椎間板ヘルニアの基礎知識
POINT 椎間板ヘルニアとは
脊柱を構成する脊椎(背骨)と椎間板(背骨と背骨の間のクッション)のうち椎間板が傷んで突出した状態です。椎間板ヘルニアは脊椎のどの部位に生じてもおかしくはないのですが、最も負荷のかかりやすい腰椎(腰の骨)次いで頸椎(首の骨)に生じることがほとんどです。老化などが原因のためすべての人に椎間板ヘルニアが起こる可能性があります。整形外科や脊椎外科では特に神経障害を起こしたものを椎間板ヘルニアとして診断します。椎間板ヘルニアでも最も多い腰椎椎間板ヘルニアは、大きく3つのタイプ(突出型、脱出型、遊離型)に分類されます。この中で遊離型や脱出型は2−3ヵ月の間になくなり症状がよくなることが多いことが知られています。そのため初期に重度の神経障害ない限りは基本的には痛み止めやブロック注射で治療できることもあります。しかし神経障害の程度が強い場合(耐えられない痛み、手足の動きが悪い、尿が出ない)や症状が長引く場合(3ヵ月以上)は、手術による治療が必要となります。ヘルニアといってもどのようなタイプのヘルニアであるのか正確な診断が必要です。ヘルニアの症状に当てはまって心配な人は専門医に相談することをお勧めします。
椎間板ヘルニアについて
背骨 と背骨の間にある椎間板 の中身が、何らかの理由ではみ出してしまった状態- 「
ヘルニア 」とは、何かが通常よりも飛び出してしまっている状態を指す - 背骨は、
椎骨 という骨が何個も積み上がって出来ている - 椎間板は、椎骨と椎骨の間のクッションとしての役割をもっている
- 「
- 飛び出た椎間板が、
脊髄 の周囲の神経を圧迫すると、腰痛や脚のしびれなどが起こる - 椎間板ヘルニアが起こりやすいのは腰で次いで首(頚)。さらに詳しい場所は下記
- 腰椎
- L4/5とL5/S
- 4番目の腰椎と5番目の腰椎の間
- 5番目の腰椎と仙骨の間
- 頚椎
- C5/6>C/3/4、C4/5、C6/7
- 最も多いのは5番目の頚椎と6番目の頚椎の間
- 3番目と4番目の頚椎、4番目と5番目、6番目と7番目の頚椎の間も多い
- 腰椎
- 原因は加齢などによる椎間板の老化
- 悪い姿勢での作業も影響する
椎間板ヘルニアの症状
椎間板ヘルニアの検査・診断
レントゲン 検査やCT 検査背骨 に骨折や変形がないかを調べる
MRI 検査椎間板 が飛び出ている程度や、脊髄 神経を圧迫していないかなどを調べる- たとえ椎間板が飛び出していても
症状 がなければ問題はない
椎間板ヘルニアの治療法
- 主に以下の治療を行いながら手術の必要度を考える
- 基本は安静とサポーターの装着
- 必要に応じて痛み止めの
内服薬 や湿布を使う - 痛みが強い場合は痛み止めの注射を行う(
神経ブロック )
症状 が強く、よくならない場合は手術を検討- 経皮的髄核摘出術(
内視鏡 を使った身体への負担が少ない手術) ヘルニア 切除術(背骨 の一部を切ってはみ出た椎間板 を取り除く手術)
- 経皮的髄核摘出術(
- 尿や便の排泄に問題が出た場合には、手術が必要となることが多い
- 場合によっては、診断がついたその場で緊急手術が行われることもある
- 腰椎椎間板ヘルニアの手術を行わなかった場合の治療法(
保存療法 )- 急性期は安静にする:脚を軽く曲げ、仰向けまたは横向きで横になると楽になることが多い
- 腰椎コルセットをつける
- 薬を用いる
- 鎮痛消炎剤(
NSAIDs など) - 筋弛緩剤
ビタミン 剤など
- 鎮痛消炎剤(
- 痛みが非常に強い場合は、注射を行う(
炎症 のある部分に局所麻酔剤や副腎皮質ステロイド剤 などを注入するもの)- 神経根ブロック
- 腰部
硬膜 外ブロック
- 痛みが軽減されてきたらリハビリテーションを行う(運動療法と物理療法)
椎間板ヘルニアに関連する治療薬
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)
- 体内で炎症などを引きおこす体内物質プロスタグランジンの生成を抑え、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げる薬
- 体内で炎症や痛み、熱などを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGは体内でCOXという酵素などの働きによって生成される
- 本剤はCOXを阻害することでPGの生成を抑え、痛みや炎症、熱などを抑える作用をあらわす
- 薬剤によっては喘息患者へ使用できない場合がある
- COX阻害作用により体内の気管支収縮を引きおこす物質が多くなる場合がある
- 気管支収縮がおきやすくなることよって喘息発作がおこる可能性がある
椎間板ヘルニアの経過と病院探しのポイント
椎間板ヘルニアが心配な方
椎間板ヘルニアとは、背中の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板の中身が飛び出してしまった状態です。飛び出した椎間板が、背骨の後ろにある脊髄を圧迫することで腰痛、手や脚のしびれなどがみられます。しびれは片側のみにみられることが多いです。進行すると力が入りにくくなったり、排尿が難しくなったりすることがあります。加齢や悪い姿勢での作業による椎間板の変形が原因になり、特に20代の男性に多くみられます。
ご自身が椎間板ヘルニアでないかと心配になった時、最初に受診するのには、整形外科のクリニックが適しています。椎間板ヘルニアの診断は、問診、診察、画像検査で行います。画像検査ではレントゲン検査・MRI検査・CT検査で、椎間板が飛び出ているかを確認します。MRIやCTのないクリニックもありますが、その場合は、問診や診察から椎間板ヘルニアを疑い、治療を開始することも多くあります。また、クリニックの場合であっても、必要に応じてMRIやCTを取れる病院を紹介することで適切な治療が可能です。
椎間板ヘルニアでお困りの方
椎間板ヘルニアでは、基本的に安静にし痛み止めによる治療を行います。それでも痛みがひどい場合には、神経ブロックという注射や手術を行うこともあります。
しかし、ほとんどの場合では痛み止めと安静にすることで、症状が改善します。そのため、基本的には入院の必要はなく、自宅で安静にし、様子をみることが可能です。自宅で様子をみる場合、注意しなくてはならない点がいくつかあります。痛み止めを使っても痛みがどんどん悪くなる場合、力が入りにくくなった場合、排尿や排便に問題が出てきた場合などはすぐに医療機関を受診してください。
安静・痛み止めの内服・ブロック注射で症状が改善しない場合には手術も選択肢の一つです。手術は基本的に総合病院で行われます。クリニックに通院中であれば、手術可能な病院への紹介状を書いてもらいましょう。手術のために必要な入院は1-2週間です。病院によって、差額ベット代の額が異なるため、入院前に費用に関しても確認しておくといいでしょう。