ちゅういけっかんたどうせいしょうがい
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
集中力が続かない、うろうろ動きまわる、いきなりカッとなるなどの症状が特徴の病気。男の子に多い
17人の医師がチェック 145回の改訂 最終更新: 2018.02.12

Beta 注意欠陥・多動性障害(ADHD)のQ&A

    ADHDの治療で用いられるソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?

    SSTとは、“Social Skill Training”(ソーシャルスキルトレーニング)の略で、日本語では、「社会生活技能訓練」や「生活技能訓練」などと呼ばれています。SSTは、ADHDやうつ病、統合失調症などの精神疾患で使用されます。

    「ソーシャルスキル」とは、良好な人間関係を形成し、社会(ソーシャル)という集団の中で円滑に生活を送るための技能(スキル)のことです。「ソーシャルスキル」は生まれた時から備わっている能力ではありません。人は生まれてから、親や友人、周囲の人々など多くの人たちと関わりながら様々なことを学習し、成長していきます。通常、「ソーシャルスキル」はトレーニングをしなくても、成長の過程で自然と身に付けることができます。これは社会に適応するためのスキルの一つです。

    しかし、ADHD(注意欠如多動性障害)をはじめとした、いわゆる発達障害を抱えている子は、これらのスキルの習得が通常より時間がかかると言われています。感情のコントロールが苦手な子は周囲から乱暴な子、暗い子という印象を持たれやすく、集団の輪に入りにくくなってしまいます。また、場の空気が読み取れず自分の行動を優先してしまう子もいるため同様に集団の輪に居ることが難しくなってしまいます。このような、問題を抱えている子は人と関わる機会が少なくなってしまい、本来成長の過程で身に付けるべき「ソーシャルスキル」を十分に身に付けることが難しくなってしまいます。

    このような発達の過程で問題を抱えている子に対し、発達段階において本来獲得すべき能力(ソーシャルスキル)を習得するためにソーシャルスキルトレーニングが必要とされています。また、同時にその子を支える周囲の集団に対しても、集団として、個人としてその子とどのように関わっていくべきかを学ぶ目的でもソーシャルスキルトレーニングは必要とされています。

    ソーシャルスキルトレーニング(SST)の流れについて教えてください

    ソーシャルスキルトレーニングは以下の流れで行われます。

    ①教示(インストラクション)
    まず、ソーシャルスキルの必要性を説明します。そのスキルがなぜ必要か、そのスキルが身についているとどのような効果があり、身についていないとどんな問題が生じるのかについて、わかりやすく言葉や絵カードなどを用いて説明します。

    ②モデリング
    習得すべきスキルの手本を示します。モデルを提示して学んでもらいます。不適切な見本を見せることで どこに間違いがあるかを考えさせる機会を与えることもあります。

    ③リハーサル
    学んだスキルを実際に練習します。ここでは、絵カードや紙芝居・ロールプレイングやシミュレーションといった様々な手法の中から適切なものを選んで実施します。

    ④フィードバック(評価)
    実施した行動や反応を振り返ります。適切な行動に対しては褒めるようにして、不適切な行動や対応があった場合は修正の指示を行います。周りの人の評価と自分自身が実行することでどのように感じたかという自己評価をすることも大事になります。

    ⑤般化(はんか)
    学んだスキルがリハーサル以外の場面で発揮できるように促します。

    ソーシャルスキルトレーニング(SST)を実施する上で何に気をつけたらよいでしょうか?

    ソーシャルスキルトレーニングを行う上で重要となるポイントを紹介します。

    (1)対象者自身の必要性認識
    自分が何に困っていて、解消するためにどのようなスキルが必要であるのかについて自分自身で認識できていることが前提として重要となります。

    (2)実際的な活動
    習得すべきスキルに対して設定を行い、実際に活動を行いながら学ぶことが大切です。

    (3)段階設定
    難易度が高いと目的としたスキルの習得が難しくなるため、支援する側の設定が重要となります。

    (4)成功体験
    成功することで自己評価を高めることができ、スキル習得にもつながります。また他者から評価をもらえることでも、自信につながります。

    (5)個人・集団へのアプローチ
    対象者への個人的な社会生活における技能習得訓練という意味合いだけではなく、その周囲にいる人たちに対しても、対象者とどう向き合いどのように関わっていくべきかという技能を習得できるという意味合いがあります。

    SSTは治療を行う事のできる専門のセラピストが行う必要がありますので、SSTを希望する場合は、専門の施設にご相談してみてください。

    ADHD(注意欠如多動障害)の治療における環境調整と心理・社会的療法とは?

    注意欠如多動障害(ADHD)では集中力が長続きしない、不注意、動き回ってしまう多動性、咄嗟に行動してしまうといった衝動性といった特徴的な症状が現れます。治療法として環境調整や精神療法および薬物治療が行われます。ADHDの治療は、病状を十分に把握した上で行われる必要があります。ADHDの診断がついた後でも、薬物治療の前にまず自宅や学校における環境調整や心理的な介入を行うことが、とても大切になります。

    環境調整や心理的な介入には以下のような方法があります。

    (1)環境的な介入

    • 刺激をコントロールする(集中しなければならないことに集中できるように、できるだけ余計な刺激が入らないようにする

    • 叱られることが増えてしまいがちなため、本人の良いところを意識的に褒める

      • なるべく強く叱ることは避ける
      • 自己肯定感を失いやすく、認めてもらいたい、注目してほしいという気持ちが周囲を困らせることがあるため、良い所を褒めることが大切である

    (2)心理的な介入、支援
    自尊感情が失われやすいので、発達年齢に合わせて認めてあげられるようなサポートが行われます。代表的な治療法としてソーシャルスキルトレーニング(SST)があります。SSTは別名で生活技能訓練と呼び、特定の場面での適切な行動を学習させるための治療で、良い行動と悪い行動を区別して覚えてもらいます。

    また医療機関だけではなく自治体でもADHDの子どもに対する支援プログラムを行っているところもあります。

    以上のような環境調整や心理的な介入を行っても、学校や家庭において教師やご家族との関係が深刻な場合や、症状の改善が認められない場合には薬物療法が検討されます。

    コンサータ、ストラテラの効果と副作用は?注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物治療とは?

    ADHDの治療は環境調整や精神療法、薬物療法があります。環境調整などを行っても十分な効果がない場合に薬物療法を行います。

    ADHDに対して効果のある薬物治療には、ドパミン再取り込み阻害薬であるメチルフェニデートの徐放剤であるコンサータ®とノルアドレナリン再取り込み薬であるストラテラ®があります。一般的に以下のような手順でこれらの薬を使用します。

    基本的には2つの薬を併用せずに、それぞれの薬の効果と副作用を確認するために、どちらかの薬剤のみ使われます。

    ◎メチルフェニデートの徐放剤であるコンサータ®錠を使用した場合
    コンサータ錠は12時間効果が持続するので朝に飲んで夕方まで効果が持続します。またすぐに効き目が現れる傾向にあるので数日で効果がみられます。ただし、強いうつ症状や不安、緑内障や心臓の障害(不整脈、頻脈、狭心症)などがある方は使用禁忌です。使用前に心電図検査や甲状腺の機能を確認するための検査を行う必要があります。

    しかし、副作用として食欲不振や不眠があらわれることがあり、その場合は使用中止が検討されます。

    コンサータ錠を処方できる医師は「コンサータ錠適正流通管理委員会」に登録された方のみですので、詳しくは担当の医師の方に相談する必要があります。

    ◎ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるストラテラ®を使用する場合
    ストラテラ®はコンサータ®に比べて比較的効果が遅いため、効果がみられるまでに6〜8週間待つ必要があるので、重度の障害がある場合などすぐに症状を改善しなければならない場合には適さないかもしれません。

    しかし、効果が24時間持続することや不眠症といった脳の覚醒がない、処方医師が限られていない点がコンサータ®と比較して使用する際のメリットとして挙げられます。

    ストラテラ®の副作用としては食欲不振や腹痛といった胃腸障害がありますが、コンサータ®よりも食欲不振が起きないことが特長です。

    ただし、閉塞性隅角緑内障には使用できないため注意が必要です。

    以上の2つの薬を十分な効果がみられなかった場合は2つの薬を併用するか、別の治療薬を検討します。使用する薬剤は以下のものが使われることがあります。

    • 感情安定薬

    • カルバマゼピン

    • バルプロ酸ナトリウム

    • 抗精神病薬

    • リスペリドン

    • ハロペリドール

    • 抗うつ薬

    • SSRI

    • 三環系抗うつ薬

    治療薬はそれぞれによって効果と副作用が異なります。担当医と相談のうえ病状を考慮した治療薬を決めることが何より大切です。効果が乏しい場合、副作用が過度にあらわれた場合は担当医、専門医に相談するようにしましょう。