ばくりゅうしゅ
麦粒腫(ものもらい)
一般的に「ものもらい」と言われている病気。感染などの理由によって、まつ毛が生えている部分が腫れる
7人の医師がチェック 120回の改訂 最終更新: 2025.01.14

麦粒腫(ものもらい)の治療について

麦粒腫(ものもらい)は治療を行わなくても数日で自然に改善することの多い病気ですが、状況に応じて薬による治療が使われます。ここでは麦粒腫の治療について詳しく説明します。

1. 麦粒腫(ものもらい)の治療では何をするか

麦粒腫(ものもらい)は特別な治療を行わなくても治ることがほとんどです。症状が出始めてから数日後に自然にが出てよくなることが多いです。

軽い麦粒腫であれば、薬を使っても使わなくてもあまり差がないと言われているので、特に薬を処方されずにしばらく様子を見るよう言われることがあります。しかしながら、なかなか症状が改善しない場合や腫れが強い場合などでは、麦粒腫の原因となる細菌に効果のある抗菌薬が使われます。また、早く治したい人や悪化して膿んでいる範囲が広がっている人には、膿を出す処置が行われることがあります。

麦粒腫で行われる治療について一つひとつ詳しく説明します。

2. 薬物療法

なかなか治らない場合や腫れが強い場合には薬を用いた治療が行われます。麦粒腫の原因となる細菌に効果のある抗菌薬(抗生物質)が選ばれます。抗菌薬には点眼薬、眼軟膏、内服薬があり、この中から病状に応じた薬剤が選ばれます。

点眼薬

後発品も含めて多数の抗菌点眼薬がありますが、麦粒腫によく使われる薬は次の通りです。

薬の種類は他にも多数あるため、上記以外の薬が処方されることもあります。使用時の注意点は次の通りです。

  • 清潔な状態で点眼する
  • 決められた回数をきちんと使用する

点眼薬を使用する場合には感染を悪化させないために、手を清潔に洗ってから使うようにしてください。また、抗菌薬(抗生物質)の効果を十分に発揮させるには、指示された用法用量を守って使用することが重要です。

麦粒腫用の市販薬もありますが、市販薬に配合されている抗生物質は処方薬に入っている成分とは異なります。まずは市販薬を試しても良いですが、症状が悪化している人や、市販薬を使っても改善しない人は医療機関を受診してください。

眼軟膏

麦粒腫が悪化している人では、抗菌薬(抗生物質)が入った眼軟膏(塗り薬)を使用することがあります。よく処方される眼軟膏の一例を示します。

眼軟膏を使用する時も、点眼薬と同様に清潔に行うことと、決められた回数用いることが重要です。点眼薬に比べて眼軟膏を使ったことがある人は少ないと思うので、使用方法について説明します。

【眼軟膏の使い方】

  1. 清潔な状態で薬を使うために、手を石鹸できれいに洗って清潔なタオルやティッシュで拭きます
  2. 軟膏チューブの先端から軟膏を少しだけ出して、清潔なティッシュで拭き取って捨てます
  3. 少量の軟膏を押し出して、綿棒に取ります
  4. 綿棒にとった薬をまぶたの際に塗っていきます。上まぶたにつけるときは上に引きあげ、下まぶたにつけるときは下に引きさげるようにすると塗りやすいです

点眼薬も合わせて使うように指示された人は、点眼薬をつけて3-5分たってから眼軟膏をつけてください。

内服薬

点眼薬や眼軟膏の治療で症状が改善しない人には、内服の抗菌薬での治療が検討されます。用いられる抗菌薬は主にセフェム系と呼ばれるものです。現在、抗菌薬の不適切な使用による耐性菌の増加が社会問題となっており(詳しくはこちらのコラムを参考にしてください)、安易な抗菌薬使用は避けなければなりませんが、病状によっては使用が検討されることがあります。

3. 穿刺・切開排膿(針を刺したり切開して膿を出す)

麦粒腫は基本的には自然に治る病気ですが、より早く治したい人や炎症が広範囲に広がっている人には外科的な処置が行われることがあります。行われる治療は、針を刺して膿を抜く穿刺排膿処置(せんしはいのうしょち)や、切開して膿を出す切開排膿処置(せっかいはいのうしょち)です。

◎穿刺排膿処置(せんしはいのうしょち)

膿点を細い注射針で刺して膿を出す方法です。この処置は膿点がはっきりと見えない人には行うことができません。穿刺排膿処置を行うと、より早く症状が改善する傾向にあるため、早く治したい人は検討してみても良い治療です。処置を受けられるかどうか病状によりますので、お医者さんと相談してみてください。

◎切開排膿処置(せっかいはいのうしょち)

麦粒腫の薬物療法を行っても効果が見られず、病状が悪化して腫れが広がった人には、腫れた部分をメスで小さく切開して内部の膿を出す処置が行われることがあります。このような広範囲の炎症が起きた人には、切開排膿処置に加えて内服や点滴による抗菌薬の治療が必要となることが少なくありません。

参考文献

Lindsley K, Nichols JJ, Dickersin K. Non-surgical interventions for acute internal hordeolum. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 9;1:CD007742.