腸閉塞やイレウスの検査:身体診察、レントゲン検査、CT検査など
腸閉塞やイレウスが疑われるといくつかの検査を使って病状を判断します。腸閉塞やイレウスの検査にはどのようなものがあるのでしょうか。
目次
1. 腸閉塞やイレウスの検査
腸閉塞とイレウスは原因は違いますが腸の中の流れがとまる点で共通しています(両者の違いについて詳しくは「腸閉塞とイレウスの違い」のページ参照)。
腸閉塞やイレウスが疑われるときは主に以下の検査を用います。
問診 - 身体診察
- 血液検査
超音波検査 レントゲン 検査CT 検査
全ての検査が必要なわけではありません。状況によって適した検査を組み合わせて診断を行います。以下ではそれぞれの検査について紹介します。
2. 腸閉塞やイレウスの問診で聞かれること
腹痛には原因があります。腸閉塞やイレウスだけではありません。原因を特定するには問診が大きなヒントになることがあります。ここでは腸閉塞に限らず腹痛の問診の例をあげてみます。
- 腹痛が起きはじめた時間
- 腹痛が急に起きたのか徐々に起きたのかが重要です
- 最も痛む場所
- 腸閉塞では腹部の中央が痛くなることがあります
- 痛みが軽くなったりひどくなったりするか
- 腸閉塞では腹痛が強くなったり弱くなったりするという特徴的な痛みがあらわれることがあります
- 下痢や便秘、吐き気・嘔吐の有無
- 腸閉塞では便秘になることが多いですが、下痢になることもあります。普段からの便通の状態も伝えることが大事です
- 吐き気や嘔吐は腸閉塞以外の病気でもあらわれる症状です。腸閉塞の場合は吐物が胆汁の色である緑がかったものだったり、便のような臭いがすることがあります
- 食事の内容
- 食事が腸閉塞の原因になることがあります。例えば餅(もち)はまれに腸閉塞の原因となります。数日前まで振り返って伝えるほうが望ましいです
- 今までにかかった病気や治療中の病気
- 腸閉塞は手術の影響で起きることがあります。かなり前の手術でも時間を経て腸閉塞の原因になりえます。腹部以外の病気が原因で腸閉塞が起こることもあります。治療中の病気を含めて問診では伝えて下さい
- 定期的に飲んでいる薬の有無
- 定期的に飲んでいる薬が原因で腸閉塞が起こることも、まれですがありえます。また、サプリメントを含めて飲み薬は漏らさず伝えることが大事です。複数の薬を飲んでいる場合にはお薬手帳を持参すると漏れをなく伝えられます
実際には腸閉塞やイレウスが起こっている人でもすべて上のとおりの答えになるとは限りません。自分で腸閉塞に当てはめたり、逆に違う点を強調したりする必要はありません。事実をありのままに、なるべく詳しく答えてください。
腹痛の原因になる病気を特定するのに役立つ問診について解説しました。腸閉塞やイレウスを診断したりその原因を推定するには問診が重要です。
お腹が痛くて苦しいのに様々な質問に答えるのはつらいものがあります。質問の意味がわかりにくいこともあるかもしれませんが、ここで挙げたことを参考にして診察を受けてもらえればと思います。
3. 腸閉塞やイレウスの診察:聴診、打診、触診
腸閉塞やイレウスの診察では
聴診
聴診では主に腸が動く音を聞いています。お腹の中で起きている状況によって聞こえる音が異なります。
- 腸閉塞
- 単純性腸閉塞:金属音と呼ばれる「キンキン」という高い音が聞こえることがある
- 複雑性腸閉塞:腸の動く音が弱いまたは聞こえない
- イレウス:腸の動く音がしない
腸閉塞やイレウス以外の病気でも同じような音を聴診で聞くことがあります。聴診だけでは診断はできませんが重要な手がかりになることがあります。
打診
腸の中の流れが悪くなるとガスが腸の中にたまります。腸の中にガスがたまると腹部が張ってきます。腸の中にガスが充満しているお腹を指で軽く叩くと太鼓のような感触や音を得ることができます。
触診
触診では腹痛のある場所や特徴を観察できます。腸閉塞の中でも複雑性腸閉塞は決まった範囲で激しい腹痛が起きることがあります。その他の病気が隠れていないかの判断材料としても触診は重要です。
4. 腸閉塞やイレウスの血液検査
血液検査は全身状態を推定するのに役立ちます。
腸閉塞やイレウスが起こると嘔吐のため、また腸での水分の吸収が低下するため脱水の状態に陥ります。脱水が起こると体の中の
血液検査は脱水の状態や電解質などを把握することができます。血液検査を参考にして適切な点滴の量や種類を決めていきます。
5. 腸閉塞やイレウスの画像検査
腸閉塞やイレウスの診断には超音波検査とレントゲン検査、CT検査の3つが特に大事な検査です。それぞれに特徴があり同時に全てを用いるわけではありません。それぞれの検査について解説します。
超音波検査
超音波検査は
超音波検査は液体のたまりなどを観察するのに向いています。苦手とするのは空気が多く含まれている場所の観察などです。腸閉塞やイレウスでは腸管の中に空気がたまっていることが多いので、超音波検査だけでは診断が難しいことがあります。
超音波検査は他の病気を除外するには有用ですが、手術の必要性などはCT検査を用いて判断することが多いです。
レントゲン検査
レントゲン検査では
- 病気の原因になっている場所:大腸と小腸のどちらに原因がありそうか
- 緊急性の判断:腸が破れて腹腔(ふくくう)に空気が漏れ出ていないか
レントゲン検査では腸が拡張した様子を観察することができます。一見すると同じように見える小腸と大腸ですが、小腸では腸のしわが細かく大腸ではしわが太いという違いがあります。これらの特徴を観察して小腸と大腸のどちらに原因があるかを推定します。
またレントゲン検査は腸閉塞の緊急性を判断することにも使います。緊急度が高い複雑性腸閉塞は腸が捻(ねじ)れたりして腸への血流が途絶える腸閉塞です。複雑性腸閉塞では時間が経つと腸に穴が開きます。穴が開くことを
また、回復具合を確かめるため、腸閉塞の治療中は何回かレントゲン検査をすることになります。
CT検査
CT検査は放射線を使った画像検査です。レントゲン検査よりも多くの放射線を使います。CT検査では体の断面を撮影することができます。
CT検査は腸閉塞の診断には最も重要です。レントゲン検査より多くの情報を得ることができます。腸閉塞が起きている場所や原因などの推定にもCT検査は役立ちます。
CT検査の方法の一つに
イレウス管造影検査
イレウス管は鼻から腸にまで通す管のことです。イレウス管を挿入すると腸液を体の外に出すことができ、腸を安静にできます。イレウス管という名前がついていますがイレウスだけではなく腸閉塞の治療にも使います。
イレウス管は検査にも利用することができます。イレウス管から造影剤を注入することで腸の動きや狭くなっている部位を観察することができます。イレウス管造影で腸の動きが良くなっていたり狭くなっていた腸が広がっていることを確認できれば腸閉塞やイレウスがよくなっていると判断します。
6. 腸閉塞やイレウスでの内視鏡検査
イレウスの場合に内視鏡検査が用いられることはまれです。