注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは? 症状、原因、検査、治療など
注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは不注意や多動性、衝動性が見られる病気です。なるべく早期に見つけて適切な対応をすることが望ましいです。ペアレントトレーニングや周囲の環境調整が治療の基本であり、必要に応じて
目次
1. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは何か?
注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかんたどうせいしょうがい)は不注意でミスが多かったり、落ち着きがなかったり、衝動で行動してしまうことで、日常生活が困難になる病気です。ADHDという略称で知られています。
ADHDはミスを繰り返したり、他人の話をうまく聞けないことで、周りの人と良好な関係を築けなくなります。一方で、多少、集中力が続かなかったり、衝動で行動してしまうということがあっても、社会トラブルがない程度であれば、ADHDとは診断されません。
2. 自閉症・アスペルガー症候群とは何が違うのか?
ADHDはコミュニケーションにトラブルを抱えることがありますが、他にもコミュニケーションがとるのが苦手な病気として自閉症やアスペルガー症候群を聞いたことがある人もいるかもしれません。以下では自閉症とアスペルガー症候群がどのような病気であるか説明します。
自閉症
自閉症は言葉の遅れがあり、他人とのコミュニケーションをとるのが困難な病気です。コミュニケーション障害としては以下のような例が挙げられます。
- 会話の時に視線を合わせられない
- 状況にあった表情、身振りができない
- 他人との距離がうまく取れない(近すぎる、遠すぎる)
また、自閉症は自分が興味を持ったことに異常なこだわりを持ち、そればかりに向き合っています。また特定の動作の繰り返し、聴覚過敏や触覚過敏などの症状もあります。言葉や知的な発達の遅れを伴うことも多いです。
アスペルガー症候群
アスペルガー症候群も自閉症と同様、自分が興味を持ったことへの異常なこだわりや、コミュニケーションの困難さを特徴に持つ病気です。言葉の遅れや知的な遅れはないのが自閉症との違いと言われています。ただし、明確に区別できないこともあり、最近では自閉症とアスペルガー症候群を区別せず、まとめて自閉スペクトラム症と呼ぶことが多いです。
3. ADHDの症状について
一方で、ADHDのコミュニケーションのトラブルは不注意や多動性、衝動性に起因するものが多いです。不注意や多動性、衝動性は以下のような状態を指します。
- 不注意:注意をとどめておくことが難しい
- 多動性:落ち着きがなく、いろいろなことをしてしまう
- 衝動性:衝動を我慢できない
不注意のため話が耳に入らなかったり、衝動的なために周りとうまく関係を築けなくなります。ADHDではさまざまな症状があらわれますが、どれも不注意や多動性、衝動性のいずれかに関連したものになります。目立つ症状は年齢によって異なり、例えば、子どもの場合は「授業中にじっとしていられない」、大人の場合は「仕事のミスが異常に多い」などが挙げられます。特に日常生活が困難になったり、周囲に迷惑をかけるほどのものであれば、ADHDの可能性を考える必要があります。
具体的な症状や、ADHDが気になる人のセルフチェックは「症状について」のページで紹介していますので参考にしてみてください。
4. ADHDの原因について
ADHDは脳の前頭葉や線条体の異常が原因であると考えられています。前頭葉は注意力や自己抑制をコントロールする場所、線条体は活動量をコントロールする場所です。ADHDの原因となる脳の異常が起こる要因としては以下のことが考えられています。
- 妊娠中の飲酒
- 妊娠中の喫煙
- 遺伝
- 環境因子
妊娠中、赤ちゃんはお母さんからの栄養をもらい発育していきます。飲酒や喫煙などによってお母さんの身体の中に毒性があるものが取り込まれると、赤ちゃんの脳の発育に悪影響を与えます。また、お父さんお母さんから性格や顔立ちなどが遺伝しますが、ADHDのなりやすさについても遺伝することがわかっています。
「原因について」のページでは、ADHDのメカニズムやそれぞれの要因について詳しく説明しています。
5. ADHDの検査について
ADHDは特定の検査で診断することが難しい病気です。
もし、問診からADHDが疑われる場合には、身体診察や知能検査、心理検査を通してADHDのような症状を起こす他の病気の可能性を除外していきます。
問診での具体的な質問や検査の流れについては「検査について」のページを参考にしてください。
6. ADHDの治療について
ADHDの治療は心理社会的療法と薬物療法を組み合わせて行います。心理社会的療法はADHDの子どもをうまく育てるためのペアレントトレーニングや、周りにある症状を悪くする要因を取り除くための環境調整などがあります。薬物療法としては、神経伝達物質に働く効果的な薬が4種類発売されています。
具体的な心理社会的療法、薬物療法の内容は以下の通りです。
- 心理社会的療法
- ペアレントトレーニング
- トークンエコノミー法
- スペシャルタイム
- タイムアウト法
- 周囲の環境調整
- 学校の環境調整
- 職場の環境調整
- ペアレントトレーニング
- 薬物療法
- コンサータ®︎
- ストラテラ®︎
- インチュニブ®︎
- ビバンセ®︎
「治療について」のページではこれらの治療内容につき詳しく説明しています。
7. 子どもがADHDと診断されたお父さん・お母さんへ
子どもがADHDと診断されたお父さん、お母さんの中には、なかなかその事実を受け止められない人もいるかもしれません。また、ADHDの子どもは予測できない行動をとることも多く、向き合うのに疲れてしまったと感じる人もいるかもしれません。
ADHDは親の育て方の問題で起こる病気ではありません。また、適切に治療を行うことで、自信をつけてうまく社会に順応できる人もいます。中には多動な性格がポジティブに働き、いろいろなものごとに挑戦し、大きくなって活躍するケースもあります。
ADHDの子どもが失敗を繰り返すと感情的な言葉をぶつけたくなってしまう時もあるかもしれません。ADHDの子どもはミスをしたくて、ミスをしているわけではありません。本当はお父さん・お母さんの期待に応えたいと思っているにも関わらず、ミスをしてしまうのです。本人も悪意がなくミスをしてしまうため、どうしたらよいかわからず、悩んでいることが多いです。
子どもはたくさん褒められる経験をし、自信をつけていくことがすごく大切です。小さなことでも良いので、何かうまくできた時にはたくさん褒めてあげることで、子どもとの良い関係が築けると思います。
もし、ADHDの子育てで悩むことがあれば、学校の先生やお医者さん、発達障害者支援センターなどの地域の機関を活用してみてください。
「知っておいてほしいこと」のページでは、ADHDの早期発見の重要性、発達障害者支援センターや障害年金などについても説明しています。