。腎機能などに問題がなければ、造影剤を点滴注射しながら撮影する、ダイナミックCTという撮影方法を選択することが多いです。

    また、急性膵炎の診断のためではありませんが、急性膵炎になった原因を調べるための検査として、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)と呼ばれる、胃カメラを使用する検査を行うことがあります。これは、検査だけでなく治療を兼ねて行われる場合も多いです。

    急性膵炎では入院が必要ですか?

    腸や膵臓を休ませるため、食事摂取を中断して、栄養摂取はしばらく点滴で行う必要があります。したがって、急性膵炎の治療には基本的に入院が必要です。

    入院期間は重症度にもよりますが、1-3週間程度のことが多いと考えられます。しかし低い割合ではありますが、命を失うこともある病気ですので、全身へ炎症が広がってしまうと、人工呼吸や血液透析などの集中治療が必要となり、入院期間はこれよりも長くなります。

    アルコールは、どの程度急性膵炎に悪いのでしょうか?

    1日エタノール換算で48g以上の飲酒では、膵炎の発症リスクが2.5倍になるとされています。

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    「エタノール換算」とは、お酒に含まれる純粋なアルコール成分の量のことです。飲酒量にアルコール度数と"0.8"をかけることで計算ができます。

    例えば500mlのビール(アルコール度数5%)であれば、500ml × 0.05(5%) x 0.8 = 20g ということになります。ワインならばビールよりもアルコール度数が高いので、同じ500mlでこの2-3倍となります。

    急性膵炎が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    急性膵炎は、重症化するにつれて膵臓だけでなく全身に影響を及ぼすようになり、命に関わる病気です。

    膵臓の中には消化作用を持つ膵液が流れていますが、膵炎が重症化するとこの膵液が膵臓の外に漏れだしてしまいます。体内の様々な臓器に影響を及ぼし、例えば血管を巻き込んで血液が流れなくなると腸管壊死と呼ばれて腸の細胞が死んでしまいます。

    また、炎症そのものは血管内の様々な物質を通じて全身へ広がり、ARDSやDICと呼ばれる重症症状を引き起こします。

    急性膵炎と診断が紛らわしい病気はありますか?

    腹部の急激な痛みを伴う病気は、初期には全て急性膵炎の可能性を考えて対応する必要があります。ある程度以上進行していれば、血液検査や腹部の画像検査で診断をつけることができますが、エコーやCTがない場合、血液検査の結果がすぐに分からない場合などには、診察だけで診断を確定させることは困難です。

    胆石があると、どのくらい急性膵炎になりやすいのでしょうか?

    胆石のある人は、そうでない人とくらべて男性で14-35倍、女性で12-25倍の割合で急性膵炎を発症しやすいとされています。

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    急性膵炎の死亡率はどのくらいですか?

    国内の2011年の調査によると、死亡率は急性膵炎全体で2.1%、重症例では10.1%と報告されています。

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    急性膵炎は、再発することがある病気ですか?

    急性膵炎の再発率は原因によって異なります

    • アルコール性の場合:46%で再発が認められると報告されています1)
    • 胆石性の場合:胆石を治療していない場合、32-61%で再発が認められると報告されています。

    胆石性の場合には、再発を予防するために、胆のう摘出の手術を受けることが強く推奨されています2)

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    急性膵炎が発症しやすくなる、または急性膵炎の人が他に注意すべき病気はありますか?

    アルコールの摂取量が多い人、胆石がある人、高度の肥満(BMI 30以上)のある人は、急性膵炎の発症率が上昇するため、注意が必要です。

    急性膵炎にかかった後に、そのまま慢性膵炎に移行してしまうことはありますか?

    急性膵炎がその後慢性膵炎へ移行してしまうことがあり、その移行率は3-15%程度1)と言われています。

    参考:「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)日本腹部救急医学会、他4学会

    急性膵炎は、遺伝する病気ですか?

    基本的には、遺伝性の病気ではありません。

    例外として「遺伝性膵炎」と呼ばれる特殊な種類の膵炎もありますが、膵炎全体の5%未満のみを占めるまれな疾患です。