ばくりゅうしゅ
麦粒腫(ものもらい)
一般的に「ものもらい」と言われている病気。感染などの理由によって、まつ毛が生えている部分が腫れる
7人の医師がチェック 117回の改訂 最終更新: 2019.09.25

麦粒腫(ものもらい)とはどんな病気か?症状、治療法など

麦粒腫(ものもらい)は、まぶたの分泌腺に細菌が感染して赤く腫れたり痛くなったりする病気です。治療をしなくても治ることが多く、その場合は数日後に自然にが出て症状がおさまります。ここでは麦粒腫の症状や原因、治療方法に加え、麦粒腫と似た症状を起こす病気について説明します。

1. 麦粒腫(ものもらい)とはどのような病気か

麦粒腫(ものもらい)の画像

麦粒腫(ばくりゅうしゅ)は、いわゆる「ものもらい」と呼ばれているもので、まぶた(眼瞼がんけん)にある皮脂や汗などを分泌する腺(分泌腺)に細菌が感染して起こる病気です。若い人に多い病気ですが、糖尿病がある人や免疫を抑制する薬を使用している人など感染症にかかりやすい状態の人では、なりやすく繰り返す傾向にあります。

外麦粒腫と内麦粒腫について

麦粒腫(ものもらい)は大きく外麦粒腫と内麦粒腫の2つに分けられます。

◎外麦粒腫

まつ毛(睫毛:しょうもう)のまわりにあって皮脂を分泌するツァイス腺や、汗を分泌するモル腺に細菌感染を起こしたものを外麦粒腫と呼びます。多くの場合は睫毛の付け根に膿が溜まります。

◎内麦粒腫

皮脂を分泌するマイボーム腺に細菌感染を起こしたものを内麦粒腫と呼びます。内麦粒腫ではまぶたの裏の部分(眼瞼結膜)に膿の塊ができることがあります。膿の塊がまばたきのたびに目に当たるので、外麦粒腫より痛みが強い傾向にあります。

外麦粒腫と内麦粒腫を見分けるには詳細な診察が必要です。

2. 麦粒腫(ものもらい)の原因について

 麦粒腫はまぶたにある分泌腺に細菌が感染して起こります。原因となる細菌や、かかりやすくなる行為について説明します。

麦粒腫(ものもらい)を起こす細菌について

麦粒腫を起こす主な細菌は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌です。

これらは人間の皮膚や鼻の中によくいる常在菌(じょうざいきん)で、健康な時には特に身体に害を与えることはありません。しかし、何らかのきっかけでまぶたの分泌腺に感染すると、麦粒腫を引き起こします、また、糖尿病などの免疫が低下する持病がある人や副腎皮質ステロイド抗がん剤などの免疫を抑える薬を使用している人では常在菌が増殖しやすく、麦粒腫をはじめとしたさまざまな感染症が起きやすいです。

麦粒腫(ものもらい)を起こしやすい生活習慣について

次のような行為は、まぶたの分泌腺に細菌が感染するきっかけになります。

  • 汚れた手やタオルで目をこする
  • コンタクトレンズを不潔な状態で使用する
  • アイメイクをきちんと洗い流さない

これらの行為をしなくても麦粒腫になることはあります。しかし、麦粒腫を繰り返している人でこれらの行為に心当たりがある場合には、今後の生活で気をつけてみてください。

2. めばちこ?めぼ?方言によって異なる麦粒腫の言い方

麦粒腫(ものもらい)の通称は地方によって異なり、全国で15種類ほどの呼び方があるといわれています。

  • めばちこ
  • めいぼ
  • めぼ
  • めっぱ
  • めんぼう
  • めこじき

このほかにも「めもらい」「ばか」「おひめさん」などの呼び方もあります。「ものもらい」という呼び方は主に東日本で使われており、西日本では「めばちこ」が多く使われています。ものもらいは、病気を治すために人からものをもらうということを語源にしているようです。

参考:ロート製薬「ものもらいMap

3. 麦粒腫(ものもらい)の症状について

麦粒腫(ものもらい)の典型的な症状は、片目のまぶたが腫れて赤みを帯びたり、痛みや違和感を感じたりすることです。

【麦粒腫の主な症状】

  • 目の違和感・かゆみ
  • まぶたの腫れ
  • まぶたの痛み
  • 目やに
  • 目の充血

麦粒腫のなりはじめには目の違和感やかゆみを感じ、次第にまぶたが腫れて痛みを伴うようになります。数日後には腫れた部分が自然に破れて膿が出て治ることがほとんどですが、悪化した場合には痛みが強くなって腫れがひどくなることがあります。目の周りにまで炎症が広がると頭痛などの症状が起こることがあります。

症状についてはこちらのページに詳しく書いてありますので参考にしてください。

4. 麦粒腫(ものもらい)の治療法について:上手な治し方はあるのか

麦粒腫は多くの場合治療をしなくても治ります。症状が出始めてから数日後に膿んだ部分が自然に破れて膿が出ておさまります。しかし、治りが悪い場合や腫れが強い場合には治療が必要です。治療法には次のものがあります。

  • 点眼薬
  • 眼軟膏
  • 内服薬
  • 穿刺・切開排膿

麦粒腫は細菌感染で起こる病気なので、細菌に効果のある抗菌薬抗生物質)が含まれた点眼薬や眼軟膏(がんなんこう)が使用されます。これらを使用してもなかなか改善しない人や、腫れが広がっている人には内服の抗菌薬で治療が行われます。膿んでいる部分を細い針で刺して膿を出す処置(穿刺排膿処置:せんしはいのうしょち)が行われる場合もあります。また、感染が広がってまぶたに膿がたくさん溜まっている人には、皮膚を一部切って膿を出す処置(切開排膿処置:せっかいはいのうしょち)が行われることもあります。

なお、自分でできる対処方法として、温タオルで目を温める治療があります。1日数回、腫れた目を温めて麦粒腫が自然に破れることを期待する治療方法です。

治療についてはこちらのページに詳しく書いてありますので参考にしてください。

5. 麦粒腫(ものもらい)と似ている病気について

麦粒腫は見た目で診断ができる場合がほとんどですが、症状が似ている病気もあり、区別が難しい場合もあります。ここでは麦粒腫と似ている病気について説明します。

流行性角結膜炎:はやり目

流行性角結膜炎は一般的には「はやり目」とよばれ、アデノウイルスの感染が原因となる病気です。アデノウイルスには多くの型があり、流行性角結膜炎は主に8型、19型、37型が原因となります。子どもがかかりやすい病気ですが、大人もかかることがあります。

主な初期症状は片目に起こる強い充血、涙目、大量の目やになどです。ゴロゴロするような強い違和感や痛みを感じることもあります。はじめは片目だけに起きていた感染が、もう一方の目にも広がることがあります。人によっては耳の前や首にあるリンパ節の腫れ、喉の痛み、発熱が起こることもあります。症状は1週間以内に悪化し、2週間程度で徐々に改善します。

目やには乳白色でクリーム状のものが大量に出ることが特徴です。目やにの性状は細菌性の結膜炎との区別に重要です。細菌が原因で起こる結膜炎では、流行性角結膜炎と異なり、黄緑色のネバつきが強い目やにが出ることが多いです。

悪化すると、黒目を覆っている角膜にも炎症が広がることがあります。角膜炎が起きると光を眩しく感じたり、視力低下を起こすこともありますが、炎症がおさまるとともにこれらの症状も改善します。

原因となるアデノウイルスは感染力が非常に強く、目を触った手を経由して周りに感染が広がります。そのため、流行性角結膜炎と言われた人には、他の人との接触をさけて自宅療養することが勧められます。また、感染を広げないためには「目を触らない」、「手洗いをしっかりする」、「タオルは家族と共有しない」、「お風呂は最後に入る」などの配慮が必要です。学校保健安全法では医師に感染の恐れがないと判断されるまで、出席停止と定められています(2019年4月現在)。

咽頭結膜熱:プール熱

咽頭結膜熱は「プール熱」とも呼ばれ、アデノウイルスに感染して起こる病気です。上記の流行性角結膜炎と同じアデノウイルスが原因となりますが、型が異なり、主に3型、4型、7型が原因になります。5歳以下に多い感染症ですが、小・中学生もかかります。

流行性角結膜炎の症状が現れるのは主に目のみですが、咽頭結膜熱では目の症状に加えて発熱や喉の症状を伴います。目には充血、涙目、目やに、目の痛みなどの症状が起こります。流行性角結膜炎に比べると目に起きる症状は軽いです。また、喉の痛み、腫れ、赤みが起こり、多くは38-40度の発熱が3-5日程度続きます。症状は大抵1週間程度でおさまります。

咽頭結膜熱の原因となるアデノウイルスは便の中に排出されるため、便を介して感染することがあります。夏にプールを介して流行することがあるので、「プール熱」とも呼ばれます。学校保健安全法では、症状がなくなった後2日経過したら通学可能と定められています(2019年4月現在)。

霰粒腫(さんりゅうしゅ)

霰粒腫はまぶたにあるマイボーム腺が詰まって起こる病気です。マイボーム腺が詰まると分泌液に含まれる脂質が貯まり、その影響で肉芽腫と呼ばれるしこりができます。このようなマイボーム腺の詰まりを原因とした肉芽腫を霰粒腫と呼びます。

主な症状はまぶたの腫れやしこりで通常は痛みや赤みはありませんが、細菌感染を起こすと痛みを伴うことがあります。感染を伴った霰粒腫は麦粒腫と区別が難しく、治療をしながら診断が行われる場合もあります。また、炎症が広がると皮膚が赤く腫れ、霰粒腫が皮膚を破って露出することがあります。このような場合は炎症がおさまる過程で目の周囲が変形することもあります。

ステロイド点眼薬や軟膏で炎症を抑える治療が行われます。霰粒腫ステロイド薬を直接注射をする治療も有効であり行われています。

麦粒腫と異なり細菌感染が原因ではないので抗菌薬は基本的には使われません。しかし、感染が疑われる場合には、抗菌薬の点眼薬が一時的に使用されることがあります。

小さな霰粒腫であれば数ヶ月から数年で自然に吸収されることもありますが、大きい場合や皮膚直下に炎症が広がっている場合には手術での摘出が検討されます。

参考文献

・Am J Ophthalmol. 2011 Apr;151(4):714-718